東大入試2006年前期地理B第2問設問A
第2問 森林と木材について
設問A 次の表1は、いくつかの国の森林と木材生産についてまとめたものである。表1中のa~eは、インドネシア、カナダ、タイ、ニュージーランド、フィンランドのいずれかである。a~eの国名を答えよ。
第2問設問Bに続く
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解答 第2問設問A
a-フィンランド
b-インドネシア
c-ニュージーランド
d-タイ
e-カナダ
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解説 第2問設問A
ラワンとは熱帯に多いフタバガキ科の総称である。
1.フィンランドは針葉樹林(タイガ)が広く分布する。
フィンランドの森林率は72%。主要国では最も高い。森林以外には氷河湖(スオミ)や氷河堆積物(モレーン)が多く、耕地に適した土地は7.2%だけである。高緯度のため、森林のほとんどは針葉樹林帯(タイガ)である。フィンランドは木材の付加価値を高めるために、紙に加工して輸出する。
◆フィンランドの輸出品(輸出額525億ドル)。
電気機械 23.5%
紙 類 17.4%
一般機械 11.9%
鉄 鋼 11.9%
石油製品 3.4%
電気機械が一番多いのは、携帯電話の世界最大のメーカーノキア社の業績拡大を反映した結果である。しかし、コンピューターや携帯電話の、技術と価格の国際競争は非常に激しい。
2.インドネシアでは薪炭材の割合が高い。
マレーシアとインドネシアの木材事情はほぼ同じである。貧しくて、電力・石油・ガスを使えない者は、森林の樹木を切り倒して燃料とする(薪炭材)。
燃料としての樹木を買う人、売る人だけではない。運ぶ人もいる。
◆インドネシアの林業の特徴。
①熱帯雨林が大半を占め、針葉樹は存在しない。
②1980年代に日本にラワン材を丸太のまま安く輸出していたが、木材資源を保護するためと、輸出価格を高めるため、製品に加工して輸出する割合が増えた。建築材・合板だけではなく、紙の輸出量も増加した。
③輸出用木材を伐採する面積は広くない。伝統的焼畑農業として森林を焼き払ったり、プランテーション農場の拡張の方が、森林伐採の面積よりも広い。
④インドネシアではジャワ島への人口集中をおさえるため、熱帯雨林地帯への移住を奨励している。移住者は熱帯雨林を焼却して、その跡地を開墾して、商品作物を栽培する。
3.ニュージーランドの気候はCfbだが,冷帯林タイガが分布。
気温年較差はウェリントンで7.9℃。夏は涼しく、冬は暖かい。夏は涼しいというより、肌寒いような気温である。ウェリントンの2月(南半球の夏)は16.7℃であり、広葉樹は生育せず、針葉樹がほとんど全部となる。
7月(南半球の冬)は8.8℃であり、冬でも羊の野外飼育が可能である。羊は針葉樹に囲まれた通年牧場で飼育される。在来種コリデールなので、野外飼育に強いのであろう。
4.タイの森林率は今も昔も30%である。
タイは熱帯・亜熱帯にあり、全部が広葉樹であり、針葉樹はない。低地の森林は水田に転換されて、森林は存在しない。
1961年の第1次国家開発計画で、輸出用作物栽培が奨励された。これまでの自給用タロイモに替えて、輸出用作物としてキャッサバ(タピオカの原料)、ジュート、サトウキビが栽培された。
日本で牛丼ブームが起こった時、紅ショウガが大量に使われた。タイの山間地の農家が日本向けのショウガ栽培を始めた。栽培は簡単だが連作ができず、農地の荒廃を引き起こした。
山間地の農家は、韓国・日本向けの、朝鮮人参の栽培に手を出した。収穫まで5年、そしてそのあと5年は何も生えなかった。農地は荒れた。農地を荒廃させたが、森林率は下がらなかった。
タイの森林面積は1960年代には30%、2000年には29%とほとんど変わらない。高価な木材、例えばチーク材、黒檀、紫檀などの部分的盗伐はなされたが、森林率を大きく減少させるような、木材の大量伐採・大量輸出はなかった。
5.カナダの林業はブリテッシュコロンビア州中心。
アメリカ・中国・日本の3大木材輸入国は、カナダが最大の輸入先である。カナダ連邦政府は、熱帯林の自然破壊が激しかったように、カナダの針葉樹林(タイガ)の破壊を恐れている。しかし、ブリテッシュコロンビア州当局は、自然破壊は起こりえないほどの木材資源があるとして、針葉樹の輸出を許可した。かつては丸太のまま輸出していたが、現在は付加価値を高めるため、板・柱などを注文通りに大きさに裁断して輸出している。住宅1戸分の建材をコンテナに収納して、鉄道・トラック・船などを使い、海陸一貫輸送体制の形で輸出することも多い。
カナダ連邦政府はブリテッシュコロンビア州と協力し、連邦政府と州当局とが、森林の計画的伐採をして、「持続可能な開発」をめざしている。
第2問 森林と木材について
設問A 次の表1は、いくつかの国の森林と木材生産についてまとめたものである。表1中のa~eは、インドネシア、カナダ、タイ、ニュージーランド、フィンランドのいずれかである。a~eの国名を答えよ。
第2問設問Bに続く
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解答 第2問設問A
a-フィンランド
b-インドネシア
c-ニュージーランド
d-タイ
e-カナダ
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解説 第2問設問A
ラワンとは熱帯に多いフタバガキ科の総称である。
1.フィンランドは針葉樹林(タイガ)が広く分布する。
フィンランドの森林率は72%。主要国では最も高い。森林以外には氷河湖(スオミ)や氷河堆積物(モレーン)が多く、耕地に適した土地は7.2%だけである。高緯度のため、森林のほとんどは針葉樹林帯(タイガ)である。フィンランドは木材の付加価値を高めるために、紙に加工して輸出する。
◆フィンランドの輸出品(輸出額525億ドル)。
電気機械 23.5%
紙 類 17.4%
一般機械 11.9%
鉄 鋼 11.9%
石油製品 3.4%
電気機械が一番多いのは、携帯電話の世界最大のメーカーノキア社の業績拡大を反映した結果である。しかし、コンピューターや携帯電話の、技術と価格の国際競争は非常に激しい。
2.インドネシアでは薪炭材の割合が高い。
マレーシアとインドネシアの木材事情はほぼ同じである。貧しくて、電力・石油・ガスを使えない者は、森林の樹木を切り倒して燃料とする(薪炭材)。
燃料としての樹木を買う人、売る人だけではない。運ぶ人もいる。
◆インドネシアの林業の特徴。
①熱帯雨林が大半を占め、針葉樹は存在しない。
②1980年代に日本にラワン材を丸太のまま安く輸出していたが、木材資源を保護するためと、輸出価格を高めるため、製品に加工して輸出する割合が増えた。建築材・合板だけではなく、紙の輸出量も増加した。
③輸出用木材を伐採する面積は広くない。伝統的焼畑農業として森林を焼き払ったり、プランテーション農場の拡張の方が、森林伐採の面積よりも広い。
④インドネシアではジャワ島への人口集中をおさえるため、熱帯雨林地帯への移住を奨励している。移住者は熱帯雨林を焼却して、その跡地を開墾して、商品作物を栽培する。
3.ニュージーランドの気候はCfbだが,冷帯林タイガが分布。
気温年較差はウェリントンで7.9℃。夏は涼しく、冬は暖かい。夏は涼しいというより、肌寒いような気温である。ウェリントンの2月(南半球の夏)は16.7℃であり、広葉樹は生育せず、針葉樹がほとんど全部となる。
7月(南半球の冬)は8.8℃であり、冬でも羊の野外飼育が可能である。羊は針葉樹に囲まれた通年牧場で飼育される。在来種コリデールなので、野外飼育に強いのであろう。
4.タイの森林率は今も昔も30%である。
タイは熱帯・亜熱帯にあり、全部が広葉樹であり、針葉樹はない。低地の森林は水田に転換されて、森林は存在しない。
1961年の第1次国家開発計画で、輸出用作物栽培が奨励された。これまでの自給用タロイモに替えて、輸出用作物としてキャッサバ(タピオカの原料)、ジュート、サトウキビが栽培された。
日本で牛丼ブームが起こった時、紅ショウガが大量に使われた。タイの山間地の農家が日本向けのショウガ栽培を始めた。栽培は簡単だが連作ができず、農地の荒廃を引き起こした。
山間地の農家は、韓国・日本向けの、朝鮮人参の栽培に手を出した。収穫まで5年、そしてそのあと5年は何も生えなかった。農地は荒れた。農地を荒廃させたが、森林率は下がらなかった。
タイの森林面積は1960年代には30%、2000年には29%とほとんど変わらない。高価な木材、例えばチーク材、黒檀、紫檀などの部分的盗伐はなされたが、森林率を大きく減少させるような、木材の大量伐採・大量輸出はなかった。
5.カナダの林業はブリテッシュコロンビア州中心。
アメリカ・中国・日本の3大木材輸入国は、カナダが最大の輸入先である。カナダ連邦政府は、熱帯林の自然破壊が激しかったように、カナダの針葉樹林(タイガ)の破壊を恐れている。しかし、ブリテッシュコロンビア州当局は、自然破壊は起こりえないほどの木材資源があるとして、針葉樹の輸出を許可した。かつては丸太のまま輸出していたが、現在は付加価値を高めるため、板・柱などを注文通りに大きさに裁断して輸出している。住宅1戸分の建材をコンテナに収納して、鉄道・トラック・船などを使い、海陸一貫輸送体制の形で輸出することも多い。
カナダ連邦政府はブリテッシュコロンビア州と協力し、連邦政府と州当局とが、森林の計画的伐採をして、「持続可能な開発」をめざしている。