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かずさんの、ふらり日々是好日の記

ふっても てっても  日々是好日  泣いてもわらっても 私の一生の中の きょうが一番いい日だから

518 移転価格と事前確認(APA)の相互協議の枠組み

2008-10-09 | 色んな話題
こんばんは! 
 
前回は、ざっくりした事前確認の意義と件数等による実態を紹介しましたので、今回は「相互協議」の枠組みについて、おさらいをかねて簡単に見てみましょう。私たちは、協議の当事者ではありませんので、公開されている資料が材料です。





1 「相互協議」は条約に基づく政府間協議である。
このブログで取り上げている相互協議は、納税者が租税条約の規定に適合しない課税を受けたり受けるというときに、条約締結国の税務当局間で解決を図るためのものです。

 日本は、現在45の租税条約で、56カ国を適用対象国としていますが、すべての条約で相互協議の規定があります。

2 「相互協議」は移転価格課税事案に限らない。
 移転価格の事前確認は、相互協議をともなうことが推奨されており、相互協議事案の9割以上は移転価格に関するものですが、移転価格以外についても協議が行われています。

3 「相互協議」には納税者の参加もありえる。
 相互協議は、政府間協議ですが、2004年6月に公表された日本、オーストラリア、カナダ及び米国の税務当局によるガイドライン(以下「ガイドライン」といいます。)によれば、事実関係の説明には納税者も協議に部分的に参加できるようです。

4 「相互協議」の目標処理期限は2年と設定されている。
 ガイドラインによれば、相互協議及び二国間事前確認の目標処理期限を2年と設定しています。

5 移転価格の事前確認は相互協議をともなうことがスタンダード。
 ガイドラインでは、相互協議を伴う事前確認に取組むことを確認しています。

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案件の相互協議がどのように行われるのかは、情報が不足ですが、年数回の直接会合が基本で、電話やファックス、メールなども随時行なわれるようです。
 日本の相互協議の担当は、国税庁の相互協議室で、移転価格の事前確認は国税庁調査査察部調査課がそれぞれ主管しています。

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通関手続きとは、少し離れた世界を2回取上げてみました。

ただ、輸出入をしている商社やメーカーにとって移転価格の問題は税務面の大きなリスク要因になっており、また、独立企業間価格であるかどうかは、関税評価における特殊関係による現実支払価格の不採用と表裏の関係でもあります。

通関関係者としても、課題の所在は認識しておいて良さそうですね。






517 移転価格と最新のAPAレポート

2008-10-08 | 色んな話題
 APAホテルのことではなく(笑)、「相互協議を伴う事前確認の状況・・APA(Advance Pricing Arrangement)レポートのことで、先ごろ、国税庁から19年度のレポートが発表されましたので紹介します。

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 日本では1986年に移転価格税制が創設されました。この税制は、会社が国外の子会社などの関連者と行なう取引きの価格が「独立企業間価格」と異なるために、会社(法人)の所得が減少する場合には、その取引きが独立企業間価格で行なわれたものとして、課税所得を計算するというものです。

 法人税の低い国の子会社に、本来より安くモノを輸出すれば、課税所得は日本では低くなり、海外では多くなっても税率が低いためにトータルでの税額は低くなります。

 新聞などで時々、日本の有名大企業がこの税制が適用されて、10億円単位の追徴課税が国税局から行なわれたとの報道がありますが、この税制は企業にとって課税リスクの大きな要因になっています。

 そこで、会社にとって予見可能性を高めるため「事前確認」という制度が1987年から実施されています。これは会社が、海外関連者と取引きするモノ、役務、サービスの価格の算定方法を税務当局に申し出て、税務当局がその合理性を検証して確認するものです。この確認を受けた内容で申告をしていれば、移転価格課税は行なわれません。

 また、事前確認の方法としては①一国のみの事前確認(ユニラテラルの事前確認) ② 外国当局との相互協議の合意に基づいて行なう確認(相互協議を伴う事前確認)の二つがありますが、事務負担、予測可能性確保、円滑な執行などから、どの国でも相互協議を伴う事前確認が
推進されています。

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では、2007年度APAレポートで実情を見てみましょう。

日本と外国の税務当局の相互協議案件は移転価格税制に限りませんが、案件の9割以上は移転価格に関するもので、また、その7割が事前確認に係る事案です。

 2007年度は、153件の相互協議案件が発生し、うち、事前確認が113件でした。
 また、同年度の事前確認の合意は82件です。このように、発生と合意の件数が違うのは、平均して事前確認のための期間は2年で、年々発生件数が増えているため年度で見ると未処理が生じるからです。

 合意した82件を業種別で見ると、製造業52件、卸・小売業23件となっており、卸・小売業が前年の4件から急増しています。

また、製造業の内訳としては民生用電気機器製造業6件、自動車等製造業14件、産業用機器製造業6件、その他製造業26件となっています。卸小売業の内訳としては貿易業14件となっています。

 一方、相互協議の相手地域を見ると、米州43件、アジア・大洋州25件、その他14件となっており、全部で24カ国と協議しています。
 
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世界で事業をする日本のグローバル企業が、海外に利益が残るように操作したり、生じた海外での利益を日本に還流させなければ、税制度と財政を通じての日本国内への再配分がうまく行なわれません。

少子高齢化の時代、増える福祉、医療負担を日本の国民が負担していきながら、日本の企業が活力あるグローバルな事業を展開できるよう、税制度への目配りも必要なようです。





512 韓国・釜山港から日本の港湾への回帰へ!

2008-10-01 | 色んな話題
こんばんは! なにやらセンセーショナルな見出しが付いています。
 先ごろあるところで、米欧の海上貨物の通関制度やAEOの実施状況調査などを踏まえた意欲的な意見交換の機会に接しました。

 その中では、色んな切り口で日本における今後の改善や改革の方向に触れていますが、その一つとして「内陸」に立地する荷主の輸出入貨物の物流や通関制度への関心がありました。
 







 米国はご承知のように広大な国ですが、多くの輸入貨物は港から鉄道やトラックで内陸に多く設けられているCFSに保税運送されて通関されています。
 
 ヨーロッパでは、今はEUで域内の運送が楽ですが、もともと多くの国が国境を接している中で、主要な海港は限られており、輸入の荷主が内陸の場合は、そこまでいったん運送して通関する方法がとられています。 

 輸出の場合も、内陸の荷主の段階で輸出手続きが済んでいる企業構内通関制度が広くとられています。

 先ほどの意見交換では、このような欧米の「内陸」活用を背景に、日本でも内陸のトラックや鉄道のターミナルにおける通関を行なうことを提案されています。また、スーパー中枢港湾とJR貨物のターミナルを直結させる定時サービスにより、釜山港に流出している日本の輸出入コンテナ貨物を日本の主要港に回帰させることができるとのご意見もありました。

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 もともと、日本の貨物が釜山港に流出している大きな理由はコストと思われます。

 金沢や新潟の荷主がアメリカに輸出しようとすると、神戸や横浜港に運んで日米航路のコンテナ船に積むより、金沢港や新潟港から釜山に運んで、積替えて韓米航路のコンテナ船に積んだほうがメリットがあるからです。このような物流を可能にした理由の一つは、日本の地方港のコンテナ化でした。

 ざっくりした数字で見ると、日本の輸出入総額は、韓国の2倍以上ですが、釜山港の年間コンテナ取扱量(TEU)は、日本全国の60を超えるコンテナ港の全合計扱い量と同じくらいです。

 いかに、日本の港は、扱い量の集積が行われていないかが如実です。これには、日本は、全国各地の地方でコンテナを扱う港を整備するという部分最適を進めた結果であるとの意見があります。

 現在の日本の指向がスーパー中枢港湾に見られるような貿易港の集約であることは適切と思いますし、実現のテンポを早めるべきです。

 また、集約したいくつかの主要港と主要な内陸とを、低廉で環境にもやさしく、定時制、迅速性でも評価できる交通手段で結ぶということも大いに検討して実現が図られれば有効ですが、貿易手続きや貨物の検査、事務処理など、内陸に分散処理する必然性が少なく、効率的でない業務まで分散させることは疑問が有りそうで、関係業界や貿易関係機関を含む全体最適を図るとの観点からは、できるだけ集中処理のメリットを求めていくべきではないでしょうか?

 このブログの読者はどのように考えますか?
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 大阪ミナミのビデオ店の火事で多くの人が亡くなっています。
狭い場所で多人数が深夜熟睡中のことでしたが、出火を知らせるシステムがあってうまく働いたんでしょうか?惨事があるたびに、いろいろ議論があって改善策が出されますが、きちんと実行されているんでしょうか、気になります。







509 RFIDのはなし

2008-09-26 | 色んな話題
 昨日発表された2008年8月の貿易統計では、正月休みのような特殊要因月を除き、1982年(昭和57年)11月以来約26年ぶりに貿易収支が赤字になりました。

 当時は、日米摩擦による輸出自主規制が主因でしたが、今回は世界経済の停滞による輸出不振とエネルギー高です。日本の国際物流関係の業界は、だいぶ変わってきたといわれていますが伝統的に輸出で利益を得る体質ですので、環境は厳しいと言えるでしょう。
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 先週、ある業界紙に日本通運と日立製作所がRFIDを利用した貨物追跡システムを導入し、9月30日から日本の主要空港5箇所と、上海、クアラルンプール、フランクフルト、シカゴ、ロスアンゼルスなどの拠点に導入していくとの記事がありました。

 RFIDは、 Radio Frequency Identification で、直訳的に見れば「無線」を使ってモノや人を識別するもので、Suica、ICOCA、ETCもこの一種です。

注目されているのは、モノに貼り付けてタグ(荷札)の代わりに利用されるものです。荷主や品番やいろんな情報が書き込まれたICチップ内のメモリを内蔵するRFIDタグを利用することによって、バーコードよりも豊富な情報を手軽に読み取れることができます。

宅配便や国際間のFedexやEMSでは、荷送り状番号が分かればその貨物が今どういう状態かを調査できますが、RFIDの豊富な情報保持を貨物追跡システムに活用すれば、バーコードのような手作業によるタイムラグを解消でき、輸送単位の貨物情報検索ではなく、品番や、オーダー番号など、多様なキーで追跡できるようになりそうです。

 また、環境問題などからも、資材や容器の反復使用などが求められています。かずさんは、T社は、通い容器の管理にRFIDを利用していると聞いたことがありますが、このような動きも、徐々に広がるんでしょうね。
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左は、RFIDを指先に乗せたものですが、このような0.4ミリメートル角ととても小さなものもできています。これなら、安価になればバーコードに取って代われそうですので、いずれスーパーのレジに行けば、一挙に全てのモノの買い上げ金額が集計されレシートが出てくるということにもなりそうです(笑)。



508 東京・川崎・横浜各港の包括連携施策

2008-09-25 | 色んな話題
 こんばんは。昨夜は、ソフトバンク・ホークスの王監督の、地元福岡での最後のゲームでした。松中などの育ててもらった選手の奮起はあったものの、試合は結果を出せませんでした。

王監督には、ワールド・ベースボール・クラシックのNIPPONを率いての世界一も含め、ご苦労様でしたと申し上げます。選手、監督として偉大な実績を残しながらの引退ですが、今後は健康維持に努めてもらいたいと思います。
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9月18日に報道発表されていますが、京浜三港の広域連携について、都知事、川崎、横浜の市長の合意がありました。

1 広域連携の推進としては
 ・11月に京浜港広域連携推進会議を設置するとともに、京浜港経営協議会を設置するとなっています。
・また11月からはしけ輸送の拡大のための入港料免除や、21年4月からコンテナ船入港料の一元化を実施し、対象船舶3700隻、1.2億円の港湾コストの削減を図るとしています。

2 京浜港共同ビジョンの策定として、21年度中に
・ 実質的一港化へのロードマップを策定し、
・ ポートオーソリテイの検討――港湾の管理運営の一体化に向けた組織体制の検討 が合意内容になっています。

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 これで、京浜港の検討の枠組みができて、本格的な検討が進むと思いますが、市町村は平成の大合併で整理統合が進みました。道州制の議論も経済界で進んでいる中で、一つの湾の港湾経営が分立では、韓国やアジアの港湾との競争に後れを取るでしょうね。
 
自動車、電機など日本のものづくり企業が、基幹部材の国内生産に回帰している今の時期に、港湾経営の改革を急いで進める必要がありそうです。