今日は暑かったので、10時ごろ自宅のそばからタクシーを拾った。
車道沿いで手を上げると、そのタクシーは自分の前を5メートルほど過ぎてガードレール沿いに止まった。勢い良く開いた自動ドアが、ガードレールにゴンとぶつかるのが聞こえた。
けっこうな金属音だったと思う。
行き先は横浜駅である。
タクシーを拾った場所は両側一車線ずつの車道で、1キロほど走ると交差点があって、右折レーンがないため、右折する車に後続が詰まって、軽い渋滞となる場合が多い。
信号より500mくらい手前を左折して、迂回するルートがあったのだが、運転手(60歳前後)にそれを言うよりはやく、左折ポイントを通り過ぎてしまい、20台くらいの渋滞の最後尾に着いてしまった。信号待ちで5分くらいのロスが予想される。
確か渋滞の途中に、もう一つ左折可能な抜け道があった気がしたのだが、場所が分からず、1分くらい信号待ちしたところで、運転手にたずねた。
「あのー、けっこう急いでるんですけど、どっか抜けられませんかね」
「ああー、もうすぐ(交差点)ですから?(ちょっとどんより口調で)」
「・・・いや、うんわかるんだけど。抜けらんないですか」
「ああ・・・」
どういう意味の「ああ・・・」だか理解する間もなく、タクシーが突然対向車線に飛び出した。
タクシーは、渋滞の車列を右からパスしつつ、対向車線を緊急車両チックに150m走り、そのまま信号待ちの先頭にいた乗用車の前に付けた。
途中、対向車が4~5台激しくパッシングしながら向かってきたのと、あと信号待ちの先頭にいた乗用車のドライバーが、キレて降りてくるんじゃないか(横浜のドライバーは短気が多い)と思ったことで、私は若干おろおろしながら、
「・・・ねえ。・・・あの。ねえ」
「・・・ああ(どんより口調で)」
「いやあの、なんで?こんなこと全然しなくていいのに」
「・・・ああ、いや抜かさないといけない・・・(以下聞き取り不明)」
良く解らないが、解らないなりに私の「抜けられないか」というフリを受けての逆走だったらしい。
これがコントであれば「抜けられないか」→逆走→「(すかさず)どこ抜いてんねん!」→「うわぶつかるぶつかる!」みたいな流れで、一応(イマイチなりに)成立はするのかなとも思ったが、そこまでの反射神経を一素人が持ち合わせているはずもない。
幸い後ろのドライバーが降りてくることもなく(or降りてくる前に)、信号は青になり、タクシーはまた走り出した。
15分ほどで、タクシーは横浜駅西口に着いた。
料金は1970円だった。
千円札を2枚出すと、運転手は「ああ・・・」と呟き、なんか迷惑なような困ったような顔をした。
細かい金がなくて一万円札で支払おうとしたときに、タクシーの運転手が良く見せるあの「ああ・・・(困)」である。
内ポケットをまさぐる運転手を見ながら、私は若干イライラし始めていた。乗ろうとしていた電車の発車まで、あと3分くらいしかなかったからである。
しばらくすると、運転手は誰にともなく不本意そうに呟いた。
「あーあ。・・・小銭ないや」
それからポケットにあった10円玉を1枚つまむと、私にそれを差し出して言った。
「・・・じゃあ、これで」
最初意味が解らなかった。というより、私自身、小銭が面倒とか時間がないとかの理由で「釣りはいらない」をたまにやることもあって、一瞬「運転手からのこういうのって、アリなんだったっけ?」と、混乱してしまった部分もある。
「・・・。なにこれ」
「ああ・・・(どんより口調で)。・・・小銭がない」
「知らないよそんなの!」
信号待ちの一件という伏線があったせいで、さっきよりは反射神経良く突っ込めた気もするが、それでもまだ成立してない感は否めないと思う。
運転手は、私に言われて、もう一度仕方なさそうに、ポケットやらあちこちを探しはじめた。私はもう電車には間に合わなかったが、この際、この展開のまま、行けるところまで行ってみようかという気になっていた。
1分たった。
運転手は再び、小銭らしいものをつまんで、黙って私に差し出した。
15円あった(5円玉を追加)。
その後の結末については、あえて説明を避けたい。
90年代以後の若手が散々やりつくした「不条理ネタ」の実話版(実話だけに出来はイマイチ)のような話だなと、私は思った。
車道沿いで手を上げると、そのタクシーは自分の前を5メートルほど過ぎてガードレール沿いに止まった。勢い良く開いた自動ドアが、ガードレールにゴンとぶつかるのが聞こえた。
けっこうな金属音だったと思う。
行き先は横浜駅である。
タクシーを拾った場所は両側一車線ずつの車道で、1キロほど走ると交差点があって、右折レーンがないため、右折する車に後続が詰まって、軽い渋滞となる場合が多い。
信号より500mくらい手前を左折して、迂回するルートがあったのだが、運転手(60歳前後)にそれを言うよりはやく、左折ポイントを通り過ぎてしまい、20台くらいの渋滞の最後尾に着いてしまった。信号待ちで5分くらいのロスが予想される。
確か渋滞の途中に、もう一つ左折可能な抜け道があった気がしたのだが、場所が分からず、1分くらい信号待ちしたところで、運転手にたずねた。
「あのー、けっこう急いでるんですけど、どっか抜けられませんかね」
「ああー、もうすぐ(交差点)ですから?(ちょっとどんより口調で)」
「・・・いや、うんわかるんだけど。抜けらんないですか」
「ああ・・・」
どういう意味の「ああ・・・」だか理解する間もなく、タクシーが突然対向車線に飛び出した。
タクシーは、渋滞の車列を右からパスしつつ、対向車線を緊急車両チックに150m走り、そのまま信号待ちの先頭にいた乗用車の前に付けた。
途中、対向車が4~5台激しくパッシングしながら向かってきたのと、あと信号待ちの先頭にいた乗用車のドライバーが、キレて降りてくるんじゃないか(横浜のドライバーは短気が多い)と思ったことで、私は若干おろおろしながら、
「・・・ねえ。・・・あの。ねえ」
「・・・ああ(どんより口調で)」
「いやあの、なんで?こんなこと全然しなくていいのに」
「・・・ああ、いや抜かさないといけない・・・(以下聞き取り不明)」
良く解らないが、解らないなりに私の「抜けられないか」というフリを受けての逆走だったらしい。
これがコントであれば「抜けられないか」→逆走→「(すかさず)どこ抜いてんねん!」→「うわぶつかるぶつかる!」みたいな流れで、一応(イマイチなりに)成立はするのかなとも思ったが、そこまでの反射神経を一素人が持ち合わせているはずもない。
幸い後ろのドライバーが降りてくることもなく(or降りてくる前に)、信号は青になり、タクシーはまた走り出した。
15分ほどで、タクシーは横浜駅西口に着いた。
料金は1970円だった。
千円札を2枚出すと、運転手は「ああ・・・」と呟き、なんか迷惑なような困ったような顔をした。
細かい金がなくて一万円札で支払おうとしたときに、タクシーの運転手が良く見せるあの「ああ・・・(困)」である。
内ポケットをまさぐる運転手を見ながら、私は若干イライラし始めていた。乗ろうとしていた電車の発車まで、あと3分くらいしかなかったからである。
しばらくすると、運転手は誰にともなく不本意そうに呟いた。
「あーあ。・・・小銭ないや」
それからポケットにあった10円玉を1枚つまむと、私にそれを差し出して言った。
「・・・じゃあ、これで」
最初意味が解らなかった。というより、私自身、小銭が面倒とか時間がないとかの理由で「釣りはいらない」をたまにやることもあって、一瞬「運転手からのこういうのって、アリなんだったっけ?」と、混乱してしまった部分もある。
「・・・。なにこれ」
「ああ・・・(どんより口調で)。・・・小銭がない」
「知らないよそんなの!」
信号待ちの一件という伏線があったせいで、さっきよりは反射神経良く突っ込めた気もするが、それでもまだ成立してない感は否めないと思う。
運転手は、私に言われて、もう一度仕方なさそうに、ポケットやらあちこちを探しはじめた。私はもう電車には間に合わなかったが、この際、この展開のまま、行けるところまで行ってみようかという気になっていた。
1分たった。
運転手は再び、小銭らしいものをつまんで、黙って私に差し出した。
15円あった(5円玉を追加)。
その後の結末については、あえて説明を避けたい。
90年代以後の若手が散々やりつくした「不条理ネタ」の実話版(実話だけに出来はイマイチ)のような話だなと、私は思った。
としか、言えない現状が、
タクシー業界の悲しいところです。
当ブログでは、
タクシー業界の内側・現状
等を、
タクシードライバーの目から、
綴っています。
よろしかったら、
ご覧になってみて下さい。
http://plaza.rakuten.co.jp/hashiretaxi
♪今日も夜な夜な、街をはしる~
あたしゃしがない、TAXIドライバー