喫煙を考える

「喫煙」という行為について共に考えましょう。
タバコで苦しむのは、喫煙者本人だけではありません。

生島壮一郎『肺が危ない!』

2014-03-14 12:32:56 | 書籍

これまで私は、タバコに関する本を何冊も読んできましたが
拙著の出版にあたり、そのきっかけを作った『肺が危ない!』を、まず御紹介することとします。
私の個人的ブログ「ウィトゲンシュタイン的日々」でも、かなり前に取り上げたので
もしかすると重複する箇所もあるかとは思いますが、そこは御容赦ください。


私がこの本を手にしたのは、3年前、2011年の2月でした。
前年の2010年2月に特発性間質性肺炎と肺気腫の急性増悪で父を亡くし
ちょうど1年が経った頃でした。
著者の真剣で誠実な、叫びといってもいい言葉の数々にとても心を動かされたと同時に
著者が毎日の診療と治療で向き合っているCOPD(慢性閉塞性肺疾患)患者の描写に
父のことを思わずにはいられませんでした。
緊張性気胸で呼吸困難になった父の最期は、拙著でも触れましたが、壮絶でした。
著者は、そのような状態を、以下のように書いておられます。

(引用開始)
 私たち医師には、苦しみながら死んでいく患者さんの姿がはっきり見えています。しかし、一般の人たちには、タバコを吸い続けていると最後にはどうなるか、どんな苦しみが待っているのか、想像がつかないでしょう。ひとりでもCOPDや肺がんで苦しむ人を減らしていくためにはどうしたらいいか――現実的には、急性増悪時に救急車で運ばれてくる患者さんたちの、あの壮絶な苦しみようを、喫煙者の人たちに見てもらうしかないのだろうか……とさえ思うことがあります。
(引用終了)

私も、もし時間が巻き戻せるなら、父の最期に喫煙者の人達を立ち会わせたいとさえ思います。
まったく関係のない間柄だったとしても、おそらく相当の衝撃を受けるはずです。
そして、タバコによって家族を奪われた、遺族の苦しみや悲しみも、見てもらいたいとも思います。
それが叶わないので、私は拙著『タバコに奪われた命 父の「闘病MEMO」に寄せて』に
父の経過と最期、そして家族の一人である娘として私が感じたことを、ありのままに書きました。
『肺が危ない!』を読むと、著者の命を慈しむ医師としての姿が見えてきます。
ぜひ皆さんに読んでもらいたい本として、お奨めします。

また、著者は、次のように述べています。

(引用開始)
 これまで「タバコを吸っていても、長寿の人はいるじゃないか」「自分に限って、肺がんなんかにはならないさ」といった思いで過ごしてきたのでしょう。しかし、敵はひそかに進行し、ついに姿を現したときには、やりきれないほど厳しい現実と向き合うことになるのです。このような事例が非常に多いことを、ぜひ知ってほしいと思います。
(引用終了)

私も、よく「家の親父はもう85になるけれど、元気でタバコを吸っているんだよね。」とか
「長寿で有名な泉重千代さんだって、タバコを吸っていて長生きだったじゃないか。」とか
そういう類のことを言われることがあります。
それも、そういう御本人は非喫煙者だったりするのです。
親御さんの肩を持つのか、親御さんの末路を否定したいのか
そこはわかりませんが、この論理には見えないところは見ないという
欠点が隠されていると私は考えています。
名付けて「法隆寺理論」(すみません、私が勝手に名付けています)。
法隆寺は残存する世界最古の木造建築だ=木は鉄筋コンクリートよりも強い
というような論理を聞いたことはないでしょうか。
たしかに、法隆寺は残存する世界最古の木造建築ですが
その陰に、数多の木造建築が失われていることを見ずして
木は強いのだというような結論を導くことは、大きな誤りです。
タバコを吸っていても長生きの人の陰には、タバコによる病で倒れた
数多くの人がいることを忘れてはなりません。
しかも、法隆寺は現在までの間に、何度となく補修・修復の手が入っています。
シロアリに蝕まれたり腐ったりした部分は、取り換えて修理すればよいのですが
肺や気管支はそうはいきません。
著者も述べていますが「肺や気管支はリニューアルできない」のです。


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