おもしろ住まい学

住まいについて面白そうな話を考える

寝殿造りから書院造りへ

2013-12-18 23:55:20 | 日本の住まい

「東三条殿」

上の画像は、人々がいまだ竪穴式の掘っ立て小屋に住んでいた平安時代、都の位の高い貴族の住居として形態が確立された、「寝殿造り」の代表例となる「東三条殿」の俯瞰模型です。

中央正面に高床式の「正殿」(寝殿)が南を向いて建ち、東西の「対屋」(たいのや)、北側に「北対」(きたのたい)と呼ばれる一群の建物を「渡殿」(わたどの)で繋ぎ、さらに両翼に南の庭や池に向かって「渡殿」をせり出し、「釣殿」などを設けていました。

正殿(寝殿)内部のイメージは

こんな感じでしょうか。

「平家」を扱ったTVドラマなどでよく見かける光景です。

約400年続いた平安時代から鎌倉・室町時代へ、言い換えると貴族から武士の社会へと変遷を続けていく過程において、武家の住宅として「書院造り」という形態が確立してきます。

「寝殿造り」では床も板張りが主で、部屋の仕切りとして「簾」(すだれ)や「御簾」(みす)、「屏風」などが使用されましたが、「書院造り」になると、各部屋には畳が敷かれ、「襖」(ふすま)で仕切られるようになります。

「書院造り」の内部のイメージは

こんな感じだと思います。これは掛川城の御殿の座敷の画像です。

この画像では普通「床の間」側にある「書院」が、「床脇」側にあります。

この掛川城の御殿のように、床の間のある和室を「座敷」と言ったりしますが、これは現在でも床の間のある「本床」様式の和室の「定型」です。
この「床の間」にも、様々な形や役割があるのですが、話が長くなりますのでここでは省略します。

この「書院造り」は、当初は武家の生活の「主室」だったものが、次第に応接をする「客間」へと移り変わっていきます。

また、現在の戸建て住宅では、「床の間」、「床脇」、「出書院」の「定型」から、幾分省略して造られたりもします。

外観的には

こんな感じでしょうか。これは大分杵築藩家老、「大原邸」です。江戸期の「書院造り」です。

信長以降に商業が発達してくると、町屋にも武家にも勝るような立派な「書院造り」をもつものも現れてきます。

また、家屋全体から書院造りの格式を外し、風情や趣を感じるように洗練度を増していった「数寄屋」も現れてきます。

これは「数寄屋」建築として有名な「桂離宮」です。

全体では一般的な住宅と規模が違い過ぎますが、床の間、違い棚、縁側や濡れ縁など、細部については現在でも数寄屋建築の原型として参考にされています。

また「茶室」建築では一層その風情や趣を主眼とし、「定型」をくずしたものとなっています。

「茶室」もまた、様々な形態があるのですが、説明をするとなると・・・・とっても長くなるので止めます。
気が向けば書く・・・・かも。

 

以上から、現代の住宅には「書院造り」の影響はかなり色濃く受け継がれてきていますが、「寝殿造り」の影はあまり見受けられません。
もっとも「書院造り」そのものが「寝殿造り」の発展形でもあるのですが。

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             まさき設計

 

 (一部画像はネットより)

 

 

 


住まいと社殿の様式

2013-12-12 14:20:17 | 日本の住まい

「神明造」

神社の建物を社殿などと呼びますが、それには拝殿、本殿、幣殿、神楽殿などがあります。

ここではそのうち本殿の建築様式を取り上げてみます。

これは昨今、遷宮で話題の伊勢神宮で、本殿は「神明造」(しんめいづくり)と呼ばれます。高床式倉庫からの流れで、切り妻屋根、平入りが特徴です。

 

次は国内で最も有名(と思う)な、「大社造」(たいしゃづくり)です。同じく高床式で切り妻屋根、右側の妻入りとなります。こちらも式年遷宮で話題の出雲大社に代表されます。

「大社造」

 

次は「住吉造」(すみよしづくり)です。同じく切り妻屋根、妻側中央から入る妻入りです。代表的な神社は大阪、住吉大社です。

「住吉造」

 

次は「流造」(ながれづくり)です。切り妻屋根で平入りですが、入り口側の「向拝」を被って屋根が延長されています。国内の本殿で最も多い様式とされています。

京都の加茂御祖神社(下鴨神社)が最も有名でしょう。

「流造」

 

次は「春日造」(かすがづくり)です。切り妻屋根で妻入りですが、正面の妻が入母屋風になって、階段の上部まで庇状に延長されています。

奈良の春日大社が代表例となります。

「春日造」

 

次は「日吉造」(ひえづくり)です。屋根は変形入母屋で平入り、正面の屋根が一定幅で庇状に延長されますが、特徴は裏側が「縋破風」(すがるはふ)となっていることです。

代表建築は滋賀県の「日吉大社」(ひえたいしゃ、ひよしたいしゃ)です。

「日吉造」

 

次は「八幡造」(はちまんづくり)です。前殿、後殿の二連の切り妻屋根が合いの間でくっついており、平入りで、正面の屋根の一部が庇状に延長されています。

大分、宇佐神宮本殿がその代表的な建築となります。

「八幡造」

 

次は「権現造」(ごんげんづくり)です。拝殿と本殿が並んで建ち、それを「石の間」と呼ばれる一段低い棟で、工の字型に連結しているのが特徴です。当然拝殿は平入りとなりますが、神社によって「向拝」の部分に特徴があるようです。

代表例は京都の「北野天満宮」などです。

「権現造」

ちなみに福岡の「太宰府天満宮」は「北野天満宮」よりも創建が若干古いのですが、造りは五間社「流造」であり唐破風の「向拝」が付きます。

まだ、これ以外にも社殿様式はあるのですが、実際には拝殿の前までしか行くことが出来ない神社も多く、なかなか「本殿」の全景を見ることは出来ません。しかしそれ故に本殿の「祭神」がさらに神秘的となるのでしょう。

 

まだ、草葺きの竪穴式住居や掘っ立て小屋に住んでいた時代でも、人々は神社だけは大変立派な建物を造っていました。この中でも「切り妻」や「入母屋」などの屋根の形態は、現在の戸建て住宅にも受け継がれています。

ひとつ余談ですが、皆さんのおうちにある「神棚」の「宮形」はどの形ですか?
伊勢神宮に見る「神明造」の形の「宮形」を比較的よく見かけるような気がするのですが、調べてみると「一社造」と「三社造」の二つの様式が多いようです。

             mm

             まさき設計

 

 

 

 

 

 

 

 

 


建築物はどれでしょう?

2013-12-08 23:37:19 | 日本の住まい

これはフィリピンに建てられた住まいで、建て主の方は謙遜して「掘っ立て小屋」と言われているようですが、何となくこの妻側などはデザイン性があって美しいと思います。これは立派な「建築物」です。

さて、以下の5つの画像の中に、法律の上で「建築物」ではないものが2つあります。

皆さんはどれが「建築物」でないかおわかりでしょうか?

正解は、1番目のビニールハウスと、4番目の骨組みです。

1番目のビニールハウスの場合、建設省住宅局建築指導課長発出第86号により、ビニールハウスなど屋根がシート状で簡単に取り外しができ、農業用のものは建築物ではない、としています。但し固定して店舗として使用するなど、用途によっては「建築物」と見なされる場合があるようです。

2番目の草葺きの小屋は、「土地に定着」し、「屋根及び柱または壁」があるので、明らかに「建築物」です。

3番目のカーポートも同様の理由で「建築物」となり、床面積のみ独特な算定方法となります。

4番目の掘っ立て小屋の途中のものと思われる物は、場合によっては「建築物」ですが、この状態では「屋根」の下地様のものはあっても、「屋根」そのものが無いので、現時点では「建築物」ではないと思います。
テラスの屋根部分などでこれに似たものを「パーゴラ」と呼んだりしますが、「パーゴラ」で屋根が固定されていないものは、一般に「建築物」ではありません。

5番目のものは仮設の建物ですが、土地に「仮定着」しており「建築物」です。建てる時の許認可が「確認申請」に代わる「許可申請」というものになり、一般的に設置期間を確定する必要があります。

これらの「建築物」は基本的に建てる前に「建築確認申請」が必要ですが、それは「都市計画区域」であるかないかによっても変わってきますし、増築、改築などでは面積によっても変わってきます。

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             まさき設計

(一部画像はネットより)

 

 


これでも「家」?

2013-12-04 01:04:29 | 日本の住まい

「建築物」とは、一般的土地に定着している工作物で、例えばこの画像のようにタイヤなどが付いていて移動できる場合は、一般的に「建築物」としていません。

要するに

このような牽引型のハウスは一般的に「建築物」ではありません。

しかし、これが一定の規模で一箇所の土地にとどまり、ガスや水道などの設備が着脱方式ではない土地に定着したものは、税法上の「固定資産」と見なす可能性があり、場合によっては建築基準法の適用対象となる可能性が出てきます。

同様に

山下公園に浮かぶ氷川丸のように、海に浮かんでいても一定の場所に係留し、そこに住む、あるいはホテルとして利用する、などの場合はどうでしょうか?

一昔前に、こんな場合は建築基準法を適用すべきだなどと言う論争がありましたが、どうなったのか記憶がありません。行政の方、どなたか教えて下さい。

また、夢の「ツリーハウス」はどうでしょうか、「建築物」であるか考えてみましょう。

これは実際に国内で建てられた?ツリーハウスですが、宙に浮かんでいますね。

当然土地に定着したと見るかどうかですが、基礎も無く、定着とは言えないような気がします。

この「茶室」が建っているところは「都市計画区域」内のようですが、そもそも「建築物」でなければ、建築確認申請の必要もありません。

しかし規模が大きくなって

このパプアニューギニアのホテルのように巨大になると、どうでしょうか?

これを「建築物」とするなら、国内では建築基準法の構造規定ですでにアウトです。

仮に土地に定着していなくて「建築物」ではないとしても、そもそも国内では「ホテル」として保健所の許可が取れるのかが疑問です。

また国内ではツリーハウスは一般的には「固定資産」には該当しないと言われていますが、実際にこんな規模でツリーハウスを作り、そこに定住するとどうなるのでしょうか?誰か教えて下さい。

 

 

こういった数々の疑問は、「建築基準法」の特徴で、例えば先に掲げた「横穴式住居」は、そもそも定義で言うところの「建築物」ではありません。

しかし「カッパドキア」に代表されるように「洞窟住居」は世界中に沢山あります。

これはスペインのサクロモンテにある洞窟住居ですが、外国ではこのような洞窟住居の形態の「ホテル」も沢山存在します。

国内ではどうなるのでしょうか?

何度も言うように、「建築物」とは土地に定着しており、屋根及び柱や壁を有するもの、となっている訳で、洞窟住居の場合、少なくとも「屋根及び柱」は見当たりません。

先に掲げた「横穴式住居」で、建築基準法の「地階」扱いの対象となる可能性がある、ということを書きましたが、そもそも「建築物」であるか疑問です。

また、「地階」扱いとするなら、「地盤面」はどこなの?といったようなことも疑問が出てきます。

横穴式「洞窟住居」は国内では「建築物」になるのですか?どなたか教えて下さい。

             mm

             まさき設計

(一部画像はネットより)

 

 

 

 


何かに似ている

2013-12-01 16:18:29 | 日本の住まい

これは京都府与謝野町にある古墳公園の復元された高床式倉庫です。

何かに似ていますね。

まず意匠的に僕が最も似ていると思ったのは「伊勢神宮」本殿です。

これは「神明造り」の中でも「唯一神明造り」と呼ばれる独特な建築様式。

また、この高床式倉庫の棟を抑えている「千木」のある屋根の形状は、伊勢神宮だけでなく、出雲大社に代表される「大社造り」の屋根にも似ているような気がします。

出雲大社の本殿はなかなか全景を見ることが出来ませんが、同じ島根県にある「大社造り」の

「かもす神社」を見ると、その造りの様子がわかります。

また構造的に、壁として組まれている木組みは一見「角ログハウス」風にも見えますが、

正倉院で有名な校倉造りにも似ている感じがします。

これは唐招提寺の「経蔵」ですが、この校倉造り、まぁ言わば日本式ログハウスの原点かもしれません。

と言うように、この高床式倉庫から、国内の色々な建築・工法に発展していったのでしょう。

一節には「神明造り」は高床式倉庫から、「大社造り」は高床式住居から発展したということですが、大きく違うのは、「平入り」か「妻入り」でしょうか。

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             まさき設計

(画像はネットより)