#705: 丘の上の人々

2015-08-18 | Weblog
今夏も連日猛暑が続き、記事のアップの間隔がずいぶんと空いてしまった。海辺か高原などで避暑をしたいものだが、悲しいかな、なかなか都会から離れられない自分を発見してガックリしてしまう。墓参のため三日ほど故郷帰りしただけで、このまま今年の夏も終わってしまうのだろう。

19世紀風のクラシカルな歌曲とは異なって、いわゆるスタンダード曲といわれるようなポピュラーソングの世界を確立した大作曲家といえばジェローム・カーン(1885-1945)であろう。「Smoke Gets In Your Eyes」、「All The Things You Are」、「Ol' Man River」、「Yesterdays」などのタイトルがすぐ脳裏に浮かぶが、いずれも美しいメロディ・ラインを持った名曲である。

中でも、ユダヤ系の少し憂いを帯びたメロディ・ラインを持つ「The Folks Who Live On The Hill」(丘の上に住む人々)は、どこにでもある市井のマイホーム願望をほのぼのとした歌に託した佳曲である。

「いつの日か、丘の上に二人の家を建てたい。貴方と私、二人でいっぱいになってしまうような家を…」、そして幸せな生活を送りましょう、と歌う。歌詞はオスカー・ハマースタイン二世が書いた。「丘の上族」というところであろうか。

THE FOLKS WHO LIVE ON THE HILL (1937)
(Words by Oscar Hammerstein II / Music by Jerome Kern)

Someday we'll build a home on a hilltop high
You and I, shiny and new
Cottage that two can fill
And we'll be pleased to be called
The folks who live on the hill

Someday we may be adding a thing or two
A wing or two
We will make changes, as any family will
But we will always be called
The folks who live on the hill...

いつの日か丘の上に 私たちの家を建てたい
日当たりのいい 新築の家を
あなたと私でいっぱいになってしまうような小さな家を
そして喜んでこう呼ばれたい
丘の上に住む人たちと

いつか 二人でなにかをひとつふたつ加え
どの家族もするように 模様替えをするの
でも いつでもこう呼ばれたい
丘の上に住む人たちと...

古き良き時代のマイ・ホーム・ソングといった趣だが、37年の映画「たくましき男」(High, Wide And Handsome)の挿入歌として作られたものである。この映画は未見だがルーベン・マムーリアン監督の石油パイプライン建設を巡るお話だった。資料によれば、戦後「荒野の決戦」と改題されて再公開されたらしい。劇中アイリーン・ダンがランドルフ・スコットに向って歌っているシーンはYouTubeにアップされていて観ることができる。この冒険活劇の原作と脚本を書いたのが、オスカー・ハマースタイン二世だったというのが何だか不思議だ(笑)。

多くのジャズ・シンガーによって取り上げられているが、中でも大御所カーメン・マクレエのものがお気に入りだ。どちらかといえば大器晩成型のシンガーだった彼女の円熟期に録音されたもので、夢見心地の堂々としたバラード・シンギングが見事だ。


サラ・ヴォーンはピアニストのジミー・ロウルズを中心としたウェスト・コーストのジャズ・ミュージシャンを従え、じっくりと歌い上げていてさすがである。



盲目のピアニスト、ジョージ・シアリングのイージー・リスニング風の名アルバム「Black Satin」に収録したものは美しいメロディを十分生かしたクールな演奏で、この季節にピッタリの雰囲気を感じさせる。


日当たりはよいが昼間は留守の家  蚤助



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