山々は景色が一変し、紅葉真っ盛りの季節となった。
スポーツをするには絶好の気候である。
SH小学校の先生からインストラクターの派遣要請があり、T氏と二人で出かけた。
この小学校の校歌は「信濃の国」(県歌)である。体育館にはこの校歌が誇らしく掲額されていた。
長野県民なら誰でも歌えるこの歌曲は、他県の人から見れば「不思議」、「驚き」だろうが・・・、ここで1番のみ紹介しておく。
信濃の国は十州(じっしゅう)に
境連(さかいつら)ぬる国にして
聳(そび)ゆる山はいや高く
流(なが)るる川はいや遠し
松本 伊那(いな) 佐久(さく) 善光寺
四つの平(たいら)は肥沃(ひよく)の地
海こそなけれもの沢(さわ)に
万足(よろずた)らわぬ事(こと)ぞなき
6番まであり、しかも4番のメロディーだけが他と違うのも珍しい。
県内の名所旧跡、山川、産業、歴史文化、偉人などが織り込まれている。これを歌うと長野県がどんな県であるかが理解できる。
県民は小学校で必ずこの歌を習うので、誰でもみんなが歌えるというわけだ。
さて、体育館に集まったのは5年生20人と担任の先生、保護者10人ほど。子どもたちはすでに自主的に準備体操をしていた。
始めの会では自己紹介の後、質問タイムを設けた。
あらかじめ授業で話し合っていたらしく、「ドッジボールの先生に聞いてみたいこと」という表題で、質問項目が模造紙に書かれていた。
元気のいい男の子が手を挙げて質問してくれた。
「強いチームになるためにはどうしたらいいですか?」
「強い球を投げるには?」
「パス回しはどうしたらいいか?」
「膝の下に来たボールの捕り方は?」
男女2チームが来週に迫った「NAGANOスポーツフェスティバル」に出場するために練習しているとのこと。今日のドッジボール講習会に臨む姿勢はみんな真剣である。
講習では、いつものように「ドッジ」の語源クイズ、じゃんけん大会(指の運動)から入った。歓声や笑いが起こる中で子どもたちも保護者の方々も、これから始まるドッジボール講習に期待感を高めていった。
外野の動きをボードで説明する中で、ルールに込められた基本理念(自主性・自己責任・向上心)を説いた。
後ろで聞いていた保護者の皆様も近寄って来て真剣に耳を傾けてくださる姿がうれしかった。
攻撃と守備に分かれて基本動作とフォーメーションを教えた。子どもたちは「強いチームになりたい」という思いで、一生懸命に走り回っていた。
動きはまだぎこちないが、少しずつ慣れてきた。
教えた通り素直にパスを回し、アタックを試みる子どもたち。めきめきと上達し、オーバーラインも少なくなってきた。
守備グループもターンの練習を繰り返す中で身のこなしが早くなり、「1・2・3」「ナイスキャッチ!」の声や拍手もだんだん大きくなってきた。
最後に試合をやってみたが、攻撃にリズムが出てパス回しが上手になっていることに驚く。
内野の一列フォーメーションもだいぶ揃うようになってきた。
「もっとやりたい!」という声を遮って、終わりの会を行った。
感想発表では、何人も進んで手を挙げて発表してくれる姿が印象的だった。
「外野の動き方が分かって嬉しかった。」
「ボールを怖がらないで捕れて楽しかった。」
「内野の守り方が練習できたから、これからもやってみたい。」
「いろいろと教えてもらって、良くわかった。」
始めの会の時の顔とは全然違って、みんな和やかな顔になっていることに驚く。
満足感と充実感が漂っていた。
会が終了したので、担任の先生に森浩美氏(日本協会元理事長)の講演集「FEEL THINK ACTION」の冊子を紹介した。
「この本の内容でドッジボールの良さを保護者の皆さんに説明してください。私たちがドッジボールを普及する理由が書いてあります。」
T先生にはこうして講演集冊子を買っていただき、感謝している。(協会にとっても貴重な活動資金になることはもちろんである。)
「私たちが普及しようとするのは、ドッジボールそのものではなく、ルールに込められた理念である。」(日本協会の方針)
帰り際に荷物を持ってくれたり、体育館の玄関まで出て来て「ありがとうございました。」と、ていねいに見送ってくれたり・・・、純粋な子どもたちの姿に感動した。
毎年のイベントである「NAGANOスポーツフェスティバル」(フレンドリーの部)に、この学級が一つに団結して楽しく参加できるといいな、と願ってSH小学校を後にした。
2011/10/20