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開業10周年のみなとみらい線と落日の横浜市営バス(後編)

前編から続く

前編では開業から10年経ち横浜中心部の動脈として成長したみなとみらい線を紹介しました。一方で、みなとみらい線開業前にこのエリアの足となっていたのは横浜市営バス。みなとみらい線の盛況の影で、すっかりと淋しくなってしまいました。


みなとみらい線が出来る前、みなとみらい線沿線の馬車道・日本大通・元町中華街界隈へのアクセスとして横浜市営バスの存在感は大きく、桜木町駅から県庁(約1.5キロ)のような短距離で利用する人も多く、横浜中心部の交通の動脈の一つになっていました。


(桜木町駅前にて・横浜市営バスの一般路線車両)

特に横浜駅~桜木町駅~県庁前~中華街入口~山下町~方面の本町通り沿いのルートは幹線格でいくつもの系統の路線が合わさり毎時10本以上走っていて、本当に時刻表を気にせず乗ることが出来ました。
当時この沿線のバスの利用者はとても多く、横浜駅からはもとより桜木町駅から県庁前のような短距離で乗る人も普通にいたものです。

行きの横浜駅発こそ乗場がそごう1階の東口バスターミナルで分かりづらい部分がある反面、到着は横浜駅改札口前バス停という東口ルミネの前辺りで降りれるので、JRや京急線改札まで徒歩1~2分と近く乗換えも至便。みなとみらい線からJRや京急に乗り継ぐよりも便利なぐらいです。
また意外に中心部では道路渋滞なども少なく、特に横浜駅方面行は乗ってしまえばストレスなく到着できるなど、意外に便利なものでした。


横浜市営バス(中心部を走る路線)の運賃はあかいくつバスなど一部の100円運賃を除いて均一210円。
均一運賃は乗客1人が短距離乗っても長距離乗っても売上は一緒なので、売上は区間ごとの乗車率は無関係。起点から終点の1運行で何人乗車する(前乗りなので何人運転手の横を通るのか)かで決まります。

距離にすれば横浜駅から桜木町駅:2.3キロ・県庁前:3.8キロ・中華街入口:4.2キロ。
中心部の2~4キロ以内の乗車で210円稼げるという事業者から見れば利益率が高いものの、乗客から見れば割高な運賃。
これは「安くは無いけどまぁ常識的な運賃」のみなとみらい線でも「3キロまで180円・それ以上は200円」とバスよりも安いのを見れば明らか。
横浜中心部を走るバスの多くは横浜駅からは約9キロ先の本牧車庫に向かう路線ですが、中心部の頻繁な乗降で十分に稼げればその先、本牧方面ではガラガラでも利益を出せます。

しかし2004年のみなとみらい線開業と、その後着実にみなとみらい線が定着していく過程で、横浜市営バスは落日の道を辿ることになります。
翌年2005年頃にはみなとみらい線の上、本町通を走るバスは路線短縮や減便の憂き目にあい、利便性も低下していきます。


横浜市の統計資料を見ても
横浜市営バスは1992年度から2003年度までは年間270~280億円台の乗車料収入を計上していたのに対し、みなとみらい線開業後の2004年度以降は年々と減らし2012年度で196億円台まで落ち込んでいます。
乗車人員で見ても、2003年度までの10年間は年間1.7億人程度だったのが、2012年度で年間1.1億人まで落ち込んでいます。

この数値は中心部のみならず市営バス全体での数値。2007年前後に大規模な路線再編成として、不採算系統の廃止、民間事業者への路線委譲を行った影響等もあるので全てがみなとみらい線の影響。ではありません。

しかし、当時幹線格だった本町通界隈もバスは便数も利用者も減り、中心部の交通の主役から凋落の道を辿っているのは見るからに明らか。都市内の比較的短距離の移動という利益率が高い需要を失えば、経営的に厳しくなるのは明白です。


現在2014年3月時点で、例えば休日16時代に中華街入口→桜木町駅・横浜駅の時刻表を調べると



横浜市交通局サイトでの検索結果(2014年3月24日時点)

横浜駅行 8本(内2本は急行・桜木町駅のみ停車)
桜木町駅行 2本

注:横浜駅行の桜木町駅の到着バス停は12番という駅からかなり離れた場所で降ろされるので、桜木町駅に行くならあまりお勧めできません
注:この他に桜木町駅行の神奈中バスが毎時2~3本程度(旧市営11系統を神奈中が運行)

これでも全国的に見れば多い方と言えるのかもですが、2005年頃までは横浜駅行だけで12本以上あったことを考えると随分と「使えなくなった」という感がします。
現状では「中心部内の移動の足」というよりも「郊外部住民の中心部へのアクセス需要」で生き残っているともいえる感です。

以前に横浜市交通局に
「横浜駅~本町通界隈・中華街方面へのバスの本数をもう少し増やして欲しい」
という趣旨の投書したことがありますが、横浜市交通局側の回答では
「横浜駅~中華街エリアは毎時6~8本程度は確保しており適正本数と考えている」
との回答でした。

毎時6~8本だと平均7~10分間隔ですが、実際には間隔は不均一でかつ道路混雑などで3~5分程度の遅延は当然と考えると、実際のバス停での待ち時間は長いと10~15分超に。
これで真下をみなとみらい線があの本数で走り、しかも運賃もバスより安い。となれば、いくら駅まで歩くよりも近いとか、横浜駅で乗換えが楽だといっても、最早210円払ってバスに乗る理由も見つからない・・・となるのも仕方がありません。




中華街入口(本牧方面)のバス停。
道路反対側右奥に見えるのが中華街のメインの入口の朝陽門。
ここから、みなとみらい線の元町・中華街駅へは連絡通路経由を経由して改札までは160m程度。乗換えならば次の山下町バス停の方が近い場所。
この辺りから根岸線のJR石川町駅までは徒歩10~15分程度と歩くにはちょっと遠いかもな距離。

この辺りや隣の「芸術劇場前・NHK前」(旧・神奈川自治会館バス停)また海沿いの山下公園・大桟橋辺りなど、駅まで少し歩く場所では、すぐに乗れるメリットも・・。
前述した横浜駅の他にも、みなとみらい線では行けない桜木町駅に行くにも一応バスが便利ではあるのですが・・。




「みなとぶらりチケット」500円
市営地下鉄の横浜~伊勢佐木長者町間と中心部の市営バスで使える1日券。

特典施設が多く上手く使えば結構お得なのですが、本数が微妙な上に、不慣れな人にはバス路線やバス停位置が分かりづらいことなど、私のように中心部のバス路線やバス停位置が把握しているならともかく、そうでない普通の人には勧められないです。
そもそもこの券だと、みなとみらい駅の辺りには非常に行きづらいのも・・・



横浜の観光循環バス・あかいくつバス。
唯一観光利用に使いやすい市営バス現状では横浜中心部の観光は基本はみなとみらい線を使って、1~2回だけ100円払ってあかいくつバスを使う。という方向でいくと便利そう。



「あかいくつバス」の案内パンフレット。こちら側は地図入り路線図。裏側は時刻表
100円運賃の他に、こういう案内パンフレットが用意されていて、バス停位置、時刻が分かりやすいのは不慣れな人にも便利なようで利用客も多いです。
しかし運行開始時に導入した専用車両は中型車を採用した為、特に週末は混雑が激しくなるなど先見性の無さも。後年に増備車は大型車を導入。

また東横線桜木町駅がなくなり桜木町駅の拠点性が下がっている中で桜木町をターミナルと位置付けているのは疑問符が付きます。みなとみらいルートは横浜駅発着にした方が良いのでは


過去にこのブログで横浜関連の話を書いた際にも再三触れてきましたが、現状横浜中心部やみなとみらい地区は、本数など利便性や運賃負担も考慮すれば、みなとみらい線の駅から歩いてアクセスするのがベターな状態。
ワールドポーターズや赤レンガの辺りなどみなとみらい線の駅から10分近く歩くのが前提。のような状態で、便利とは言えない状況です。


「都市型ハイキング」のような状態になっている現状の横浜中心の交通の不便さを解消する為にも、まだまだバスという交通モードそれ自体には可能性はあるでしょう。
本来、鉄道に較べてはるかに小ロットでニッチな需要を満たしたり、多頻度の運行に向いているはずのバスですが、現状ではそういったメリットを生かせていないと感じます。

一日乗車券類が乱立しているのを見るのを明らかなように、みなとみらい線など鉄道路線とバス網の運賃制度での歩み寄りが全く無く、乗り継いで利用すると3~4キロ程度の移動に400円以上かかるなど、利用者の方を向いているとは、とても言いがたい状態です。
短距離で100~150円程度の運賃を導入したり、中心部を巡回する路線の検討など最低でも待たずに乗れる程度の本数の確保も必要でしょう。運賃制度の改革の為には現状の均一210円運賃の是非も考える必要も出てくるかもしれません。

また路線・運行ダイヤ・運賃をいくら改善しても、「改善した」ということが世に知られなければ何の意味もありません。分かりやすい、路線・バス停位置などどPRなどマーケティング戦略も必要です。
この広告・広報戦略という概念の無さが既存の公共交通事業者(特に路線バス)の問題点の一つです。

これらを諸問題を解決して、横浜中心部のよりよい交通体系を実現するという視点で、中心部のバスの運営事業者が横浜交通局であることが妥当なのか?という面を含めて考える必要もあると思います。


みなとみらい線の盛況の影で落日の道を辿る横浜市中心部の路線バス。このまま現状維持という名の緩やかなフェードアウトの道を辿るのか、それとも転換点を迎え新たなイノベーションで進化していくのか??
都市の将来に渡る維持と発展という観点において、効率的で利便性が高い交通機関は不可欠なツールです。電車が・・・バスが・・という交通機関・事業者主体の視点ではなく、より広い視点で今後も注目していきたいと思います。



本文中の「横浜市統計」の出展は以下
横浜市統計ポータルサイト>第9章 道路、運輸及び通信
http://www.city.yokohama.lg.jp/ex/stat/toukeisho/new/#09


当ブログの過去の関連記事
横浜中心部・baybikeシステムを使ってみたよ(2013年9月)
http://yaplog.jp/kiyop/archive/2142

京急141系統バス(みなとみらい地区)
http://yaplog.jp/kiyop/archive/2114

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2014/3/25 00:15(JST)
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