今日のお昼には、家を出る。帰宅は5日後。
そんな朝、最後のメールチェックをしていました。
静かな里山の中の我が家。何も音はありません。
突然外から、うめき声が聞こえてきました。「う~~ん。う~~ん。」
犬?・・・・。違うヤギだ!
玄関を出ると、そこには、おしりの方からとろりとした液体をたらしながら
横たわっているヤギが、いました。
私を見つけると、一瞬、間がありそして、またうめき声を抑えることが出来ないで
「う~~ん。う~~ん。」
いよいよなんだ。生まれるんだ。
朝、50mほど離れた小屋から出すと、私について、家の方までついて来ていたヤギの気持ちを今、わかってやることが出来ました。
私がパソコンを置いている場所から直線でひっぱって最短距離の外の壁ぎわにいたのですから。
これまで、3度のやぎの出産がありました。
みんな生れ落ちてから気がついていたのですが、陣痛に間にあったのは、私が一番最初に家に来てもらい、その分想いも大きいこの仔がはじめてです。
こんな時に・・。と自分でも思いながら、写真に収めました。
- 羊水と一緒に前足が見えています。
- そのまま、どこで産むのがいいのか、考えているようであちこち歩き回ります。鼻も出て来たのに、そんなに歩いていいの?うろたえることしかできない私。
- 風の当たらない暖かな土手の近くに決めたようで、どっかと座り陣痛に耐えきれず今まで聞いたこともない大きな声で「めえーーーーーーーーーー!!!!!」その後、「うううーん」といきむと頭と体が体内から出てきました。
- 命の瞬間です。
- ぬるぬるの体をすぐになめてあげています。羊水の入った袋がまだつながっています。ここに入っていたのね・・・。
- 5分くらいたったでしょうか。再びうめき声をあげます。2匹目の出産です。少し色の白い仔が出てきました。
お母さんヤギが自分のお乳を吸っています。出るのを確認したのでしょうか。道を開けてあげたのでしょうか。仔ヤギが這いながらおっぱいを探します。
初乳を飲むことが、免疫をつけるために大事なことなので私も手が血まみれになりながら仔ヤギの顔をおっぱいに近づけてやりました。少し寒いのか震えている体をタオルでふいてやったりしながら写真を撮ったのでカメラも血まみれです。
7.仔ヤギを交互になめながら、羊水にまみれた草も食べるお母さんやぎ。なんてたくましい。そうだ。産後のお母さんやぎには、味噌をお湯で溶いたものをあげるといいと本にあったっけ。私の作った大豆で、私が作った味噌をちいさなボールにお湯で溶いて持っていくと本当に吸い込まれるように、飲んで行きます。農業者として味噌を作っていてこんなに嬉しかったことはありません。あげても、あげても飲み干して、4杯も作りました。
8. 15分くらいで立ち上がりました。かわいいの極み
9.へその緒がまだおしりから離れていません。しばらくすると、後産が出てきました。
体も乾いてやっと、落ち着きました。夢中で、ここまでが1時間。
時計を見ると後、30分ほどで私は家をでなければならない時間でした。
親子を小屋まで移動させ、草をたっっぷりあげて、他のヤギが入らないように鍵をかけ
寒くないように入り口をシートで覆いました。
ずっと、ずっと気になっていたヤギを残して5日間も家をあけるその日の朝。
こんな絶妙なタイミングを与えてくれた神様に感謝し、命の瞬間を見せてくれたヤギに感謝し、その姿に感動し、それまでの心配な気持ちを軽くしてもらって
そして、私は神様の所へ向かわせてもらいます。
きっと、私には必要だったこの1ヶ月。真剣に心から相手を想うことを確かに経験させてもらいました。
自分の2回の出産と、痛みも気持ちも重なるものがありました。
そうだった。痛かったっけ。苦しかったっけ。自分の意志では、なんとすることも出来ないエネルギーを体から感じたっけ。
体内から子供が出てくる瞬間のあの感覚まで鮮明によみがえってきました。
鳥肌の立つのも収まり、安心して、感謝して、重い気持ちは軽くなり、
そしてその分清々しい気持ちで神様に向かえる。
やっと、暖かくなってきた太陽にも、柔らかく仔ヤギを迎えてくれた土にも、
お味噌を溶かしてお母さんヤギの体を潤してくれた水にも、全てに感謝です。
「よかったねえ。ありがとう。お疲れ様でした。」
たくさんの言葉をヤギにかけて、夕方帰る夫に後を任せて、
もう、重くはない自分だけの荷物を持って出かけました。
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