KERC活動日誌

柏アーリー・リコーダー・コンソート
古楽リコーダーアンサンブルの日々あれこれ

Recorder Trio & Quartetto いま むかし@池袋 2017.4.1

2017-04-02 22:01:45 | 演奏会の紹介/報告 2016~
昨4月1日、東京・東池袋のストゥディオ・フォンテガーラにおいて、高橋明日香先生および深井瑛理・福岡恵・宮里安矢各氏によるリサイタル「Recorder Trio & Quartetto いま むかし」が開催されました。
13:00からと16:00からの2回公演で、ここではワタクシが聴いた2回目の模様をレポートいたします。
 
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雨もよいの肌寒い天気の中、池袋の雑踏を縫っていそいそとスタジオのあるマンションの1室を訪う。
扉を開けると、そこには田中せい子先生御自ら受付として立たれるお姿が。
ひどく恐縮しつつチケットをもぎっていただき、会場へ。
 

譜面台が4台セットされた舞台に相対して10席×3列の椅子が並び、お馴染みの高橋先生門下生たちを含め三々五々集まってきた聴衆が思い思いに席を温めてその時を待つ。
開演間近には中村文栄先生、さらに浅井愛氏も姿を現し、客席に着く。
プログラムを見ると演目は次のようになっていた。
 
 廣瀬量平 (1930-2008):イディール(田園詩)I
 M.Pretrorius (ca.1571-1621):from “Terpsichore” (Ballet / Volte / Ballet des Anglois / Courante "La Durette" / Gaillarde / Ballete)
 A.de Févin (ca.1470-1511/12):En amours《愛によって》~Te Deul《テ・デウル》~Forseulment《ただ死のほかには》
 H.U.Staeps (1909-1988):Trio(Allegro moderato / Adagio con moto / Allegro grazioso)
 M.Locke (ca.1621/22–1677):Suite No.2 D-dur(Fatasie / Courante / Ayre / Sarabande)
 R.Ford (1959-):Sequentia
 
 
16:00を少し回ったところで、出演者が拍手に迎えられ入場。(以下、敬称略にて失礼します)
衣装は黒で統一されている。
会場のやわらかい雰囲気に出演者の表情もかすかに緩む。
咳払い。
 
そして少しの静寂をおいて、廣瀬のイディールIが始まった。
高橋がS、福岡A、深井がT、宮里はB。
尺八を想起させるロングトーンと畳み掛けるフレーズの波、強い緊張感を伴う幽玄な和の響き。
途中で高橋、深井がアルトに持ち替える。
奏者との近さが小さい会場ならではの魅力。
親密な音場の中で、各パートがよく融け合うと同時に明確に分離して聴こえてくる。
ただただ圧倒されているうちに、最終小節を迎えた。
 
冒頭、高橋は来場への感謝に続けて、今回のプログラムの意図を次のように語った。
「リコーダーの曲というと、バロック時代の、オーケストラやチェンバロと共演する演目を思い浮かべることがほとんどと思われる。しかし、リコーダー・アンサンブルがもっとも盛んだったのはバロック期以前のルネサンス時代で、アンサンブルはこの時代に完成された。そして、現代にリコーダーが復活してから、たくさんのリコーダー・カルテットのための曲が書かれるようになったと言われている。その意味で、アンサンブルの良い曲があるのは “むかし”と“いま”ということで、そこに焦点を絞ってプログラムを組んだ」
廣瀬をオープニングに、そして演目の最後にRフォードを配した意図までは言及されなかったが、おそらくは高橋のみならずメンバー全員の、“むかし”への内向きな回顧にとどまることなく、今この時代に生きるリコーダー奏者として、これからのリコーダー音楽の創造・発展に対する期待と決意を表明するものなのではないかと想像する。
 
後を引き取った福岡が軽妙なトークで場を和ませ、リコーダーがルネサンスモデルに持ち替えられる。2曲め、プレトリウスに。
『テルプシコーレ』収載312曲中のカルテット編成の曲を全て試奏し、各人が1曲ずつもっとも好きな曲を選び、さらにオープニングとエンディングにふさわしい2曲を付して、緩-急-緩-急-急-緩の6曲からなるプログラムとしたという。
(ちなみに、誰がどの曲を選んだのか推測して高橋先生に答えを送ってみていただいたところ、全曲完璧にはずれました・・・^_^;)
ふだんルベルティーナでは低音を担当することの多い福岡が、この曲ではSを担当。A深井、T宮里、そしてB高橋。
弾力のあるフレージングで歌い攻めてくる低音パートの2人に対し、SAはラ・ルベルティーナのテイストを思わせるやや実直な音づくり。
「緊張して指が少し震えた」という福岡だが、自らが推した2曲めのVolteの高速パッセージを華麗に決めていた。
 
プレトリウスを終えていったん深井が退場。
そして高橋・福岡・宮里が、フランドルの作家フェヴァンの横へ横へと流れる、今回もっともルネサンスらしさを感じさせる3曲を奏する。
「愛によって」はA福岡、T宮里、B高橋。
「テ・デウム」はS福岡、T宮里、B高橋。
「ただ死のほかには」はS高橋、A福岡、B宮里。
しめやかなメロディーが美しく絡み合いながら、会場を伸びやかに漂い覆っていく。
福岡同様、ふだん低音部を担当する宮里は中声部で軽やかに動きハーモニーを決めるのがよほど楽しいのか、演奏しながら時折にやりと目配せしていた。
 
続いてがらりと雰囲気を変えてシュテープスのトリオ。
半年前にこの曲の第2楽章のみを演奏しているが、今回は全楽章をカバー。
ルネサンスものとはまったく異なるハーモニー、さらにアルト2本とテナーと音色的にも近しい編成の作品がプログラムのよいアクセントとなっている。
担当パートはA1高橋、A2宮里、T福岡。
個人的には、特に第3楽章のクリスプで愛らしい演奏が圧巻と感じた。
 
 プログラムは初期ものへと時代を戻り、深井が再度登場。
ロックの組曲は全パートとも最低音から最高音域までまんべんなく用い、特にソプラノは高音域で歌うことが多く、ややもすると出音が苦しげになりがち。プロがこれをどうさばくのかが、個人的には今回最大の関心事であった。
S・A深井、A高橋、T福岡、B宮里。
モダンピッチによる演奏で、緩徐な第1、第3楽章でピッチにやや不安定さが感じられたものの、第2、第4楽章は速いテンポの中で音の粒立ち、タイミング、ハーモニーを滑らかに合わせていたのはさすが。
(高橋先生は中声部でもはっきり認識できる貫禄の歌いぶりで、中声部での振舞い方にとても参考になります)
 
プログラム最後は唯一現存の作曲家Ron Fordによるセクエンティア。
Brisk Recorder Quartet Amsterdamのために1996年に作曲された作品。
全員ユニゾンから現代的な和声に展開し、最後にまたユニゾンで終わっていくという独特な曲構成。
 
 [アンコール]
 Woodcock C (1540?—1590):"Browning" Fantasy
 
鳴りやまぬ拍手に呼び戻されてアンコールに。
高橋の「どうしてもこの曲がやりたかったのだが、5人編成なのでどうしようかと思案していたら、“たまたま”会場にせい子先生が・・・」との呼びかけに応じるように、田中せい子が登場しバスを手にする。
さすがの手慣れた演奏で今公演を締めくくった。
 
●使用楽器の写真を撮る中村文栄先生と浅井愛プロ。
 
●やはりヘン顔を担当してしまう宮里氏。
 
●後列左より宮里安矢氏、福岡 恵氏、前列左より深井瑛理氏、田中せい子先生、高橋明日香先生。

[記:べ]
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