goo blog サービス終了のお知らせ 

#657: 瞳を見つめて

2014-11-05 | Weblog
前稿で出たニューリー&ブリッカスのソングライター・コンビだが、アンソニー・ニューリーが出演して、レスリー・ブリッカスが単独で作詞・作曲を行ったミュージカル映画があった。
リチャード・フライシャーが監督した『ドリトル先生不思議な旅』(Doctor Dolittle‐1967)である。
主演はレックス・ハリソン、共演にサマンサ・エッガー、先ごろ亡くなった名優で映画監督としても活躍したリチャード・アッテンボロー、それにアンソニー・ニューリー。
特殊撮影をふんだんに使った大作だったが、残念ながらヒュー・ロフティングの書いた名作児童文学の映画化としては必ずしも傑作とは言い難い出来栄えであった。

ただ、ブリッカス書き下ろしの歌はどれも佳曲揃いであった。ディズニーが製作した映画のためのミュージカル『メリー・ポピンズ』(Mary Poppins‐1964)もシャーマン兄弟によって書き下ろされた歌は佳曲のオン・パレードだった。
やはり前稿に登場したサミー・デイヴィス・ジュニアは、『ドリトル先生』のナンバーだけでアルバムをリリースしている。
ステージの傑作ミュージカルにはこういう企画は珍しくもないが、映画向けのミュージカルでサウンドトラック盤以外にこういったアルバムが制作されるのは珍しいことだと思う。
そういえば、『メリー・ポピンズ』も、かのデューク・エリントンが自分のオーケストラでまるまるアルバム化したことがあり、前例があることはあったのだ。

この映画には同年のアカデミー主題歌賞を受賞した歌がある。
“Talk To The Animals”(動物たちとの対話)である。
ただ、動物たちと会話ができるドリトル先生のユニークなストーリーと密接に関係している曲であるために、面白い歌にもかかわらず、なかなか独立した楽曲として扱われる機会がない気の毒な歌である(笑)。

その点、“When I Look In Your Eyes”(瞳を見つめて)という歌は独立したラヴ・ソングとして、歌われる機会が多いようだ。
まずは、先に挙げたサミー・デイヴィス・ジュニアの歌を聴いてみよう。


WHEN I LOOK IN YOUR EYES (1967)
(Words & Music by Leslie Bricusse)

When I look in your eyes, I see the wisdom of the world in your eyes
I see the sadness of a thousand goodbyes, when I look in your eyes

And it is no surprise to see the softness of the moon in your eyes
The gentle sparkle of the stars in your eyes, when I look in your eyes...

君の瞳を見つめていると 世界の英知が見える
千の別れの悲しみが見える 君の瞳を見つめていると

君の瞳に月の柔らかさを見ても驚かない
星の優しいまたたきも 君の瞳の中にある

君の瞳に海の深さを見る 愛の深さも
ぼくが君に感じ 君がぼくに感じる愛

秋が来て夏が去る
君の瞳に月日の流れが見える
別れの時が来ても 涙もさよならもないだろう
君の瞳を見つめるだけだ

その瞳は賢く 暖かく 真実だ
君が見る世界を ぼくはどんなに愛していることか…


この歌は、ドリトル先生に扮したレックス・ハリソンが、例の『マイ・フェア・レディ』のヒギンス教授と同様に、語るが如く歌い、歌うが如く語るという、並みの歌手や俳優では至難の技ともいうべき芸でもって披露する。

“eyes”“goodbyes”“surprise”“dies”などの単語の韻がよく考えられて使われている歌詞だ。
とりわけ注目していただきたいのは最後の一行で、原詞では“How I love the world your eyes reveal”となっている。
映画ではこの部分は“Isn't it a pity you're a seal?”(可哀想に、君はアザラシではないか)と歌われる。
サーカスのアザラシをドリトル先生が逃がしてやるのだが、海に放してやるときにこのアザラシ君に向って別れの歌を歌う。だから最後に「君はアザラシではないか」とくるわけだ。
この歌が、映画を離れても独立して歌われるようにと歌詞が替えられたのだが、“seal”(アザラシ)と“reveal”(見る、表す)の韻が統一されていて、しかも、前の行の“Those eyes, so wise, so warm, so real”の“real”(真実)を受けているのだ。面白い工夫である。

そのおかげか、この歌、サミー・デイヴィス・ジュニアのほか、ボビー・ダーリンやナンシー・シナトラなどポップス畑も含めてさまざまな歌手によって歌われている。
中でも、99年にダイアナ・クラールが、ジョニー・マンデルの編曲で、同名タイトルのアルバムに収録したヴァージョンが素晴らしい出来だ。
同年のグラミー賞を受賞し、ダイアナ嬢も最優秀ジャズ・アーティストに選出され、大きく飛躍する契機となった。


ところで、この映画でのアンソニー・ニューリーだが、ドリトル先生と行動をともにする若者マシューに扮し、盟友ブリッカスの歌を何曲か歌う。中でも“Beautiful Things”という歌はなかなかいい曲だと思う。機会があれば取り上げてみたい。

今回の歌では、見つめているのは「瞳」だが、こういう状況もあり…かな? それも、もっぱら若い世代の話だ…とは限らない? ナンチャッテ、イヤ~ン(笑)。

壁に貼るアイドルが見る下着替え  蚤助



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。