goo blog サービス終了のお知らせ 

うつうつ日記

2001年11月にうつ病を発症。4度も入院しながら今だ投薬治療、カウンセリングを続けている私の日常を公開。

家日和

2008年07月16日 10時04分46秒 | 
奥田英朗『家日和』読了。
最近読書よりもPerfumeのCDを聴くことが多く、読み終わるまでに時間がかかった。

家の中でのささやかな出来事に喜びを見出し、自身がちょっと輝くといった短編集。
インターネットオークションにはまる主婦。会社の倒産をきっかけに家事・育児を楽しむ若いお父さん。別居をきっかけに自宅を自分好みの家具で彩るサラリーマン。若い男と知り合うことで夜毎エッチな夢を見て経験したことのない絶頂感を楽しむ主婦等々。
僕自身も十分小説のネタになるなと感じさせる一冊だった。

ぼくたちと駐在さんの700日戦争

2008年06月21日 08時00分25秒 | 
ママチャリ『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』読了。
いわゆる横書きのブログ小説。作者名はハンドルネームである。この手のモノが流行りだしたのは『電車男』あたりからか。
今までブログ小説に対し触手は伸びなかったのだが、息子が読みたいと言ったので購入した。なのに一向に読もうとしない。こういうことにも、もったいないという意識が働くので読みだしたのだが・・・面白かった!
漫才の掛け合いのようなタッチに笑い、またホロリとさせるところもある。高校2年生のいたずら好きな少年たちと、またそのいたずらに大人げなくマジで応じる駐在さん。時代設定からして作者は僕と同年代と思われる。
僕も高2の頃は友達とバカなことをしては喜んでいた。高校2年の男子なんてものは大抵バカである。女の子は精神年齢が高く大人の視線を持っていたいたが、入学したての緊張感も無ければ、受験や就職を控えた切迫感もない。まさにバカが熟し切っている頃と言っていいだろう。自身の高校時代も懐かしく思い出された。

震度0

2008年05月30日 09時11分27秒 | 
横山秀夫『震度0』読了。
阪神大震災の前日、N県警刑務課長が謎の失踪を遂げる。結末自体はあまり大したものではなかったが、キャリア、ノンキャリアを交えた県警幹部たちの確執や自己保身の描写が面白かった。

僕の遠い親戚にノンキャリアながら大阪府門真警察署長まで昇りつめた人がいる。これは大変な出世。階級は警士生である。
しかし国家試験Ⅰ種に合格したキャリア警察官なら、20歳代で署長になれる。しかも東大などを出ている幹部候補生なら30歳台でさらに上級の階級、警視長になる人もいる。
現場を知らないキャリアが、20年、30年とたたき上げてきたノンキャリアの上に立つ構図は、まるでインドのカースト制度のようだ。
テレビの『踊る大捜査線』が受けたのも、それまでの推理やドンパチ主体の刑事ドラマと違って警察機構の矛盾をついたからだと思う。

息子は将来警察官になりたいらしい。今、大沢在昌の『新宿鮫』を読んでいる。憧れはつのるだろうか?

顔に降りかかる雨

2008年05月11日 08時12分26秒 | 

桐野夏生『顔に降りかかる雨』読了。
江戸川乱歩賞受賞作。桐野作品にありがちな残酷描写を抑えた推理小説である。女探偵、村野ミロ最初の事件。最後の最後に真犯人を問い詰める描写はなかなかなもの。
作中登場するミロの父親(この人も元探偵)が言ったセリフに、なるほどと感心する言葉があった。“大事なのは変だと感じる感性と、何故だと考える想像力だ”。これは探偵に限らず、頭を働かせる上で大切なことだと思う。
うつがひどい時は、完全に思考が停止していた。その頃と比べると随分聡明になったと思う。あくまでも比較の上でだけどね。

 


卒業

2008年04月30日 15時17分04秒 | 

重松清『卒業』読了。
四編の物語は母親、父親、親友の死をベースに描かれている。
“生き様”という言葉と対をなす言葉は“死に様”だろう。でも僕は同意語のように感じてしまう。病死、事故死、自殺、天寿の全う、それら全てに歩んだ人生が重ね合わされる。生きとし生ける者は何のために生きているのか。それは死ぬためである。どう抗おうとも、生まれた瞬間から生のベクトルは一直線で死に向かっている。
その過程から無念や悲しみ、果敢なさ、あるいは喜びがあるのだろう。
僕は自らの手で人生にピリオドを打とうとした。成し遂げていれば、それはさぞかし無様な“生き様”であり“死に様”であったろう。

 

 

 


一瞬の風になれ

2008年04月12日 08時29分05秒 | 
佐藤多佳子『一瞬の風になれ』読了。
どうしても、どうしても読みたかった小説。でも図書館には、びっくりするぐらいの予約数が入っているし、文庫化はまだまだ先だろうし、思い切って全3巻、大人買いした。

幾度も鳥肌がたつほど興奮し、涙があふれた。「おめーらみんな爽やか過ぎるぜ!」と叫びたくなる。陸上競技に対する見方が変わった。織田祐二のテンションの高さも理解できる。今、笑いのネタにされてるけどね。

恥ずかしながら、僕はスポーツで全力を出し切った経験がない。華々しい栄誉とも無縁である。これのあるなしは、人生を大きく左右することもあるだろう。人間の芯が太くなると思う。
叶わぬことだが、もし過去に戻れるなら、一つのスポーツに打ち込める人生を歩みたい。

ビタミンF

2008年03月16日 04時11分24秒 | 

重松清『ビタミンF』読了。
直木賞受賞作品。主人公の父親達は、丁度僕と同じくらいの世代。子供とのコミュニケーションに歯がゆさを感じている。
働いている時、あるメーカ-の営業マンが、中学生になった娘とのコミュニケーションがうまくいかない、スキンシップを図ろうものなら、「触るな!エロオヤジ!」と罵られると寂しそうに笑っていた。

息子が中学に進学する時、僕は、うつの真っただ中。中学生の心得や勉強、スポーツに関するアドバイスなど何一つしてやれなかった。悔やんでも悔やみきれない気持ちで一杯である。
僕にとっては切ない気持になる一冊だ。

 

 


クワイエットルームにようこそ

2008年03月08日 05時47分24秒 | 
松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』読了。
睡眠薬、精神安定剤、抗鬱剤を過剰摂取した女性ライターが、精神病院へ強制入院させられ、退院までの2週間が描かれている。

精神病院に入院したことのない人には別世界として読めるだろうが、3度も入院している僕にとっては、とても身近な世界。本作同様、周りは興味深い連中であふれていた。
もっとも僕の場合は任意入院だったけどね。一度クワイエットルームには入れられたよ。その時の感情は、はなはだ弱々しいものだった。あー、思い出したくない。

本作は芥川賞候補作となり、内田有紀主演、著者自らが監督となり映画化されている。

延長戦に入りましいた

2008年02月29日 08時35分55秒 | 

奥田英朗『延長戦に入りました』読了。
雑誌「モノ・マガジン」に連載されていたスポーツエッセイ。野球、サッカー、剣道、プロレス等々、様々なスポーツが笑いを誘う視点で語られている。それにしても奥田英朗のスポーツへの関心度には、なみなみならぬものを感じる。自身も結構スポーツマンのようだ。

まいったなこりゃ、と思う記述が2点あった。
“鉄ゲタなるものを購入した輩は笑い者になるであろう”・・・僕は小学生の時、鉄ゲタを買いました。歩きづらいのなんの。持ち上げた右足の鉄ゲタで左足のすねをぶつけたりしていた。痛いの痛くないのって、痛いんだけどね。
“陸上800メートル走のランナーは日蔭者”・・・息子は800メートル走の選手だ。読ませたら気持ちが萎えるかな。


きよしこ

2008年02月14日 06時15分55秒 | 
重松清『きよしこ』読了。
カ行、タ行、濁音に吃音がでる白石きよし君が主人公。小学生前から高校生までの成長が描かれている。

吃音が出るのが怖くて、想いのたけを相手にぶつけられない。感情を飲み込んでしまう。そうした辛さ、もどかしさ、体現する苦しさがよく伝わってくる。
しかしながら、きよし君はかなり理知的で成績優秀。対話が苦手な分、文章力には優れたものがあり、おまけにスポーツマン。いじけた話になっていない。

エピソードの中で2編、落涙しそうになった。