【注意】本記事はネタバレ要素が多分に含まれています
先日、映画館で話題の映画「アナと雪の女王2」を見てきました。
前作「アナと雪の女王」の映画はヒットした「ありのままで~♪」の歌をはじめこのラインのディズニー映画としては、ダブルヒロインかつプリンセスのエルサに恋愛的な要素がない。そもそも全く男性の影がないことなどから、エルサの同性愛疑惑?の形も含めて、2013年の公開時には色々と話題になったものです。
私は前作は映画館では見ておらず、ツタヤでDVDを借りて見たのですが、エルサの孤高の女王ぶりが気に入りまして😌 2作目の今作は映画館に見に行くことにしました。
さて今作の「アナと雪の女王2」を見た感想ですが、率直なところでは、エルサの孤高な女王ぶりが好きな私としては結末は「えっ?そうなるの」といいますか、ちょっとショックがありました。
子供向けの映画として捉えられがちですが前作以上に「子供には難しいんじゃ?」と感じる部分も・・。
さて、ここで書きたいのが時代設定。
前作でも結構時代が新しいことを思わせる雰囲気を感じましたが、今作ではトロッコ、ガス灯・大きな近代的なダム、魔法の絵と評された写真のような近代文明が随所に登場していたのが印象的です。近代文明の登場は映画の舞台が19世紀中頃から後半の設定であることを思わせます。
エルサとアナ二人の姉妹が暮らすアレンデール王国は北欧であることを想起する描写、台詞が随所に登場します。
史実では19世紀中盤から後半のこの時代、ヨーロッパでは1789年からのフランス革命や産業革命などを経て、中世から近代への変革を迎えます。更にその後の第一次大戦や北欧ではロシア(革命後のソ連)の台頭など激動の時代になります。
中世の時代の国の多くは王の支配権が及ぶ領域が国であり、近代国家のような明確な国境線はなく、大きな河川や急峻な山脈などが実質的な国境と機能していたといいます。一方で近代の時代になり今の我々が国と聞いてイメージする領域型国民国家(近代国家)の時代となります。
映画中でアナやエルサが「おじい様」と呼ぶ前々王のルナード国王は周辺民族である森の民、ノーサルドラを自国の支配下に入れようと画策しますが、まさに領域型国民国家の時代になる中で周辺国に取られる前に先手を打ったのではないでしょうか。
アレンデールは絶対君主である前王やエルサ女王のカリスマと政治的手腕による国家運営により成り立っていた部分が大きいでしょう。
映画終盤のダムの破壊による大洪水から国を守り抜いたエルサ女王の姿を見ていたアレンデール国民はきっと「魔法の力を持つエルサ女王に任せておけば、この国は安泰で自分達は平和で幸せな生活が送れる」と思ったに違いありません。
国民に主権がない絶対君主による統治でも主権者である君主(女王)が人格者であり能力があれば、案外国民は平和で幸せに暮らせるでしょう。
しかし魔法の力が決して万能ではないこと、変革と激動の時代を迎えつつある中で女王である自身の力だけで国を守りきれないことはエルサ自身が一番分かっているはずです。そしてエルサは退位し人間を超越した精霊の立場から国を守ることを
「正しい選択」として決めたのではないかと思います。
エルサが退位を決めた時、それを聞いたアナは「反対」はもちろん「自分に女王を務める自信がない」と戸惑ったことでしょう。そしてそれ以上に動揺したのはアレンデールの国民であったでしょう。
エルサの女王としての最後の仕事としてアレンデール憲法を公布して、アナは立憲君主として即位することで女王の負担と責任が減ります。そうしてアレンデールは絶対君主制から立憲君主制になったのだと思います。
ともすればエルサに頼り切ってしまいそうな国民に自分達で国を創り守ことを自覚させ、精霊としてのエルサがその後ろ盾となることが、新しい時代に国を守る手段であると・・。
前作も含めて映画中ではエルサの女王としての有能な政治的手腕を振るうシーンは出てきません。(角川つばさ文庫など書物で出ている外伝ではある模様)私の希望的観測による部分です。
このラインのディズニー映画の舞台はお城があり王様や王子・王女がいて王国を統治する中世ヨーロッパが舞台になっています。この時代の王族や貴族のような位が高い人達にとっての結婚は恋愛とは程遠い政略結婚の時代でした。その中で恋愛して自らが望んだ好きな人と結婚するというのは時代背景を考えれば画期的な物語です。
「アナと雪の女王」では中世という古き良き時代が終焉を迎えようとしている中で王国そのものの存亡をかけて戦うプリセンスの物語という新たな境地であると感じました。映画はアナが即位についでクリストフとの結婚を示唆するシーンが描かれています。クリストフは前作で国家の危機を救う手助けをした功労者とはいえ、元々は一般の庶民。庶民のクリストフと新たに女王となったアナとの結婚もまた新しい時代の到来を思わせる展開であると感じました。
2019/12/30 2:00(JST)