隠れ家-かけらの世界-

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こぼれ落ちた人々~『朝日新聞』「分裂日本 しまなみ海道」

2006年05月12日 16時31分49秒 | プチエッセイ
■「おかしいよ」と言い続けること

 『朝日新聞』の朝刊に連載されていた「分裂日本~しまなみ海道」の記事を読んで、少なからずショックを受けた。瀬戸内海の島々を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」の工事が終わり全て開通すれば、学校に通うにしても医療機関などを利用するにしても、島民の人々の暮らしはずいぶん便利になるんだろうな、私はただ単純に思っていたのだ。ところが…、実際はそんな甘いものではなかったんだ。
 しまなみ海道を利用すれば、尾道付近から四国今治だでノンストップで行ける。海道がまだ全線開通していなかった頃は、それぞれの島に降りて、ガソリンを入れたり地元の商店街で買い物をしたり、という人もいたが、今では大半が素通りだという。
 結局、商店街はシャッターが下りたままでゴーストタウン化し、ガソリンスタンドやホテルは閑古鳥が鳴くありさま。そんな島に見切りをつけ、若者だけではなく一家で島を離れた人も多いという。結局、海道が全線開通したことによって、途中の島々は取り残されてしまったわけだ。
 島だけの問題ではないけれど、結局この国は大都市ばかりがいろいろな意味で優遇されて、地方の町々は見捨てられていくんだろうか。無駄な公共事業はどんどん廃止すべき! そう思っていたけど(もちろんそれは正しいことだと思うけど),でも今までそういう事業を末端で支えてきた地方の中小企業は,ただ放り出されてしまっただけ。代替事業について考えるとか,そういうことを国はしなかったんだよね。
 いちばんショックだったのは、海道さえ通らない小さな島に二人だけで住む老夫婦の話。以前は島民も少なからずいたはずだけど、みんな見切りをつけて、他県の息子や娘のもとに身を寄せるようにして島を離れていってしまったんだろう。そのご夫婦は妻の介護を年老いた夫がしている。ヘルパーさんを頼みたくても、島の場合は割高になるから、ということで、国の介護さえ利用できないらしい。福祉は商売ではないでしょ。民間に委託するだけで放っておいたら、こうやって福祉の網からこぼれおちていく人々が後を絶たないだろう。
 格差社会は,やっぱりまずいよ。弱者だけがひどい目にあう。なんだか悲しい国にすんでいるんだな、と思って、暗い気持ちになってしまった。
 都心の一等地に家賃1万円以下の公務員宿舎があったり、いくら安保条約を結んでいるからといって国民に大した説明もせずに某国の基地移転の莫大な費用を国で負担したり、無意味に豪華な(笑)億ション(死語?)の内部を紹介して「うわ~、すごいですねぇ。一度でいいから住んでみたい」なんてアホな(失礼)タレントにレポートさせるだけの番組を制作するメディアがあったり…、なんかなあ、いいのかなあ。
 そういうお金のほんの一部があれば、福祉の網からこぼれおちた大勢の人たちを救えるのになあ。こういうのって、甘いんだろうか。でも今のこの国がおかしいことだけは事実だし、砂糖みたいに甘い、と言われても、おかしいよ、と言い続けるしかないかな。
 あのご夫婦は、今日もあの島でどんな一日を生きているんだろう…。

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