
レーザーによる“光の弾丸”が空気中で曲がる現象が確認された。近い将来、大気汚染の観測に活用される可能性がある。
研究責任者でアリゾナ州立大学の物理学者パベル・ポリンキン氏によると、この光の弾丸は極めて短い間隔で高強度のレーザーパルスを照射して発生させる。
非常に高速なパルスは、中心部が強く、周辺部では弱いスポット形状をしており、遠くに伝わるほどスポットがぼやけるという。しかし、“エアリビーム” (Airy beams)と呼ばれる特殊な波形のレーザーと組み合わせると、弾丸の速度が上がるにつれてビームの最も輝いている部分が湾曲し始める。
光は電磁波の一種であり、極めて輝度が高いレーザー光も、空気中を移動するうちに回折のために湾曲するが、今回の研究でその軌跡は予測可能であることをポリンキン氏は確認した。
「ビームは強度が一定の限度を超えると自己収束する傾向があり、非常に短い針のような形になろうとする」とポリンキン氏は説明する。“針”の内部は光の強度が非常に高くなっているため、周囲の空気が電荷を帯びて、プラズマの導電性パスが生じるという。
以前の研究で、このような光の弾丸を使って稲妻を人工的に作り出せることが示されている。このメカニズムを応用すれば、高層ビルや飛行機のような雷の影響を受けやすい構造物の周辺で稲妻を制御できる可能性がある。
今回の研究で明らかになったのは、このようなプラズマが生じるレーザーにエアリビームの技術を組み合わせて、曲がった針状の弾丸を作り出せば、他の用途への活用も期待できるという点だ。
だが、この研究は、壁の向こうに隠れた標的を撃つ“レーザー砲”の実現には結び付かないという。「だれもが最初にその質問をするのだが、答えは"ノー"だ。ビームの屈曲率は非常に小さいため、武器への応用は難しい」とポリンキン氏は言う。
一方、光のパルスは曲がるプラズマの軌跡を残して進む。その跡は独自の光を発するため、この性質を応用して飛行機や気象観測気球を使わずに上層大気で大気汚染を観測する技術を開発できるという。
空に向かってパルスを照射した場合、この光の軌跡が大気汚染物質の化学的痕跡に当たって検出され、離れた場所で記録できるようになる。
付随論評を書いたスイスにあるジュネーブ大学の物理学者ジェローム・カスパリアン氏は、光のパルスが曲がる現象を確認したことは重要な進展だと話す。「これまでは、レンズのような媒介物と作用させる以外にビームを曲げる方法はなかった。レーザーが自然に曲がって伝播するのが確認されたのは、今回が初めてだ」と同氏は述べている。
研究責任者でアリゾナ州立大学の物理学者パベル・ポリンキン氏によると、この光の弾丸は極めて短い間隔で高強度のレーザーパルスを照射して発生させる。
非常に高速なパルスは、中心部が強く、周辺部では弱いスポット形状をしており、遠くに伝わるほどスポットがぼやけるという。しかし、“エアリビーム” (Airy beams)と呼ばれる特殊な波形のレーザーと組み合わせると、弾丸の速度が上がるにつれてビームの最も輝いている部分が湾曲し始める。
光は電磁波の一種であり、極めて輝度が高いレーザー光も、空気中を移動するうちに回折のために湾曲するが、今回の研究でその軌跡は予測可能であることをポリンキン氏は確認した。
「ビームは強度が一定の限度を超えると自己収束する傾向があり、非常に短い針のような形になろうとする」とポリンキン氏は説明する。“針”の内部は光の強度が非常に高くなっているため、周囲の空気が電荷を帯びて、プラズマの導電性パスが生じるという。
以前の研究で、このような光の弾丸を使って稲妻を人工的に作り出せることが示されている。このメカニズムを応用すれば、高層ビルや飛行機のような雷の影響を受けやすい構造物の周辺で稲妻を制御できる可能性がある。
今回の研究で明らかになったのは、このようなプラズマが生じるレーザーにエアリビームの技術を組み合わせて、曲がった針状の弾丸を作り出せば、他の用途への活用も期待できるという点だ。
だが、この研究は、壁の向こうに隠れた標的を撃つ“レーザー砲”の実現には結び付かないという。「だれもが最初にその質問をするのだが、答えは"ノー"だ。ビームの屈曲率は非常に小さいため、武器への応用は難しい」とポリンキン氏は言う。
一方、光のパルスは曲がるプラズマの軌跡を残して進む。その跡は独自の光を発するため、この性質を応用して飛行機や気象観測気球を使わずに上層大気で大気汚染を観測する技術を開発できるという。
空に向かってパルスを照射した場合、この光の軌跡が大気汚染物質の化学的痕跡に当たって検出され、離れた場所で記録できるようになる。
付随論評を書いたスイスにあるジュネーブ大学の物理学者ジェローム・カスパリアン氏は、光のパルスが曲がる現象を確認したことは重要な進展だと話す。「これまでは、レンズのような媒介物と作用させる以外にビームを曲げる方法はなかった。レーザーが自然に曲がって伝播するのが確認されたのは、今回が初めてだ」と同氏は述べている。