蟹沢孝夫のブログ

「ブラック企業、世にはばかる」の著書を持つ、キャリア・カウンセラー蟹沢孝夫のブログ。

不祥事従業員に対する企業の対応と感情論

2010-07-19 23:49:00 | 日記
もう2カ月ほど前になるが、SPA!の取材を受け、今年上半期のブラック事件簿なる記事の作成協力をしたことがある。見本誌を送ってくれないので現物は見ていないのだが、そこではスカイマークエアラインの不祥事も挙げさせてもらった。
(体調不良CAの常務について役員と機長がもめたとか、いろいろ)

そのとき、同社の副操縦士が乗務中に操縦席で写真を撮っていたという不祥事があったのを覚えているが、今日、そのことを思い起こすニュースが入ってきた。
その副操縦士はたしか解雇されていたのだが、地上職として復帰して(再雇用されて)いたというのである。

なんと温情のある会社と思うか、ケシカランと思うか、みなさんはどうだろう。

この点に関しては、私はもう一つ思い出すことがある。ちょっと前、中野雅至という元労働官僚が書いた『正社員クビ論』なる本を読んで知った事件のことだ。

何年か前、首都圏の大手私鉄、東武鉄道の運転手が、乗務(運転)中にたまたま?妻と息子が同乗してきて、駅で停車中に先頭車両の運転室入口のドアを息子がバンバン叩くものだから(入れてほしいということだったのだろう)、乗客への迷惑も考え父親はやむなく息子(幼児)を運転室にいれ、そのまま一駅運転してしまった。そして、それが理由で運転手は懲戒解雇されたというのである。

※ご存じない方は「東武鉄道 運転手 懲戒免職」でググってください。

まあ、かつては新幹線のぞみの運転手が恋人に運転席からの写メールを送ったりした不祥事もあったから、李下に冠を正さず、ということなのだろう。
東武鉄道は近年踏切事故も起こしているので厳しく対応したのはわからないでもない。

ただ、感情論には必ずブレもある。こうした処分が妥当なのか、過剰なのか。
繰り返すが、たしかに李下に冠を正さずだが、バランス感覚も大切ではある。

この事件では、本人の意思次第で裁判で争う方法もあったはずだ。
だがこの件は、退職金は支払われて子会社に再就職することで解決をみたらしい。

正直、この手の問題は難しい。
スカイマークがブラック企業かどうかも、そう簡単に一刀両断できないからね。

分かっていることを今さら言うな?

2010-07-18 23:05:56 | 日記
久々にmixiで拙著のレビューを確認してみた。

まーいろいろついてるね。

拙著の主張は理解しつつも、どうせ改善案なんて実現できないよ→だからこんな屁理屈で本を書くな

みたいなノリの意見もあるように思う。

もちろん、書いてて、こんなドラスティックな案、早々実現できるわけないよなと、著者もわかっている。だけど、やはり言うべきは言わなきゃいけない。

どうせ無理でしょ、とか中途半端なところで自己完結して終わるのが日本人の悪い癖なのだ。

自由も憲法も、天から降ってきた国民だからなのかな。おかしいと思うことを自分たちの行動で変えていこう、発言していこうという意思が少ない。

もっとも別に私は別に思想がかった運動家などではないけれども、こういう諦観主義的メンタリティーが、日本の既得権層を固着化させているとは思う。

大企業と下請けの不公平も、資本主義だからしょうがない?
まあそうだけど、程度の差を変えることはできるんじゃないか?
そこで思考停止でいいのだろうか?そういう発想なんだけど、ね。

改めて光文社に感謝

2010-07-16 12:50:49 | 日記
最近ちょっとバタバタしていたので久々更新。

このサイトでは意図的に触れなかったが、拙著を出してくれた光文社、マジで経営やばかった(いや、現在進行形)らしい。

で、有名な、リストラ状況報告ブログ「たぬきちのリストラなう」なんてものも一時期話題になった。またもネット発ということで新潮社から出版もされるらしい。

それにしてもこんな時期に、私の本が光文社から出せたのは今考えると奇跡のような気がする。

読まれた方なら分かるが、実は拙著では、出版業界も、フリーランスを搾取するブラック企業の黒幕だと糾弾しているのだ。
ま、社内図書館でおとぼけ仕事をしながら年収2000万円弱という話はさすがにこの会社の話ではないのだけれど、これが新聞や雑誌なら編集長チェックで修正が入って間違いないところだと思う。

でもそこを原文通りで出させてくれて、一応重版までこぎつけたところが、光文社のすごいところだと、ホントに感謝している。

私の担当さんはまだ若いので会社に残れたそうだが、聞くところによると、「みなさんに安心して本を出し続けてもらうためのリストラです」とのこと。
著者的にはありがたい。なんといっても光文社新書は新書業界では新御三家?のブランドだしな。

リストラなう!のたぬきち氏のエントリも、後半はリストラネタから書店営業の味わいに変わったが、深みがあってよいものであった。
のぞき見主義的な発想の人にとっては興味が失せたかもしれないが…。

彼は業界を去ると言っているが、彼ほどの経験者なら、編集プロダクションならぬ出版営業プロモーターとして生きていけるんじゃないかと思うのだが、どうだろう。
最近は土井英司氏とか、出版ビジネスで食ってる人たくさんいるし、触媒があればこういう方と化学反応を起こしそうだけどねえ。

あるいは真っ当に、幻冬舎あたりが興味を示したりして。


いずれにせよ、どんなに高給取りでも、高給に慣れきると消費(支出)水準が高止まりして急には下げられないとか、明日から誰とも話さなくなる恐怖、定期的にお金が入ってこなくなる恐怖といったものをいまさらながらに感じていることに、同情を禁じ得なかった。

それだけ、ほとんどの日本の勤労者は、組織に依存して生きているってことですよ。その縛りを脱し、強烈な自己管理に置く覚悟をできるかは、かなり高いハードルなのだ。

キャリアカウンセラー的にもこのブログは非常に興味深かった。

たまたま検索で引っかかったのだが

2010-07-06 13:11:32 | 日記
もう1ヶ月半も前のエントリだが、たまたま昨日気付いた1つ。

若者雇用問題で若者の間に強い発言力を持つ(⇒いいかえると、既得権層≒エスタブリッシュメントには無視され続けている)城繁幸氏のブログ

>そこで、公共マッチングサイトの登場だ。国の看板で大々的にやり、全国の大学に積極的に利用させれば
それなりに強力な“出会い系サイト”になると思われる。
ついでにいうと、ハロワレベルの求人情報照会だけではなく、一次選考機能までやらせればいい。
たとえば筆記試験+SPIくらいまでを受けて登録し、
「あなたの希望職種で合格可能性90%以上の企業は、北海道3社、広島2社~」
なんて具合にマッチングできるようにすれば、より効率的な市場になる。
センター試験の就職版というわけだ。

こんな話だとか。

ちなみに拙著をご覧いただいた方ならお分かりかと思うが、世の中でもっともオープンな就職試験は公務員試験であり、だから民間の新卒採用もこれを見習って、公務員試験のような学力とやる気を計る試験を作ればいい、という提案を私はしている(SPIだと簡単すぎて努力は計れないから)。

そしてそれに受かればニート・フリータあがりも差別なくリベンジ新卒就活可能なようにすればいい、というわけだ。

これは上記の城氏の主張とは少し違うんだが、チャンスの拡大と公平な基準を探せ、あと雇用後に生きる能力開発を、という意味では通じるものがあると思う。

それにしてもコメント欄に登場する「ジルコニウムマリン」氏って何者?
もちろん私の自演ではないが(だったらこのタイミングで間の抜けたエントリーしないよ)、なんとも中途半端な宣伝的(自演に見えそうな!)コメントは、
一か月遅れで気付いておいてなんだが、こちらとしても何とも…。

新卒者就職応援プロジェクトの現実

2010-07-05 23:51:46 | 日記
先週土曜日の朝のNHKの情報番組で、先日書いた「新卒者就職応援プロジェクト」の話をやっていた。

一つは、理系学部卒で就職に失敗し、中小部品メーカーにこのプロジェクトで実習に行き、やる気と適性が認められて就職につながった成功談。

そしてもう一つが、広告代理店でコピーライターをしたかったが就職に失敗した人が、同じくこのプロジェクトで別業界の電話営業の仕事に着任し、苦悩している話だった。

前者はまあいいとしよう。問題は後者だ。

電話営業の仕事は、正直、コピーライティングと関係ない。私自身テレアポの経験はかなりあるので(1日200本電話とかザラ)、萎える気持ちはよくわかる。こんなことをやって意味があるのか、と。

そして、大学の同級生で広告代理店に入れて、いま働いている同級生に、彼がいまの仕事の悩みを打ち明けるシーンも出ていたが、痛々しすぎる。

私の本でも書いてある通り、新卒で勝ち組きっぷを手にした人とそうでない人の間には、かなりの彼我の差ができてしまうからだ。

カメラが回っていたときに放ったかどうかはともかく、余裕しゃくしゃくの勝ち組サンは「今の仕事も意味あるよ、がんばんなよ」とか無責任な言葉を吐いたに違いない。

おめー、ブラック企業の実態わかってんのかよ、とぜひ食ってかかりたい。
よもや搾取大好きの大手広告代理店じゃないだろうな。

しかもかわいそうなのは、この(暫定)負け組中の彼も、学生時代に広告大賞みたいなものに応募して入選の経験があり、そこそこ才能はありそう、という認識があるということだ。

わけのわからない新卒一発試験で、社員となるべき人の才能を見抜けるとは限らない。それなら、むしろアメリカっぽくapprenticeで試用して、才能を見込んだ人だけが業界内でなりあがっていける方式にしたほうが、競争主義でいいんではないだろうか。そのほうがやり直しもききやすいし。

しかし、結局日本人の多くは雇用の安定を望んでしまい、ハードルの高さを容認するパラドックスを生んでいるように思えてならない。フレキシキュリティ的にいえば、セキュリティのほうが大事なのだ。フレキシビリティはやっぱりいらない、というわけである。

でも、クリエイティブ系になればなるほど、ハードル下げてもいいと思うんだけどなあ…。

仕方ないから、この方は中小広告代理店にでもなんとか転がり込んで泥臭い仕事から始めてはどうだろう。