コミュニティーカフェ・スマイルの「平和がいちばんコンサート」に参加し、反戦歌やプロテストソングを5曲演奏しました。
近頃ではあまり歌われなくなったけど、僕としてはたいへん思い入れの深い曲ばかりです。世界平和は、いつの世にも恒久のみんなの願い。これからも大切に歌い継いでいきたいと考えています。
それぞれの曲について、簡単な解説を加えつつ、歌に対する想いを述べてみたいと思います。
青文字で書かれたURLをクリックすると、Youtubeの演奏動画が開くようになっています。
1. イマジン (日本語版)
https://youtu.be/jQHNeOe1cQE
まずはジョン・レノンの「イマジン」。
歌詞は相方のユミさんと相談しながら、自分たちなりに翻訳しました。
天国なんてない。地獄もない。僕たちの上には大空が広がり、ずっと世界中につながっている。
宗教もなく、国境もなく、貧富の違いもなく、武器もなく、戦争もない。・・・そんな世界は絵空事かもしれないけれど、ただ想像するだけでも心が安らかになれる。
世界中のみんながそういう気持ちになれば、少なくとも戦争はなくなるのではないだろうか。
オリンピックを見ていて思ったのだけど、マスコミは自国の選手を応援することばかりを煽り、自国のメダル取得数ばかりを報道する。スポーツという枠での国同士の戦い。なんでこういうことになるのだろう。
日本人選手はよく「日の丸を背負って」という言葉を口にするが、そんなもの背負わなくても、自分自身が世界一になることを目標に頑張れば良いではないか。
観戦する側も、国籍なんかにとらわれずグローバルな気持ちで、素晴らしいプレーをした選手に拍手を贈れば良いではないか。
「イマジン」は、中学生の頃にラジオで聴いて以来、現在に至るまで、ずっと大好きな曲。今回は世界平和を心の中で祈りながら、ゆったりしたリズムで演奏しました。
2. 大統領殿
https://youtu.be/nsfHlvs8iho
元はフランスの歌で、作家・詩人・ジャズトランぺッター・シンガーソングライターとして活躍したボリス・ヴィアンの作。
原作のタイトルは「脱走兵」との意味だが、日本では高石友也が「拝啓大統領殿」と翻訳して歌い、フォーク・クルセダーズ時代の加藤和彦なども、同様の歌詞で歌っていた。
また、日本のシャンソン歌手が別の訳詞で歌っている例も見られ、なんと、あの沢田研二も歌っている。(Youtubeにアップされています。これがすごくカッコイイ。)
僕は、加藤和彦のバージョンが好きで、今回はこれを手本としながら、ちょっとシャンソン風のコード進行を加えてみた。
戦争で両親を失った青年が徴兵令状を受け取り、それを拒否して逃げ出そうとするストーリー。人を殺すくらいなら、自分が殺される方がいい。「憲兵たちよ、撃つがいい」という最後の一節に、作者の強い情念が感じられる。
「戦争反対!」と声高に叫ぶような反戦歌が多かった中、「僕は逃げる」というきわめて現実的な反戦行動に、当時中学生だった僕は何とも言えぬ衝撃を受けたものだった。
3. 腰まで泥まみれ
https://youtu.be/n4uRGce29Hw
ピート・シーガー、1966年の作。シーガーはこの歌をコンサートや反戦集会などで歌い、1967年には人気テレビ番組の収録で歌ったが、放送局幹部の判断で全面カットされてしまい話題となった。
泥沼化していくベトナム戦争を象徴した歌詞とされ、隊長が断固「進めー!」と叫ぶ姿は、変わりゆく情勢などを顧みずに戦争を継続しようとする米国政府を揶揄したもの。歌詞の中で、撤退を進言する軍曹に対して隊長が「Nervous Nelly(臆病者)」と叱責するところがあるが、これは当時のジョンソン大統領が戦争への批判に対してよく口にした言葉だと言われている。
日本では、1967年のピート・シーガー日本公演でこの曲に接した中川五郎が、すぐに訳詞を作って歌い始めた。このとき中川はまだ18歳。その後、先輩フォークシンガーである高石友也や岡林信康などによってカヴァーされ、1970年安保闘争関連の集会などでも、よく歌われるようになった。
おとぎ猫では、これまでにも何度かこの曲を演奏しています。やるたびに違った感じになるのだけど、今回はちょっとゆっくりしたテンポになりました。
4. 死んだ男の残したものは
https://youtu.be/An_LZOxbuDQ
ベトナム戦争さなかの1965年、詩人の谷川俊太郎が「ベトナムの平和を願う市民の集会」に寄せて詩を書き、クラシック音楽家の武満徹が曲をつけたもの。最初はバリトン歌手によって歌われたが、その後に高石友也が歌い、他にも小室等、石川セリ、カルメン・マキ、森山良子など、数多くのミュージシャンによってカヴァーされている。
とにかく、詞のインパクトが凄い。「墓石ひとつ残せなかった」なんて、普通では思いつかないな。さすがは詩人!と思わされるフレーズが随所に散りばめられ、全体としては戦争の悲惨さや無慈悲さを切々と物語っている。
ベトナム反戦に向けて書かれた歌だが、思い起こされるのは日本の敗戦直後の風景。「墓石」「着物」といった言葉が、それを連想させるのだろう。また「ゆがんだ地球」は核戦争後の世界を思わせる。唯一の核兵器被爆国として、わが国から世界に向けて発信されるべきメッセージソングではないだろうか。
この曲は他の出演者の方も歌われると聞いていたので、ちょっとアレンジを工夫して、オートハープを中心とする演奏にしました。
ユミさん、渾身の熱唱。その表情にも気迫がこもっています。
5. 風に吹かれて
https://youtu.be/ERhomvMrGlo
ボブ・ディランの代表曲。歌詞は中川五郎さん訳詞のもの。
中川さんは「blowin'」の現在進行形を大切にするとのことで「風に吹かれ続けている」と訳されている。題名もそのように表記するべきかと迷ったが、中川さん自身も「風に吹かれて」と表記されていることもあるので、今回はこちらの邦題を用いた。
中川五郎さんは、ライブのMCで次のように語っている。
「その答えは風の中に舞っていて、いつまでも掴むことができない」という歌かと若い頃は思っていたけれど、いや、いつまでも舞い続けているのならば、その風の中に自分自身が飛び込んで行ってもっと大きく手を伸ばしたら、しっかり掴めるじゃないか。ボブ・ディランは、きっとそういうことを言いたかったんじゃないかと、最近になって考えるようになった。
さすがは50年以上にわたってボブ・ディランを歌い続けている中川さん。なるほど、そういう解釈なのかと納得し、僕らも前向きな気持ちで、この曲に取り組んでみた。
わが国ではPPM(ピーター・ポール&マリー)がしっとり美しいハーモニーで歌っているバージョンでよく知られているが、頑張ってみてもこんなにきれいにハモれるわけはないし、今回は中川さんのライブバージョンに近いアレンジにしてみた。
最後のほうではシュプレッヒコールのようなサビの繰り返し。これは、学生運動当時のフォーク集会をイメージしたものです。
さあ、みんなで風の中に飛び込んでみようよ。そういうメッセージを込めて歌いました。
6. We Shall Overcome (大きな壁が崩れる)
https://www.youtube.com/watch?v=cAAgP58l0ok
これは「平和がいちばんコンサート」収録のものではないが、シリーズの締め括りとして掲載したいと思う。
この曲のメロディーは古くからある讃美歌で、黒人労働者たちの間でゴスペルのような感じで歌われていた。
元は「we will overcome」だったのだが、この曲を聴いたピート・シーガーが「we shall ~」に改め、歌詞も付け加えて広めたものとされる。
「we will ~」だと単なる未来形だが、「we shall overcome」では「必ず乗り越えよう」という強い意志を表すようになる。
日本では「勝利の日まで 闘い抜くぞ~」と翻訳され、労働運動や学生運動などでよく歌われていた。
以前からこの曲をやってみたいと考えていたのだが、どうも既存の日本語歌詞が気に入らない。「overcome」の対象は、「この闘い」とかいう個別のものでなく、もっと大きく、僕たちの前に漠然と立ちふさがる強敵のように思えたのだ。
「勝利」ではなく「乗り越える」というようなニュアンス。そうして訳詞を始めたのだが、なかなか上手い言葉が思いつかず、お蔵入りとなってしまった。
それから数年後、中川五郎さんの訳詞に出会った。
「大きな壁が崩れる」あ、これ、ええじゃないか!
そんなわけで、中川さんの訳詞に、最後だけ英語の原詞を付けて歌わせていただきました。
「大きな壁」は、人種や民族の違いであり、イデオロギーの違いであり、金持ちと貧乏の違いであり、宗教の違いであり、・・・いろんなものを分け隔てる無用な壁があるのなら、みんなでぶつかり崩して取り去ってしまおう。
また、僕たちの前に「大きな壁」が立ちふさがり、行く手を阻まれているのだとしたら、それを打ち崩して自由を手に入れよう。今、コロナ禍で喘ぐ僕たちには、そちらのニュアンスの方がぴったり来るのかもしれない。
世界中のみんなが同じ気持ちで向き合えば、戦争は起こらないだろうし、差別はなくなるだろうし、きっと地球温暖化や気象災害や感染症にも打ち勝っていけるだろう。
「イマジン」でジョン・レノンが語っている理想的な世界。それは「大きな壁」が崩された世界と同じものかもしれない。
そうした理想的な世界に少しずつでも近づいて行けるよう、地球市民のひとりとして、強く願ってやまない。
7. ダイジェスト動画、母の手記
今年の「平和がいちばんコンサート」には15組の方々が参加され、それぞれ別々に動画を収録して、8月8日に一斉公開されました。
この日のために15組出演によるダイジェスト版の動画が作成されています。とても上手く編集されており、出演者皆様の想いがよく伝わってきます。
こちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=3y8mrn6GYdM
おとぎ猫の全編動画はこちらです。
MC込みで約27分。もしお時間があればご覧になってください。
https://www.youtube.com/watch?v=vGT32Ghczdw
なお、MCでも紹介している僕の母の手記「戦争の思い出」は、こちらから見ることができます。
http://www.eonet.ne.jp/~hisa2/essay1.pdf
母は小学生の頃、大阪の大空襲を体験しました。慕っていた兄はビルマで戦死。少女目線で語られる戦時下の記憶はとてもリアルで、戦争を知らない僕たちにその恐ろしさを切々と伝えてくれます。
「自分の子や孫たちが、二度とあのような無残な体験をしませんように。今の平和がいつまでも続きますようにと、祈らずにはいられない。」
「あとがき」は、このように結ばれています。僕たちが当たり前だと思っている今の平和は、母にとっては特別なものなのです。
これを書いている今日は終戦記念日。戦争の犠牲となられた方々のご冥福を祈りつつ、真に平和な世界の到来を想い描いて、静かに合掌したいと思います。
2021/8/15
近頃ではあまり歌われなくなったけど、僕としてはたいへん思い入れの深い曲ばかりです。世界平和は、いつの世にも恒久のみんなの願い。これからも大切に歌い継いでいきたいと考えています。
それぞれの曲について、簡単な解説を加えつつ、歌に対する想いを述べてみたいと思います。
青文字で書かれたURLをクリックすると、Youtubeの演奏動画が開くようになっています。
1. イマジン (日本語版)
https://youtu.be/jQHNeOe1cQE
まずはジョン・レノンの「イマジン」。
歌詞は相方のユミさんと相談しながら、自分たちなりに翻訳しました。
天国なんてない。地獄もない。僕たちの上には大空が広がり、ずっと世界中につながっている。
宗教もなく、国境もなく、貧富の違いもなく、武器もなく、戦争もない。・・・そんな世界は絵空事かもしれないけれど、ただ想像するだけでも心が安らかになれる。
世界中のみんながそういう気持ちになれば、少なくとも戦争はなくなるのではないだろうか。
オリンピックを見ていて思ったのだけど、マスコミは自国の選手を応援することばかりを煽り、自国のメダル取得数ばかりを報道する。スポーツという枠での国同士の戦い。なんでこういうことになるのだろう。
日本人選手はよく「日の丸を背負って」という言葉を口にするが、そんなもの背負わなくても、自分自身が世界一になることを目標に頑張れば良いではないか。
観戦する側も、国籍なんかにとらわれずグローバルな気持ちで、素晴らしいプレーをした選手に拍手を贈れば良いではないか。
「イマジン」は、中学生の頃にラジオで聴いて以来、現在に至るまで、ずっと大好きな曲。今回は世界平和を心の中で祈りながら、ゆったりしたリズムで演奏しました。
2. 大統領殿
https://youtu.be/nsfHlvs8iho
元はフランスの歌で、作家・詩人・ジャズトランぺッター・シンガーソングライターとして活躍したボリス・ヴィアンの作。
原作のタイトルは「脱走兵」との意味だが、日本では高石友也が「拝啓大統領殿」と翻訳して歌い、フォーク・クルセダーズ時代の加藤和彦なども、同様の歌詞で歌っていた。
また、日本のシャンソン歌手が別の訳詞で歌っている例も見られ、なんと、あの沢田研二も歌っている。(Youtubeにアップされています。これがすごくカッコイイ。)
僕は、加藤和彦のバージョンが好きで、今回はこれを手本としながら、ちょっとシャンソン風のコード進行を加えてみた。
戦争で両親を失った青年が徴兵令状を受け取り、それを拒否して逃げ出そうとするストーリー。人を殺すくらいなら、自分が殺される方がいい。「憲兵たちよ、撃つがいい」という最後の一節に、作者の強い情念が感じられる。
「戦争反対!」と声高に叫ぶような反戦歌が多かった中、「僕は逃げる」というきわめて現実的な反戦行動に、当時中学生だった僕は何とも言えぬ衝撃を受けたものだった。
3. 腰まで泥まみれ
https://youtu.be/n4uRGce29Hw
ピート・シーガー、1966年の作。シーガーはこの歌をコンサートや反戦集会などで歌い、1967年には人気テレビ番組の収録で歌ったが、放送局幹部の判断で全面カットされてしまい話題となった。
泥沼化していくベトナム戦争を象徴した歌詞とされ、隊長が断固「進めー!」と叫ぶ姿は、変わりゆく情勢などを顧みずに戦争を継続しようとする米国政府を揶揄したもの。歌詞の中で、撤退を進言する軍曹に対して隊長が「Nervous Nelly(臆病者)」と叱責するところがあるが、これは当時のジョンソン大統領が戦争への批判に対してよく口にした言葉だと言われている。
日本では、1967年のピート・シーガー日本公演でこの曲に接した中川五郎が、すぐに訳詞を作って歌い始めた。このとき中川はまだ18歳。その後、先輩フォークシンガーである高石友也や岡林信康などによってカヴァーされ、1970年安保闘争関連の集会などでも、よく歌われるようになった。
おとぎ猫では、これまでにも何度かこの曲を演奏しています。やるたびに違った感じになるのだけど、今回はちょっとゆっくりしたテンポになりました。
4. 死んだ男の残したものは
https://youtu.be/An_LZOxbuDQ
ベトナム戦争さなかの1965年、詩人の谷川俊太郎が「ベトナムの平和を願う市民の集会」に寄せて詩を書き、クラシック音楽家の武満徹が曲をつけたもの。最初はバリトン歌手によって歌われたが、その後に高石友也が歌い、他にも小室等、石川セリ、カルメン・マキ、森山良子など、数多くのミュージシャンによってカヴァーされている。
とにかく、詞のインパクトが凄い。「墓石ひとつ残せなかった」なんて、普通では思いつかないな。さすがは詩人!と思わされるフレーズが随所に散りばめられ、全体としては戦争の悲惨さや無慈悲さを切々と物語っている。
ベトナム反戦に向けて書かれた歌だが、思い起こされるのは日本の敗戦直後の風景。「墓石」「着物」といった言葉が、それを連想させるのだろう。また「ゆがんだ地球」は核戦争後の世界を思わせる。唯一の核兵器被爆国として、わが国から世界に向けて発信されるべきメッセージソングではないだろうか。
この曲は他の出演者の方も歌われると聞いていたので、ちょっとアレンジを工夫して、オートハープを中心とする演奏にしました。
ユミさん、渾身の熱唱。その表情にも気迫がこもっています。
5. 風に吹かれて
https://youtu.be/ERhomvMrGlo
ボブ・ディランの代表曲。歌詞は中川五郎さん訳詞のもの。
中川さんは「blowin'」の現在進行形を大切にするとのことで「風に吹かれ続けている」と訳されている。題名もそのように表記するべきかと迷ったが、中川さん自身も「風に吹かれて」と表記されていることもあるので、今回はこちらの邦題を用いた。
中川五郎さんは、ライブのMCで次のように語っている。
「その答えは風の中に舞っていて、いつまでも掴むことができない」という歌かと若い頃は思っていたけれど、いや、いつまでも舞い続けているのならば、その風の中に自分自身が飛び込んで行ってもっと大きく手を伸ばしたら、しっかり掴めるじゃないか。ボブ・ディランは、きっとそういうことを言いたかったんじゃないかと、最近になって考えるようになった。
さすがは50年以上にわたってボブ・ディランを歌い続けている中川さん。なるほど、そういう解釈なのかと納得し、僕らも前向きな気持ちで、この曲に取り組んでみた。
わが国ではPPM(ピーター・ポール&マリー)がしっとり美しいハーモニーで歌っているバージョンでよく知られているが、頑張ってみてもこんなにきれいにハモれるわけはないし、今回は中川さんのライブバージョンに近いアレンジにしてみた。
最後のほうではシュプレッヒコールのようなサビの繰り返し。これは、学生運動当時のフォーク集会をイメージしたものです。
さあ、みんなで風の中に飛び込んでみようよ。そういうメッセージを込めて歌いました。
6. We Shall Overcome (大きな壁が崩れる)
https://www.youtube.com/watch?v=cAAgP58l0ok
これは「平和がいちばんコンサート」収録のものではないが、シリーズの締め括りとして掲載したいと思う。
この曲のメロディーは古くからある讃美歌で、黒人労働者たちの間でゴスペルのような感じで歌われていた。
元は「we will overcome」だったのだが、この曲を聴いたピート・シーガーが「we shall ~」に改め、歌詞も付け加えて広めたものとされる。
「we will ~」だと単なる未来形だが、「we shall overcome」では「必ず乗り越えよう」という強い意志を表すようになる。
日本では「勝利の日まで 闘い抜くぞ~」と翻訳され、労働運動や学生運動などでよく歌われていた。
以前からこの曲をやってみたいと考えていたのだが、どうも既存の日本語歌詞が気に入らない。「overcome」の対象は、「この闘い」とかいう個別のものでなく、もっと大きく、僕たちの前に漠然と立ちふさがる強敵のように思えたのだ。
「勝利」ではなく「乗り越える」というようなニュアンス。そうして訳詞を始めたのだが、なかなか上手い言葉が思いつかず、お蔵入りとなってしまった。
それから数年後、中川五郎さんの訳詞に出会った。
「大きな壁が崩れる」あ、これ、ええじゃないか!
そんなわけで、中川さんの訳詞に、最後だけ英語の原詞を付けて歌わせていただきました。
「大きな壁」は、人種や民族の違いであり、イデオロギーの違いであり、金持ちと貧乏の違いであり、宗教の違いであり、・・・いろんなものを分け隔てる無用な壁があるのなら、みんなでぶつかり崩して取り去ってしまおう。
また、僕たちの前に「大きな壁」が立ちふさがり、行く手を阻まれているのだとしたら、それを打ち崩して自由を手に入れよう。今、コロナ禍で喘ぐ僕たちには、そちらのニュアンスの方がぴったり来るのかもしれない。
世界中のみんなが同じ気持ちで向き合えば、戦争は起こらないだろうし、差別はなくなるだろうし、きっと地球温暖化や気象災害や感染症にも打ち勝っていけるだろう。
「イマジン」でジョン・レノンが語っている理想的な世界。それは「大きな壁」が崩された世界と同じものかもしれない。
そうした理想的な世界に少しずつでも近づいて行けるよう、地球市民のひとりとして、強く願ってやまない。
7. ダイジェスト動画、母の手記
今年の「平和がいちばんコンサート」には15組の方々が参加され、それぞれ別々に動画を収録して、8月8日に一斉公開されました。
この日のために15組出演によるダイジェスト版の動画が作成されています。とても上手く編集されており、出演者皆様の想いがよく伝わってきます。
こちらです。
https://www.youtube.com/watch?v=3y8mrn6GYdM
おとぎ猫の全編動画はこちらです。
MC込みで約27分。もしお時間があればご覧になってください。
https://www.youtube.com/watch?v=vGT32Ghczdw
なお、MCでも紹介している僕の母の手記「戦争の思い出」は、こちらから見ることができます。
http://www.eonet.ne.jp/~hisa2/essay1.pdf
母は小学生の頃、大阪の大空襲を体験しました。慕っていた兄はビルマで戦死。少女目線で語られる戦時下の記憶はとてもリアルで、戦争を知らない僕たちにその恐ろしさを切々と伝えてくれます。
「自分の子や孫たちが、二度とあのような無残な体験をしませんように。今の平和がいつまでも続きますようにと、祈らずにはいられない。」
「あとがき」は、このように結ばれています。僕たちが当たり前だと思っている今の平和は、母にとっては特別なものなのです。
これを書いている今日は終戦記念日。戦争の犠牲となられた方々のご冥福を祈りつつ、真に平和な世界の到来を想い描いて、静かに合掌したいと思います。
2021/8/15