通関士試験の受験勉強には関係ない事柄ですし、航空物流業界やその近くにおられる方には、よく知っているよという事項と思いますが、そういう世界から距離のあるところにいる筆者には、ちょっと懐かしい話題ですので、お付き合い下さい。
なお、航空貨物関係者から見れば、正確性を欠く部分があるかもしれませんので、遠慮なくご指摘下さい。
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本題に入る前に、航空機の輸送の形態を説明する必要があります。
まず、言葉の意味ですがULD(Unit Load Device)とは、パレットやコンテナなど航空機の貨物室床面に他の器具を用いずに直接固定することができるユニットのことです。
飛行場で見ていると、時々、箱型やちょっと変形している幾つものコンテナーが台車に引っ張られて移動しているのが見られますね。

あの箱は典型的なULDですが、フレーターといって、貨物専用機の場合ですと旅客機のおなかの部分じゃなく大きな断面積のまま積込めますから、貨物をパレットのうえに断面積に合うように山のように積んでいって、出来上がったら崩れないようにネットやフイルムを使って固定するという方法がとられますが、これもULDです、左の写真を見てください。
ULDは、いわばコンテナ船のコンテナのような役割をするもので、航空機への積込み、積卸はこのULD単位で行われます。
さて、インタクト(INTACT)とは、「手をつけていない」とか「元のまま」という意味です。
では「ULDインタクトサービス」とはどういうことでしょう?
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航空貨物の国際間輸送は、仕出人→仕出国フォワーダ→航空会社ターミナル~~空路輸送~~航空会社ターミナル→仕向国フォワーダ→仕向人 の順に貨物が移動していきます。
通常、フォワーダーが集荷した貨物は仕出国の飛行場にある航空会社のターミナルでULDにビルドアップされます。
成田や関西空港を見ると、滑走路があって、航空機が駐機して旅客や貨物をおろすエプロンがあって、これに面して航空会社の貨物ターミナルがあります。(人のターミナルが当然ありますが、今回の話題は貨物ですので、貨物ターミナルを想像してください。)
航空会社とフォワーダの役割分担は、一般に、この飛行場にあるターミナルでの受渡しが分岐点です。
したがって、貨物についての大きな作業としては、①フォワーダーから航空会社ターミナルへの引渡し ②ターミナルでのULDビルドアップ ③飛行機への積込み作業があり、到着地ではこれと逆の作業が行なわれます。
そこで、「ULDインタクトサービス」とは、フォワーダーがPRしているものですが、フォワーダが空港近くの自分の施設でULDビルドアップをして空港会社のターミナルに搬入し、そのまま飛行機に積んでもらい、到着地でも、空港会社のターミナルではULDを解体せずに、そのままで同じか同系列のフォワーダーの空港外施設までULDのままで運んで解体するものです。
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では、これで何が違うんでしょう?
ULDへの組立て、解体をする場所が違うだけじゃないか!と仰るかもしれません。
フォワーダのホームページを見ると、このようにULDのままで、航空会社と受け渡しすることによるメリットとして
① 積みつけ、取り卸作業回数の減少でダメージの発生リスクが軽減
② フォワーダ自らの作業で、高品質なオペレーションを実現
③ リードタイムの短縮
④ 航空機への確実な搭載
などがあげられています。
確かに、何度も出したり、積んだりを繰り返さなければ、事故や紛失したりのリスクは減るでしょうし、そのための経費も不要になりますのでいいことだらけですが、もし一つのULDの中に、いろんなフォワーダーの貨物が混載されていたりすると、ULDを持っていった先で関係フォワーダーに再配分する作業が必要で、仕組みは面倒になりそうです。
また、空港内か、その近くに施設を持っていて、作業能力がないとULDのままでの移動はできませんので、こういうサービスをするフォワーダーは扱い量が大きいか、そうでないと協業の仕組みができてないと難しいでしょう。
そしてインタクトといっても、飛行機から直接、あの大きなULDがてんでばらばらに飛行場内を動き回るのは危険極まりないことですから、相応の制約や、交通路の基本としては航空機―航空会社のターミナル経由で、フォワーダの施設にULDで運ばれるという方法が現実的かもしれません。
成田、羽田、関空、中部、福岡それぞれの空港の事情があるでしょうし、ターミナルや荷捌き施設の配置や成り立ちも違うでしょうから、それぞれの空港で合理的なインタクトサービスが取られていると想像できます。
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前の土曜日に、前から行きたいと計画していました、時々晴れ間がのぞく比叡山延暦寺にいってきました。
鉄道、ケーブル、ロープウエイを乗り継いで山頂へ、国宝の根本中堂や横川の中堂へは、シャトルバスでの移動です。
京都市内の名所のような雅な紅葉はありませんが、中世からの修行の場を感じる凛とした空気が漂っています。
帰途は、雲に隠れていく夕日を見ながらロープウエイで降りてきました。