江戸時代の上層農家
ところでこうした式台付きの玄関を持つことは、一般には一定の家格を持つ武家だけに許されたものでしたが、このほかに農家でも「庄屋」(名主)を務めるなどの上層農家では、苗字帯刀が許され、こうした式台付きの表玄関を備えることが認められていました。
また信長、秀吉による楽市楽座以降、各地で商業で大成するものが現れてきました。
その中でも「町名主」あるいは「町代」などの藩の役を任される、いわゆる豪商にあってはこうした式台付きの屋敷を構えていました。中には代官や郡代などの許可を取り、長屋門のある立派な邸宅を構える者もいて、家のつくり、格式だけなら家老などの上級武士の屋敷にも匹敵するような豪商も現れています。
豪商
さて現在の個人住宅ではこの「式台」、広幅の一枚の厚板で設けることが多いわけですが、玄関の土間と床面の段差の緩衝を主な目的として設けられることが多いようです。
僕が個人住宅を設計する場合は、式台の材の厚みを二寸として、土間から式台上面までを七寸、式台から上がり框上面までを五寸として高さを設定しています。
もっともここに掲げた時代背景に基づく式台の意味を、毎回考えながら設計をしている訳ではありませんが、武家に纏わるその精神だけは常に込めているつもりです。
こうしたことは女性にとっては比較的どうでもいいことで、そんなことよりもっと立派なキッチンを作って下さい、などとその権利を主張されるわけでありますが、当のご主人方は会社だけでなく、こんなところでも男としてのプライドをかけて闘っているのでありまして、隣のメーカーハウスを横目で見ながら我が家の「家格」や「格付」を頭に思い浮かべ、ひとり秘かに悦に入り浸りしているのであります。
mm
男尊女卑丸出しだな
過去の特権階級の様式を男一般に敷衍して悦に入るとはさらに救いがたい
さすがジェンダーギャップ111位だ
ところで普通の家の上がり框のすぐ下の板も、やはり「式台」と呼ぶんですね。式台と呼ぶにはあまりに地味で、あの板の部分はなんて呼ぶのだろうとずっと思ってました。(もともとはあの式台の上に偉い人が駕籠で乗り付けるんじゃなかったでしたっけ。)
ところであの玄関の写真、床下がないのはどうしてでしょう。日本は湿気が高いから、床下に風が通らないと夏は厳しくないですか。
玄関は外部から最も湿気を持ち込む場所でもありますので、玄関取次の床下には空間を設けて、空気が流通するようになっています。式台の下も玄関土間より一定の高さがあり、開放されています。