第２００号 ２０１０年９月

手から手へ渡してくれた　花畑　　金澤ひろあき


のど自慢北海道かでも残念　　川村　薫


年寄りて思うは青い時の渦　　二神大輔


雪かいななんじゃもんじゃの花かいな　　三村須美子


蛸フェリー海広くして空広し　　内園日出杜


喋りすぎたあとの淋しさ蛍こい　　暉峻康瑞


隣室もぞもぞ虫歯と眠る　　野谷真治


プラタナスワンツーパンチで梅雨を突け　　青島巡紅


黄千両緑の葉陰白い花　　蔭山辰子


ネジのやまカラスがきゅうけいしているよ　　図



（図選）

２０１０年８月２９日連句

べっぴんにほれられ　彼がまいあがる　　川村薫

それで地球人の夢で埋まる　　図

紅葉の赤さに埋まる人の波　　金澤ひろあき

肉食のステーキ飛んで輪をかける　　図

ライオンが宴のあとに昼寝する　　金澤ひろあき

口笛でスズメがいっぱい魔女の国　　図

ホウキにのって旅に出ようか秋の風　　金澤ひろあき

芸人のヒゲをそってる坊主ダコ　　図

やわらかく態度決めかねてる奴め　　金澤ひろあき

わた菓子のふくらむ夢に生まれてる　　図

入道雲どこまでふくらむつもりなの　　金澤ひろあき

阿倍野産荒れ野が密集した日　　図

虫の声むらがり起こる大平原　　金澤ひろあき

ポールの周りにがぶりとカブトムシ　　図

すいか玉メタボ注意報が出る　　金澤ひろあき

深海魚ゴンゴン目が光る街　　図

きんぎょほどきれいな服を着てみたい　　金澤ひろあき

米の山一粒行方不明マスク　　図

なにをしでかす　あやしげな影　　金澤ひろあき

サングラスサンタがみんな同じ顔　　図

２０１０年８月１４日連句

美少年マンダラの絵に入りそう　　金澤ひろあき

四十八人の手のひらゼリー　　図

朝霧の中に光が生まれてくる　　金澤ひろあき

ジャッカルの粒を食べて生えてくる　　図

きのこ狩り人が来たらかくれんぼ　　金澤ひろあき

きのっぴポーンの運動会　　図

クリアランスセールで走り続けるぞ　　金澤ひろあき

迷路のあちこちワシの画像　　図

石像の裸を誇る海の国　　金澤ひろあき

小さな魂ハムを食べた頃　　図

トンカツがごちそうだった半ズボン　　金澤ひろあき

魔法ビンかかえて走るラッコ　　図

天井に住みついているアライグマ　　金澤ひろあき

幼児プール浮かんだ星の夜　　図

ひっそりと星のしずくが進行中　　金澤ひろあき

曇り空猫の目光る二年生　　図

スプーンの砂糖の行方キラキラと　　金澤ひろあき

花風船気を付けて割れないで　　図

お月様地球が吹いたシャボン玉　　金澤ひろあき

ピエロが笑いだす森増えたねこのごろ　　図

第１９９号 ２０１０年８月

干したまま傘月光に染められる　　金澤ひろあき


花柄のスカートがタオルに変わるお疲れヒップ　　青島巡紅


洗いたての赤ん坊といる五月晴　　暉峻康瑞


さつき風髪なびかせて神女二人　　二神大輔


青梅の日焼けしている細面　　三村須美子


つりがねをついてみたいな一度だけ　　川村薫


やわらかき赤子の手の小さかな　　内園日出杜


ぷっくりと丸い手で追う鯉のぼり　　笠初枝


綿ぼうしお嫁にゆくのたんぽぽよ　　坪谷智恵子


陽光のスライス並べる森林浴　　野谷真治


指針定めて梅雨空を横ぎる　　河本美子


ミニ薔薇や赤く染まりし陽を仰ぐ　　岡畠さな子


丸裸なのでそびえる小学生　　図



（図選）

２０１０年８月１日連句

空蝉の中にかすかな影のこる　　金澤ひろあき

電柱が埋まってしまえと赤とんぼ　　図

夕やけで埋まってしまった太平洋　　金澤ひろあき

でっかいぞ月の模型の中のリス　　図

しっぽだけ見せて迷宮入りになる　　金澤ひろあき

ピーポーと幼稚園の顔の上の雲　　図

行き先は昭和のチンチン電車かな　　金澤ひろあき

刃先から蒸発するのは素足の霊　　図

ネット上だけ存在しているアイドルよ　　金澤ひろあき

灰の山やら灰色の山やら吹かれだす　　図

全集を出して赤字がつみあがる　　金澤ひろあき

かなかなの鼻血が滝になる　　図

激辛のカレーで真っ赤なタコ坊主　　金澤ひろあき

水玉の水着の小さな人魚の絵　　図

泳ぎ終え半分ぬれた髪匂う　　金澤ひろあき

天に点怒ってばかりの妖怪　　図

迎え火のうしろになにか立つけはい　　金澤ひろあき

魚の骨図が広がって小宇宙　　図