「嘘は泥棒のはじまり」という。
「嘘」とは、基本的に「事実でないこと」や「事実でないことをを本当であるかのように言うこと」である。
「嘘の文字を書く」といえば「間違った」ということだし、「ここで引き下がっては嘘だ」といえば「適切でない」ことである。
このように、多くの場合、「嘘」は悪いことだと認識されている。
だが、他人を喜ばせるための嘘は“WHITE LIE”と呼ばれて好意的に捉えられているし、年齢のサバを読んだり大げさなホラを吹いたりすることは、その心情への感情移入やユーモアなどと相まって大きな抵抗感もなく受け止められることが多い。
やはり「嘘も方便」ということなのだろう。
嘘をつくと、無意識のうちに眼がキョロキョロしたり身振り手振りが大げさになったりするが、これが俗に「目が泳ぐ」という状態である。
声が必要以上に大きくなったり、逆に、小さくなったりすることもある。
ある調査によれば、男性は嘘をつくと眼が合わせられなくなるが、女性は反対に嘘をつくと相手の眼をじっと見る傾向がある、という。
皆の衆、心しておかれたし!(笑)。
「嘘」といえば、論理学で学ぶような「嘘のパラドックス」というのもある。
よく推理クイズなどで出てくるような問題で、「クレタ人が“クレタ人は嘘つきだ”と言ったがこれは信用できるか」とか「天国と地獄に通じる分かれ道に正直者と嘘つきが立っていて、天国に行くためにどちらかに1回だけ質問することが許された場合、さて何と訊ねたらよいか」などというものである。
正直者は必ず正直に答え、嘘つきは必ず嘘をつくというのがミソのようで、解答の方はモノの本なりインターネットで検索してみてほしい。
話は飛ぶが、「嘘」について書かれた曲と言えば、昭和47年(1974)にヒットした“うそ”(山口洋子作詞、平尾昌晃作曲)を思い出す。
中条きよしのデビュー曲で、彼はこの曲でめでたく紅白歌合戦への初出場を遂げた。
この年流行したのが“なみだの操”(殿さまキングス)、“あなた”(小坂明子)だったそうだが、もうそんな昔のことだったのかという別の感慨も生まれてきそうだ(笑)。
海外の曲ではやはり“嘘は罪”(IT'S A SIN TO TELL A LIE)というスタンダード・ナンバーであろうか。
以前、こちらで紹介したこともある。
1936年に作られた古い曲だが、作者のビリー・メイヒューという人の素性ははっきりせず、いわば「謎のヴェール」に包まれた人物なのだ。
彼の作品はこれ以外に知られているものがなく、まさに名実ともに一発屋で、しかも特大の満塁ホームランだった。
何らかの事情で、誰かほかのソングライターがペンネームを使った可能性もあり、いわば「嘘」だったかもしれないのだ。
嘘は英語で“LIE”、嘘つきは“LIAR”だが、日本語よりもはるかに強烈な語感を持っているらしく、他人から“LIE”とか“LIAR”と言われたら、決闘をしなければならないほど相手の人格を傷つける強い言葉なのだそうだ。
日本では「嘘から出たまこと」とか言っているが、「嘘から出た決闘」などというのはシャレにはならない。
時として「嘘」が恐ろしい結果を招くことがあることを忘れてはならないだろう。
(真実の口)
もう5年も前になってしまったが、平成21年11月のNHK文芸選評・川柳の課題が「嘘」(選者は安藤波瑠さん)であった。
どんな「嘘」が選ばれたのだろうか。
川柳を作る参考になれば幸いである。
どちらかと言えばホワイト・ライの優しい句が多いが、それでも皮肉あり、自戒あり、願望ありで「嘘もいろいろ」である。
この回、以下の拙句を佳作に選んでいただいた。
久方ぶりの川柳ネタであった。
(書いたはずのない三角形が見える…)
「嘘」とは、基本的に「事実でないこと」や「事実でないことをを本当であるかのように言うこと」である。
「嘘の文字を書く」といえば「間違った」ということだし、「ここで引き下がっては嘘だ」といえば「適切でない」ことである。
このように、多くの場合、「嘘」は悪いことだと認識されている。
だが、他人を喜ばせるための嘘は“WHITE LIE”と呼ばれて好意的に捉えられているし、年齢のサバを読んだり大げさなホラを吹いたりすることは、その心情への感情移入やユーモアなどと相まって大きな抵抗感もなく受け止められることが多い。
やはり「嘘も方便」ということなのだろう。
嘘をつくと、無意識のうちに眼がキョロキョロしたり身振り手振りが大げさになったりするが、これが俗に「目が泳ぐ」という状態である。
声が必要以上に大きくなったり、逆に、小さくなったりすることもある。
ある調査によれば、男性は嘘をつくと眼が合わせられなくなるが、女性は反対に嘘をつくと相手の眼をじっと見る傾向がある、という。
皆の衆、心しておかれたし!(笑)。
「嘘」といえば、論理学で学ぶような「嘘のパラドックス」というのもある。
よく推理クイズなどで出てくるような問題で、「クレタ人が“クレタ人は嘘つきだ”と言ったがこれは信用できるか」とか「天国と地獄に通じる分かれ道に正直者と嘘つきが立っていて、天国に行くためにどちらかに1回だけ質問することが許された場合、さて何と訊ねたらよいか」などというものである。
正直者は必ず正直に答え、嘘つきは必ず嘘をつくというのがミソのようで、解答の方はモノの本なりインターネットで検索してみてほしい。
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話は飛ぶが、「嘘」について書かれた曲と言えば、昭和47年(1974)にヒットした“うそ”(山口洋子作詞、平尾昌晃作曲)を思い出す。
中条きよしのデビュー曲で、彼はこの曲でめでたく紅白歌合戦への初出場を遂げた。
この年流行したのが“なみだの操”(殿さまキングス)、“あなた”(小坂明子)だったそうだが、もうそんな昔のことだったのかという別の感慨も生まれてきそうだ(笑)。
海外の曲ではやはり“嘘は罪”(IT'S A SIN TO TELL A LIE)というスタンダード・ナンバーであろうか。
以前、こちらで紹介したこともある。
1936年に作られた古い曲だが、作者のビリー・メイヒューという人の素性ははっきりせず、いわば「謎のヴェール」に包まれた人物なのだ。
彼の作品はこれ以外に知られているものがなく、まさに名実ともに一発屋で、しかも特大の満塁ホームランだった。
何らかの事情で、誰かほかのソングライターがペンネームを使った可能性もあり、いわば「嘘」だったかもしれないのだ。
嘘は英語で“LIE”、嘘つきは“LIAR”だが、日本語よりもはるかに強烈な語感を持っているらしく、他人から“LIE”とか“LIAR”と言われたら、決闘をしなければならないほど相手の人格を傷つける強い言葉なのだそうだ。
日本では「嘘から出たまこと」とか言っているが、「嘘から出た決闘」などというのはシャレにはならない。
時として「嘘」が恐ろしい結果を招くことがあることを忘れてはならないだろう。
(真実の口)
♪ ♪
もう5年も前になってしまったが、平成21年11月のNHK文芸選評・川柳の課題が「嘘」(選者は安藤波瑠さん)であった。
どんな「嘘」が選ばれたのだろうか。
川柳を作る参考になれば幸いである。
課題「嘘」 安藤波瑠・選
美しい嘘を並べた入門書 (柴田忠司)
ふつつかは嘘じゃなかったハネムーン (葉玉 久)
温かい嘘をきいてる千羽鶴 (加納金子)
ガン告知嘘じゃないかと空に問う (安藤キサ子)
傷つけぬセリフ選ぶと嘘になる (林田あつ子)
美しい嘘は気付かぬ振りをする (谷口嘉子)
嘘も罪でも真実はもっと罪 (赤津光治)
いい嘘が言えて大人の仲間入り (奥田 実)
繕えば一つの嘘が雪だるま (井岡 榮)
釈明の視線が少しずつ逸れる (野村信之)
流し目の嘘おっしゃいへ飲みに行く (石川禎紀)
綺麗だと嘘でも一度言われたい (樋口 眞)
ビタミンの顔にもなれる軽い嘘 (吉富 廣)
武勇伝少しの嘘は糺すまい (金井矩子)
嘘つきと泣かれ出勤日曜日 (小西章雄)
ばれたかな優しい妻の目を避ける (問可圧子)
神様が大吉ですと喜ばす (加賀山一興)
本物と信じて買った桐の箱 (足立 茂)
惚けてみる誰が一番優しいか (本田純子)
言い訳を考え乍ら終電車 (浦本狂児)
うそに嘘重ねた嘘が動けない (宮竹葉)
泥海を泳いで渡る二枚舌 (釈 翔空)
総務部で叔父が死ぬのは三回目 (阪井 周)
生きている都合時々うそを言う (古渕さと子)
おふくろと妻の狭間でつらい嘘 (樋川眞一)
仮病の子ときにはそっと休ませる (川北英雄)
善人のつく嘘なんてたかが知れ (澤 磨育)
ほんわかとさせる嘘なら罪は無い (伏見久江)
嘘の羽根付けて噂は飛んで行く (赤井武次)
ドンファンの嘘は鼓膜に心地よい (清水展利)
嘘のない日記に鍵が欠かせない (古田哲弥)
嘘少し混ぜて自分史補修する (幸田益二)
年老いた母には笑顔だけを見せ (栗林むつみ)
世辞ひとつ言えば潤う世間体 (木村残の介)
嘘少し混ぜて宴会盛り上げる (鈴木由美子)
うそつかれうそを見抜けるようになり (佐々木桂子)
仲人の嘘を笑って五十年 (さとうかず枝)
おれおれに泣かれ母性が耐えきれぬ (山口昭悦)
美しい嘘を並べた入門書 (柴田忠司)
ふつつかは嘘じゃなかったハネムーン (葉玉 久)
温かい嘘をきいてる千羽鶴 (加納金子)
ガン告知嘘じゃないかと空に問う (安藤キサ子)
傷つけぬセリフ選ぶと嘘になる (林田あつ子)
美しい嘘は気付かぬ振りをする (谷口嘉子)
嘘も罪でも真実はもっと罪 (赤津光治)
いい嘘が言えて大人の仲間入り (奥田 実)
繕えば一つの嘘が雪だるま (井岡 榮)
釈明の視線が少しずつ逸れる (野村信之)
流し目の嘘おっしゃいへ飲みに行く (石川禎紀)
綺麗だと嘘でも一度言われたい (樋口 眞)
ビタミンの顔にもなれる軽い嘘 (吉富 廣)
武勇伝少しの嘘は糺すまい (金井矩子)
嘘つきと泣かれ出勤日曜日 (小西章雄)
ばれたかな優しい妻の目を避ける (問可圧子)
神様が大吉ですと喜ばす (加賀山一興)
本物と信じて買った桐の箱 (足立 茂)
惚けてみる誰が一番優しいか (本田純子)
言い訳を考え乍ら終電車 (浦本狂児)
うそに嘘重ねた嘘が動けない (宮竹葉)
泥海を泳いで渡る二枚舌 (釈 翔空)
総務部で叔父が死ぬのは三回目 (阪井 周)
生きている都合時々うそを言う (古渕さと子)
おふくろと妻の狭間でつらい嘘 (樋川眞一)
仮病の子ときにはそっと休ませる (川北英雄)
善人のつく嘘なんてたかが知れ (澤 磨育)
ほんわかとさせる嘘なら罪は無い (伏見久江)
嘘の羽根付けて噂は飛んで行く (赤井武次)
ドンファンの嘘は鼓膜に心地よい (清水展利)
嘘のない日記に鍵が欠かせない (古田哲弥)
嘘少し混ぜて自分史補修する (幸田益二)
年老いた母には笑顔だけを見せ (栗林むつみ)
世辞ひとつ言えば潤う世間体 (木村残の介)
嘘少し混ぜて宴会盛り上げる (鈴木由美子)
うそつかれうそを見抜けるようになり (佐々木桂子)
仲人の嘘を笑って五十年 (さとうかず枝)
おれおれに泣かれ母性が耐えきれぬ (山口昭悦)
どちらかと言えばホワイト・ライの優しい句が多いが、それでも皮肉あり、自戒あり、願望ありで「嘘もいろいろ」である。
この回、以下の拙句を佳作に選んでいただいた。
言い訳の山場で妻が眉を上げ (蚤助)
久方ぶりの川柳ネタであった。
(書いたはずのない三角形が見える…)