私は京都へ向かう新幹線の中にいた。
マダム越後に、亀田恭子さんの手引き糸の九寸帯で。
着物で京都となれば、
少しでも余裕を見つけて、観光と洒落こみたいところだが
在来線のホームに立った途端、
「む、ムリだ…」
とにかく、暑い、暑い!
この日取材したドクターは、
とある分野でたいへん長いキャリアの持ち主。
そういうこともあってか、かなり厳しい方だと
直前になってクライアントから聞かされた。
(もっと早く教えて欲しい…)
編集者と思わず顔を見合わせる。
ところがここでも偶然が私を救った。
「こんにちは…」部屋のドアを開け挨拶すると
「あらぁ、お着物でいらっしゃったの!?」びっくりした表情のドクター。
こちらが構えるほど、怖い印象はなく、ほっと一安心。
取材が進むほどに打ち解けていくのがわかる。
あれも、これもと話が弾み…。
一通り終わり、雑談モードに入ったとき、
ほかの多くの医師がそう言うように「いつもお着物なの?」と聞いてきた。
「実はね…」
なんと、ドクターのお母様が毎日着物を着て生活している人だったそう。
「とにかく着物しか持っていない人だったから、
山に登るのも何するのも着物だったの」
ドクター自身は、特別なときしか着ないそうだが、
「お着物、いいわね」とにこやかに。
帰りがけには、どこからかデジカメを持ってきて、
「せっかくだから、みんなで記念写真とりましょう。」
お着物なんだから、ね。
…というわけで、パチリ。
取材の中で、相手が想定以上の話をいろいろしてくださることを、
私は「引き出しを開ける」と呼んでいる。
どんな話をどの程度まで、というのは、こちらの出方次第で、その場で
決められてしまうことが多々あるのだ。
信頼いただけなければ、情報をお持ちでも出してくださらないこともある。
今回は、そうたやすく信頼いただけたとは思わないが、
少なくとも安心して、話しやすい雰囲気づくりはできた方かな、と思う。
そこに着物が一役買っているのなら、
暑い最中だったが、やはり着ていってよかった。
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これには実は後日談がある。
こちらに戻ってきてから、御礼と2,3、内容について
確認のメールをお送りしたところ
「もうちょっと説明したいことがあるから、電話ください」と留守電メッセージが…
どうも、引き出しを開けすぎたようだ。
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