シカゴ通信

つれづれなるままに、シカゴでの生活を記録します

技術進歩と倫理

2005-02-05 16:18:52 | Weblog

本日夕方、UCJA(University of Chicago Japan Association)の勉強会があった。本日のテーマは「遺伝子治療」。シカゴ大学医学部に勤務されている日本人医師の方々による最新の研究動向を教えてもらった。

最後に触れられたのが「遺伝子治療の倫理的問題」--いわゆる遺伝子による産み分けや人間改造がいいのかどうか、という問題。ただ、これらをディスカッションする上で忘れてはならない重要な事実は「技術は進歩しかしない」ということだ。

つまり、人間がどう倫理的な観点で技術進歩に歯止めをかけようとも、技術は前にしか進まず、後ろに進むことはありえない。「自分はこういう開発はしたくない」といっても、それはあくまで「自分の善悪の価値観・倫理観に照らし合わせた上での判断」であって、その価値観・倫理観というものは絶対的なものではないかもしれない。いや、おそらく絶対的基準などない、と言ったほうがいいのだろう。(ちょうど19世紀末に、ニーチェが「神は死んだ」と看破したように)

また、「競争」「名誉」「金銭欲」がドライバーとなって、早晩、誰かが「倫理的に問題のある」技術を開発してしまうだろう。つまり、倫理による歯止めは限りなく難しい、という事実がある。

だから、技術進歩という(センチメンタルに言えば)きわめて暴力的な事実・歴史の流れに対して、人間自身、どのように気持ちを変化させていくのか、技術進歩に応じた、新しい「善悪の基準」を作っていくのか、「哲学」を作っていくのか、が問われるのだ、と思う。(既存の価値観に縛られた「善悪」や「倫理観」で技術進歩を論じるのではなく)

そんなことを考えながら、今日は久しぶりに異分野の話をじっくり3時間にわたって聞かせてもらい、充実した金曜日の夕べだった。

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