夜明け前の道を歩いていると、辺りの様子を
うかがう不審な人影を見つけた。
私に気づかずにその男がとった行動は道脇にある
パパイヤの実をもぎ取って、足早に去っていった。
別に他人の家の庭に侵入しているわけでもないのに、
犯罪とは思えない。
パパイヤの生産量では鹿児島県が7割を占めているが、
加工品や果実として栽培されている。
沖縄では果実ではなく野菜として炒めたり煮付けたりして食べる。
小学校の給食ではゴーヤの次に嫌いな食べ物がパパイヤだそうだ。
昔から沖縄には「妊婦がパパイヤを食べると
お乳がよく出るようになる」と言われている。
そのため、子供が産まれると妊婦のもとには、パパイヤが
どっさりと送られてきたものだ。
とオバァがよく言っていた。
ホントにお乳の出よくなるのかは定かではない。
パパイヤの青い実や茎を切りつけると、白い液体が
滴り落ちる。母乳が溢れ出るさまを連想させるのかも
知れない。
またパパイヤの形はいかにも母乳が出そうな感じもする。
そして八重山地方ではパパイヤのことを、
その実を二つに割った形から、マンジュマイと言う。
これは「女陰木」という意味で、パパイヤは
多産をもたらす植物とされている。
夜明け前に出会った挙動不審な男は家に
妊婦さんでもいるのだろうか…