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#277: Baubles, Bangles and Beads

2010-08-03 | Weblog
 今回のタイトル、何のこっちゃと言う人が多いだろう。“Baubles”はピカピカ光る安物の品のこと、“Bangles”は腕とか足首につける輪っかでつまりブレスレットとかアンクレット、“beads”はズバリ数珠とかビーズのことである。

 これはミュージカル「キスメット」(kismet-1953)の挿入曲のタイトルである。「キラキラ腕輪や首飾り」とか「ビーズと腕輪」とかいう邦題がつけられている。「キスメット」はアラビアン・ナイトの世界をステージ化したもので、舞台版はかなり残酷な復讐譚だったという。それをさらにミュージカル化したものはほとんどコメディといってもよいものだったらしい。ヴィンセント・ミネリが監督しているが、日本では劇場未公開で、テレビで放映されたことがあるという。あまりこれといった取り柄のない作品だったようだ。「ようだ」というのは、未見だからである。

 この曲は、バザールの中にある装身具を扱っている店の前でヒロインによって歌われた。キラキラ光るアクセサリーを歌ったもので、物語の舞台と風俗にはぴったりだったのであろう。もっとも現代のご婦人方もキラキラのアクセサリーはお好きなので、物語を離れても楽曲として今なお独り歩きをしているのである(笑)。

 チリンと腕輪が鳴るのを聞きなさい。キラキラ輝く腕輪とビーズ。それを身につけ私の心は歌う。私もキラキラ輝いて、誰かに夢をあげよう…という他愛のない歌である。しかし、歌詞の口調が良く、Baubles、Bangles…BeadsとBの頭韻で統一され、次いでSparkes、Spangles…SingとSで統一されるなど、語感のお遊びが面白くしかもそれがメロディーにうまく乗っていて感心する。

 エキゾチックなムードあふれるメロディーは魅力的だが、実のところは、19世紀のロシア五人組の一人で大作曲家アレクサンドル・ボロディンの「弦楽四重奏曲第二番」第2楽章が原曲なのである。タネを明かすと、このミュージカルの挿入曲はすべてボロディンのさまざまな曲が元ネタになっているのだ。ミュージカルの作詞・作曲はロバート・ライトとジョージ・フォレストとなっているが、原曲があるのにまた作曲というのは妙な話だ思うのだが(笑)。

 さて、この曲、ムード・ミュージックとして演奏されることが多く、空港とか病院とかのBGMでよく流れるという印象がある(笑)。ジャズのインストでは、キャノンボール・アダレーやオスカー・ピーターソンが演っている程度で、圧倒的にヴォーカルが多い。ミュージカルが公開された年に最初にヒットさせたペギー・リーのものが世に名高いだろうが、ここは、メル・トーメの「Back In Town」(1959)を挙げておこう。かつてトーメ自身が結成し、活動期間が短かったにもかかわらず、モダン・ジャズ・コーラスに大きな影響を与えた男女混成5人組メル・トーンズと共演したもので、絶妙なかけあいを聴かせすこぶるチャーミングな雰囲気を醸し出している。

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「最後まで光らぬ石もあっていい」


 


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