ギターはたくさん持っているけど、一番よく弾いてるのはこれ。ラリビーというメーカーで、元はカナダの職人気質のおじさんが家内的手工業みたいな感じで細々と制作していたのだが、今はアメリカに拠点を移して会社も大きくなった。美しいインレイ細工は、カナダ時代から職人おじさんの奥さんが担当していた。しかし、最近では高齢のため細かい作業ができなくなったということで、単純なデザインのものに変更されている。広いアメリカ、他にも職人を探せば見つかると思うのだが、どうやらこのおじさん、奥さん以外の人にインレイ細工を頼む気がないらしい。そういうわけで、僕が持っている物は、社長夫人の最後の方の作品というわけだ。
表板はアディロンダッグ・スプルース。サイド&バックはワシントン条約で使用できなくなった最高級材ハカランダに最も近いとされるマダガスカル・ローズウッド。表板の木目はきめ細かく、きれいに揃っていて、ほんとに美しいギターだ。見ているだけで惚れ惚れする。無精者の僕もこのギターだけは時々クロスで拭き上げるなど、丁寧に手入れをしている。
もちろん音色も美しいし、弾き心地も良い。ネット通販で写真だけ見て買ったのだが、予想以上の大当たり。これより高価なマーチン社のギターも持っているけど、ラリビーを弾く機会のほうがはるかに多い。
僕は楽器に関してはかなり面食いで、重視するポイントは、①外観 ②音色 ③弾きやすさ の順だ。プロの演奏家だと、まったく逆の順番になると思う。僕の趣味は楽器の収集。演奏については、持っているから弾くといった感じだ。弾くために買うのではない。陶器などの愛好家が、茶器を見て楽しみ、触って楽しみ、ごく稀にそれでお茶を淹れてみたりするのと同じようなものだと思う。
楽器は弾き込むことによって、だんだん音が良くなってくる。そうした意味では、もっと弾いてやるほうがいいんだろうな。演奏するために良い音色を求めるのでなく、音色を良くするために演奏する。何だか本末転倒みたいな話だが、僕はいつもそういう気持ちでギターに接している。
人前で演奏するときには、良い音を出すことが最大の課題。そのため、頻繁に弦を張り替え、硬めのピックを使い、アルペジオやスリーフィンガーのパターンもフラットピックで弾く。「ギター上手いですね」と言われるよりも「ギター良い音でしたよ」と言われるほうが嬉しい。いや、これは下手の負け惜しみではなく正直な気持ちだ。
さらに言えば、楽器を見えやすくするために、譜面台はできるだけ使わないようにしている。まあこんなことは僕の自己満足に過ぎないんだけれど。
自分の好きなものを見たり触ったりしている時間はとても幸せ。若い頃は上手くなろうと頑張っていたけど、今は技術的な問題よりも自分自身の満足感のほうが優先だ。そういう気持ちに応えて、今日もギターは優しく心地よい音をいっぱいに響かせて、僕の心を癒してくれる。とても幸せ。♡
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