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[NFL短評]プロボウル廃止?

2012-02-09 23:35:19 | NFL
Goodell says NFL's all-stars must play Pro Bowl at higher level (NFL.com)


2011年シーズンのNFLの試合は、5日(現地時間)のスーパーボウルで全て終了しました。恐らく多くの人はマリオ・マニングハムのパスキャッチやウェス・ウェルカーのパス取り損ないを今でも覚えているでしょうし、いつまでも試合を決めたプレイとして語られることでしょう。

しかし、スーパーボウルの前週にNFLのオールスター戦である「プロボウル」が行われたことはもう誰も覚えていません。AFCとNFCの両カンファレンスからスター選手、というよりスーパーボウルに出ることができなかった選手達がハワイへバケーションついでに試合もするこのイベントは、はっきり言ってファンの間でもさほど重要視されている試合ではありません。他のメジャースポーツと違い、ファン投票制度が長い間行われなかったことも一因でしょうが、なんといってもメジャーリーグのオールスターほどの真剣さもなければ、NBAオールスターほどの煌びやかさもないのが大きいでしょう。

プロボウルは、2009年まではスーパーボウルの翌週に、まるでシーズン中の緊張感とスーパーボウルの熱狂を癒す七草粥のような存在として行われていました。このときにはスーパーボウルに出場した選手の中からハワイへ渡り試合出場することもありました。2010年よりスーパーボウルをシーズン最終戦にしたいというリーグの方針により、各カンファレンスシップとスーパーボウルの間にあたる日曜日に行われるようになりました。

2010年のプロボウルはスーパーボウルと同じ会場で行うという意向の下でマイアミで行われましたが、基本的にはハワイのアロハスタジアムで行われます。オールスター選手に選ばれたという名誉とは反対に、ハワイで羽を伸ばすことができることもあり、練習も前日に簡単にプレイを合わせる程度で、実際の試合では怪我をしないように様々な限られたルールの下で真剣な試合を要求されます。いや、そんな空気の中で真剣な試合をというのがそのそも無理なのかもしれません。基本的にオフェンスが有利な特別ルールの下で行われるプロボウルは、ディフェンス選手がハードヒットできないこともあり、毎年のように大量得点が入ります(このあたりはそれほど得点が入らないメジャーリーグのオールスターとは決定的に違うところ)。おもしろいほどに得点が入るので、しまいにはTDを見てもそれほど楽しくなくなるほどです。

今年のプロボウルはそのふがいないプレイぶりにスタジアムからはブーイングが出てしまうほどだったようです。「だったようです」っていうのは、自分は見ていないから何とも言えないのですが、NFL.comの選手たちがラグビーのようにボールを回すところや、ドリュー・ブリーズがドロップキックを試みて見事なまでに失敗する場面などを見ることができました。そのどれもがプロ選手の草フットボール的な真剣さに欠けたものであるのは見て明らかです。こんなプレイを現地でお金を払って見せられる、あるいはテレビの前で見せられたら、堪ったものではありません。

アーロン・ロジャーズによれば、今回のプロボウル選出の選手の中には、試合に出て怪我したくないからプレイしないという選手すらいたということです。確かにハワイまで来て不運にも怪我をした選手もいたのた確かですし、ここで怪我をすればそれ以降の契約に響きます。要はそうした選手が欲しいのはプロボウルに選ばれたという名誉であり、出場機会など要らないのです。

そうした状況を見て、ついにコミッショナーが公式に不快感を示しました。これはESPNラジオでのインタビューでの発言になりますが、NFL.comでも掲載されているニュースなので、もはや「公式」だといってもいいでしょう。コミッショナーは、スタジアムでのブーイングなど明らかにファンが否定的な反応を示している状況下では(responding negatively to what we're doing)、NFLとしては耳を傾ける必要があるとした上で、このようなことにまで言及しました。

We're either going to have to improve the quality of what we're doing in the Pro Bowl or consider other changes or even considering eliminating the game if that's the kind of quality game we're going to provide.

コミッショナーは、プロボウルの質が上がらない場合にはプロボウルそのものを取りやめると発言しました。リーグはゲームの質を上げるための各種変更も検討するようですが、コミッショナーはそれを飛び越えて廃止するかもしれないととまで言い切ったのです。

ファンのブーイングに耳を傾け、プロボウルをどのように変えていくのかは重要なことです。しかし短いシーズン、少ないレギュラーシーズンの試合数、怪我が多いスポーツの特性を考えると、現行のプロボウルをどのように変えていけばいいのかとなるとかなり難しいと思います。コミッショナーがそこへあえて突っ込んでいこうとする姿勢は評価したいのですが、正直なところ多くのファンはプロボウルがなくても構わないと思っていることでしょう。メジャーリーグのオールスターほど歴史深いわけでもなく、両リーグ(カンファレンス)のプライドが掛かっているわけでもなく、一方でスーパーボウルという他のメジャースポーツにない、世界最大級のイベントがある。そのような環境でお祭り的要素以上にグダグダ的要素があまりにも強いプロボウルの地位は埋没しているように見えます。コミッショナーがやろうとしている改革は、ブリーズが思いつきでドロップキックを試みたこと以上に難しいはずです。


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