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青樹句会

主宰:高橋信之(花冠名誉主宰)

第3回句会入賞発表

2012-01-21 07:14:54 | 日記
■第3回句会(1月15日~21日)

【最優秀/2句】
★銀杏みな冬芽整い街筋に/藤田洋子
「街筋に」がこの句のイメージを鮮明にしている。整然と並んだ街路樹のどの銀杏にも冬芽がしっかりとついて、つまり、冬芽が整い、きりっとした冬の景色となっている。(高橋正子)

★冬の虹土手道駈ける児の上に/迫田和代
冬枯れの土手を無邪気に走る児たちに、冬の虹が懸って、幸せな子どもの情景が目に浮かぶ。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★海苔洗う清冽な水に母の指/川名ますみ(正子添削)
海苔は、春に磯などで採取されて春の季語。寒中に採れたものも美味。磯で採れた海苔にはとくに砂が多く、水を幾度も変えて洗う。そういった水が清冽で、母の白い指が際立つ。(高橋正子)

★どんど焼き炎の中にまた炎/祝恵子
どんど焼きの炎があがる。誰かが、またあたらしく持ってきた締飾りなどをくべると、別の炎が立つ。炎だけを詠んでからっとしている。(高橋正子)

★春を待つ車窓の海の明るさに/津本けい
車窓から見える海は明るい。乗り物に揺られながら明るい海を見ると春はもうそこにやってきているように思える。春を待つ気持ちが優しい。(高橋正子)

★鈴の音や寒行僧の遠ざかる/藤田裕子
鈴を鳴らしながら寒行の僧が街をゆく。目の前から僧が遠ざかると、鈴の音が遠ざかる。鈴の音に重ねて、修行とはいえ、厳寒の中を行く僧を思いやる心がしのばれる。(高橋正子)

★ふるさとへの車窓に冬芽冬芽かな/安藤智久
ふるさとへ近づく山の木々の冬芽であろう。車窓に、冬芽の木々が次々過ぎる。「冬芽冬芽かな」に、詠み手の「明らかな目」を感じる。(高橋正子)

【藤田洋子特選/5句】
★朝夕にきりっとうまし寒の水/多田有花
冷気たっぷりの寒の水を飲み、清々しく身の引き締まる思いです。朝夕、体内を浄化してくれるような水のうまさに健康的な生活がうかがえます。(藤田洋子)

★かがやかに空晴れ渡り小白鳥/黒谷光子
かがやかに晴れ渡る空は、寒さの厳しい冬の晴れた空を印象付ける。かがやかに晴れた空に小白鳥の白さが鮮烈に目に映る。厳しさの中にある優美さがいい。(高橋正子)

★日脚伸び父子直球バシと受く/小西 宏
直球を受け止める音が日脚伸びる一刻に明るく響きます。父子のあたたかく伸びやかな情景に、ふと春近づく思いを抱かせてくれます。 (藤田洋子)

★柿の木の根元寒肥を念入りに/河野啓一
寒肥を念入りに施す、その丁寧な作業に、樹木への慈しみがあふれているようです。季節を経て、やがて豊かな柿の実りも明るく想像されます。 (藤田洋子)

★冬の虹土手道駆ける児の上に/追田和代
冬枯れの土手を無邪気に走る児たちに、冬の虹が懸って、幸せな子どもの情景が目に浮かぶ。(高橋正子)

【多田有花特選/5句】
★どんど焼き炎の中にまた炎/祝恵子
「炎の中にまた炎」というのがシンプルであると同時にどんどらしさを感じさせます。情景が浮かぶと同時に、炎を見守る人々の心情も見えてくるようです。(多田有花)

★かがやかに空晴れ渡り小白鳥/黒谷光子
かがやかに晴れ渡る空は、寒さの厳しい冬の晴れた空を印象付ける。かがやかに晴れた空に小白鳥の白さが鮮烈に目に映る。厳しさの中にある優美さがいい。(高橋正子)

★日脚伸ぶステンドグラスの青き色/津本けい
寒さも寒さながら、日脚が伸びて明るい日の光が嬉しいころになった。青いステンドグラスを透ける光ものびやかに美しい。(高橋正子)

★稜線の容ととのう寒の晴/桑本栄太郎
山の稜線が決まり、山容がととのう。きりっと晴れた空のもとの寒中の山である。(高橋正子)

★日脚伸ぶ同期の友と再会し/河野啓一
日脚が伸び、陽光にもあかるさが増してくる。そんな折昔なつかしい同期の友と再会し旧交を温める。これも明るい出来事。(高橋正子)

【高橋秀之特選/5句】
★寒の水音立て朝の厨ごと/藤田洋子
一段と冷え込みの厳しい寒の時期の朝、炊事のために使うであろう水を使う音が台所から聞こえてきます。気持ちのよい一日の始まりです。(高橋秀之)

★白菜のしろきを抱いてふり返る/川名ますみ
生活のある、美しい風景だ。「白菜のしろき」、「抱いて」、「ふり返る」、どれもが、そしてすべてが詩情のある言葉だ。(高橋信之)

★日脚伸ぶステンドグラスの青き色/津本けい
寒さも寒さながら、日脚が伸びて明るい日の光が嬉しいころになった。青いステンドグラスを透ける光ものびやかに美しい。(高橋正子)

★日脚伸ぶ同期の友と再会し/河野啓一
日脚が伸び、陽光にもあかるさが増してくる。そんな折昔なつかしい同期の友と再会し旧交を温める。これも明るい出来事。(高橋正子)

★ごみ出しの額に掌に受く新雪を/高橋信之

【小西 宏特選/5句】
★メロディーの報す風呂張り寒の夜/桑本栄太郎
近頃ではお風呂の沸いたことを短い音楽で知らせてくれるようになりました。軽やかなメロディーが聞こえると、もう体が温まってきたような気にさえなります。「寒の夜」という昔ながらの表現と現代的なシステムとの新しいコラボレーションです。(小西 宏)

★かがやかに空晴れ渡り小白鳥/黒谷光子
かがやかに晴れ渡る空は、寒さの厳しい冬の晴れた空を印象付ける。かがやかに晴れた空に小白鳥の白さが鮮烈に目に映る。厳しさの中にある優美さがいい。(高橋正子)

★躍りだす風花海の見えてより/今村征一
海が見えてから、風花が踊りだす。海の近くは遮るものが少なく、風がよく吹いていることもあるだろう。動きのある風花と海の取り合わせがいい。(高橋正子)

★どんど焼き炎の中にまた炎/祝恵子
どんど焼きの炎があがる。誰かが、またあたらしく持ってきた締飾りなどをくべると、別の炎が立つ。炎だけを詠んでからっとしている。(高橋正子)

★枝先の揺れて春待つ庭の木々/河野啓一
まだまだ寒い日が続いていますが、庭の木々に目をやると、枝先の揺れにも生命力が感じられます。春を待ち望む心が、木々共々伝わって参ります。 (藤田裕子)

【入選/10句】
★初雪を降らして空の明るい朝/高橋信之
朝の空から初雪がひらひら舞う。雪雲が広がっているわけではなく、いつもより幾分か冷え込む空なので、明るさがある。初雪が軽やか。(高橋正子)

★満天の星降り注ぐ霜夜かな/佃 康水
美しい世界をそのまま、ためらわず句にしたストレートさに魅了される。霜夜という冷え切った美しい夜に、満天の星が降り注ぐこの美しさ。(高橋正子)

★冷え込みの厳しい朝のお味噌汁/高橋秀之
寒い朝、奥様の暖かいお味噌汁に心が温まります。今日も一日がんばろう、そういう気持ちになりますね。(多田有花)

★一両の吾妻線や雪野原/小口泰與
一両きりの列車というのは、懐かしい気持ちをかきたてます。それが一面の雪野原の中を走っていくとなればなおさらでしょう。(多田有花)

★こんもりと雪積む遠き小正月/小川和子
ふるさと、幼いころの思い出を詠んでおられます。今は都会で雪も小正月の行事も遠くなった、でも、心の中に幼いあのときの情景はずっと生きています。(多田有花)

★蒼天のライナー島へ寒の潮/桑本栄太郎
冬の海を横切って高速船が島へ到着する。空は青空。瀬戸内の爽快な風景を想像しました。明るく活気のある句と思います。(河野啓一)

★赤ん坊と冬菜積まるる乳母車/古賀一弘
乳母車に赤ちゃんと、同じくらいの大きさの冬菜ー多分白菜などを積んで買い物帰りの若いお母さん。微笑ましい市井の風景を詠まれました。(河野啓一)

★寒林に野外学習の声弾む/古田敬二
いつもは静かな寒林に、今日は野外学習をする子供達の元気な声がしています。寒く冷たい空気の中、子供達の弾む声に心温まる思いがいたします。 (藤田裕子)

★一もじをぶつ切りすれば香りかな/下地鉄
男の料理であろうか。厨の様子がありありと読み手に伝わる。まな板の上の葱、手に持つ包丁、何よりも葱の強い香りが読み手にも匂う。生きのいい句だ。(高橋信之)

★水仙の香り清らに朝が来る/河野啓一
「朝が来る」ことの嬉しさを詠んだ。「水仙の香り清らに」と詠んだ作者の思いは、読者も喜ばす。いい朝だ。(高橋信之)

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第3回句会全作品

2012-01-21 07:14:14 | 日記

◆第3回句会/21名(1月15日~21日)◆

●黒谷光子
光る葉のかげに一輪冬椿
瑠璃の濃く髯より覗く竜の玉
よく弾む艶や円みや竜の玉
裸木の影きわやかに朝の陽に
裸木の並木の影の平行に
水仙を活ける留守する玄関に
春待つに伊吹おろしの風すさぶ
蹲に昨夜の風あと氷張る
川音を聞きつ仰げば寒北斗
かがやかに空晴れ渡り小白鳥
イヤホーン外せば屋根打つ寒の雨
夕べには廂打つ音寒の雨

●高橋秀之
どんど炊く煙まっすぐ大空へ
妻も子もそれぞれの休日小正月
小正月生駒の山も静かなり
冷え込みの厳しい朝のお味噌汁
一椀の味噌汁を待つ冬の朝
暖房をつけて布団に舞い戻る

●古賀一弘
満を持す鎧兜の冬木の芽
日溜りに憩ふ老媼冬薔薇
赤ん坊と冬菜まるる乳母車
赤ん坊と冬菜積まるる乳母車

●川名ますみ
幾たびも桶を返して海苔洗う
清冽な海苔の中なる母の指
生海苔の炊ける匂いの風呂場まで
寒晴や母の母校の煉瓦門
白菜のしろきを抱いてふり返る
冬日和鳩の集まる弁当屋

●祝恵子
打ち鳴らす巫女の太鼓や宵えびす
どんど焼き炎の中にまた炎
のどごしを冷たく落ちて小豆粥

●津本けい
軒満たす大根あかりの夕暮かな
藪椿溢るる蕾のひとつ咲く
宿木をあまた宿せる冬木憂し
日脚伸ぶステンドグラスの青き色
木蓮の冬芽光れり空青く
冬鳥のばさと飛びたつ枯葛原
降りそそぐ蝋梅ころころ空に透き
ほの紅き梅の蕾の芯白く
春を待つ車窓の海の明るさに

●小西 宏
物言わぬ木々となりたる冬曇
日脚伸び父子直球バシと受く
枯蘆の折れ突き刺さる濁池
水仙よ喉を冷やすな風邪ひくぞ
西暮れて山稜淡き寒さかな
雲低く垂れて工場の煙寒し
薄雲に冬日差しきて鳥の声
冬ざれの崖を薄日の撫でてゆく
枯芝を犬駈けて行く土ぼこり
じんわりと前歯噛みしむ凍豆腐

●小川和子
足取りの軽く霜降る朝凛と
こんもりと雪積む遠き小正月
水回りよりしんしんと寒の冷え
冬草を足裏に踏み岸辺ゆく
鴨すべる水脈長く描きつつ
岸辺まで冬日を映す川まぶし

●佃 康水
葱摘むや敷藁白し霜の華
満天の星降り注ぐ霜夜かな
早梅の万の蕾に空の青

●桑本栄太郎
稜線の容ととのう寒の晴
街の灯の遮り足らず寒の星
セーターの脱ぐを厭えり静電気
天窓の陽射し明るく日脚伸ぶ
メロディーの報す風呂張り寒の夜
寒拆や夜のとばりの高階に
ともし火を竹に阪神震災忌
蒼天のライナー島へ寒の潮
航跡の泡の流離う寒の潮
寒星や街の明かりの妨げず
竹林の彼方は見えず時雨けり
足跡の千々の乱れや藪柑子
大寒の木々の雨滴の艶めけり
日脚伸ぶ枝の雨滴のしたたりぬ
つつがなく過ごす感謝や今日大寒

●下地鉄
一もじをぶつ切りすれば香りかな
荒芝に大の字になり初明かり
木枯しや水平線はしずかなる

●藤田洋子
一月のメタセコイアの琥珀色
メタセコイア冬も影濃くかく尖る
寒の水音立て朝の厨ごと
銀杏みな冬芽整い街筋に
高々と銀杏冬芽に空眩し
ことごとく雨粒光る冬木の芽

●藤田裕子
早暁の消えゆくまでの霜の花
青空へ蝋梅の黄を散りばめり
鈴の音や寒行僧の遠ざかる

●古田敬二
落ち葉道∞(無限大)という字思い出す
花枇杷を横切る森の往き還り
たくましき羽音突然寒鴉
手のひらで摩れば枯れ芝あたたかし
冬木立ち孤高ということ思いけり
冬落輝黒々木立ちのシルエット
春隣地球の軌道は楕円形
寒林に野外学習の声弾む
懐手に「伊吹颪」を口ずさむ

●今村征一
働く灯ビルに積み上げ寒の雨
冬草に生きる力を学びたる
樹氷して森は魑魅となりにけり
暁光に濡れて突つ立つ寒樹林
「ふ」と染めて加賀麩商ふ冬暖簾
待春の水琴窟の音色とも
躍りだす風花海の見えてより
翻へる瞬時大鷹手に獲物
雪の来ぬ不安どか雪降る不安
沖見せず宙に貼りつく波の花

●小口泰與
早梅や日の出したたる浅間山
一両の吾妻線や雪野原
風吹かぬ赤城の朝や霜の花
明日と言う日の鐘の音や冬の虹
車出づ着膨れの吾(ア)に静電気
ゆったりと長き裾野や雪赤城
空っ風からす電線鷲づかみ
雪雲に山すそ煙り北颪
黒雲の風と迫りぬ虎落笛
口つぐみ赤城颪へまむかえり
里山の放射冷却空っ風
白鳥と冬夕焼のもとにおり
電飾の橋点りたる寒暮かな
夕暮れの茜の雲や日脚伸ぶ
寒餅のひび割れしまま置かれけり
焼芋や山に色ある夕間暮れ
晩年は畳の部屋や福寿草
紅梅の冬芽や夜の地震かすか

●迫田和代
街の色明るくなって春を待ち
陽を浴びてのっそり動く冬らしさ
高い空貼りついたよう冬の月
寒々と流れる小川川藻揺れ
雪明かり総てをつつむ朝の雪
冬の虹土手道駈ける児の上に

●安藤智久
寒雀ビルの隙間に弾みけり
鈍行で帰るリュックに冬林檎
ふるさとへの車窓に冬芽冬芽かな

●高橋信之
初雪を降らして空の明るい朝
ごみ出しの額に掌に受く新雪を
軽きとも重きとも新雪舞えば

●河野啓一
春近し瀬戸のさざ波屋島浦
網走に流氷の報せ春遠からじ
枝先の揺れて春待つ庭の木々
森深し阿讃を跨ぎ山眠る
沖を行く船の霧笛や紀伊水道
柿の木の根元寒肥を念入りに
日脚伸ぶ同期の友と再会し
日向ぼこ眠気を覚ます鳥の声
庭草も揺れて喜ぶ小春風
パンくずにサッと群がる寒雀
冬ざれの庭にも雀次々と
冬薔薇色良くつぼみ育ちけり
水仙の香り清らに朝が来る
白い花高く掲げし庭水仙
白い花咲かせ水仙池の端

●多田有花
海沿いの公園山茶花咲きこぼれ
早梅のしべ震わせて風過ぎる
松過ぎの境内に響く鳥の声
ひっそりと雨を待ちたる冬の川
早梅の枝にみなぎる紅の色
冬帽子被りいつもの散歩道
寒の陽に今日の竹林動かざる
寒ぬくし頂に人と談笑す
マフラーに黙って顎を埋めている
田に畑に降りしきるなり寒の雨
新しきスケッチブック日脚伸ぶ
待つことと考えること冬深し
蟷螂の卵いくつも寒の枝
寒雀等間隔に並びおり
朝夕にきりっとうまし寒の水
大寒や麓で昼の鐘が鳴る
大寒の雨の静かに毘沙門堂
蕾日に日に春の近さを知らせおり


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第2回句会入賞発表

2012-01-13 09:29:11 | 日記
■入賞発表/2012年1月15日■
(1月8日~14日投句より)

【最優秀】
★まず一本清楚に傾ぎ咲く水仙/祝恵子
水仙が咲くのは、意外と遅い。12月ごろは、ほとんどは蕾が固くて、正月が過ぎたころから一花二花と咲き始める。一月半ばすぎからが見ごろであろうか。まず、一本咲いた水仙が少し傾いで咲いている。「清楚に傾ぎ」が咲き始めの水仙らしい。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★まず一本清楚に傾ぎ咲く水仙/祝恵子
水仙が咲くのは、意外と遅い。12月ごろは、ほとんどは蕾が固くて、正月が過ぎたころから一花二花と咲き始める。一月半ばすぎからが見ごろであろうか。まず、一本咲いた水仙が少し傾いで咲いている。「清楚に傾ぎ」が咲き始めの水仙らしい。(高橋正子)

★寒中の沖はまぶしく晴れており/多田有花
寒の晴である。一気に詠まれた句は、すべてが明らかで、作者の内面が明らかなので嬉しい。(高橋信之)

★飯桐の実を突き出して森静か/川名ますみ
高木に葡萄の房のように赤い実を付ける飯桐。枯色深める森に、いっそう鮮やかに目を引きます。冬の森の静寂に、ふっと心灯されるような明るさを感じます。(藤田洋子)

★富士見える町の明るさ凧揚がる/安藤智久
この句の主眼は、「明るさ」であるが、その良し悪しは、読み手によって分かれる。この「明るさ」を素直なものと捉えるか、平凡なものと捉えるか、であり、素直な感動の良さを私は、高く評価したい。(高橋信之)

★青麦の田を分け列車南進す/黒谷光子
「南進す」に勢いをつけて晴れやかに走る列車が想像できる。行き先は春も隣りの明るいところか。明るくて元気が湧く。(高橋正子)

【藤田洋子特選/5句】
★一月の万年青の生花線の美を/藤田裕子
正月花として特別な生け方をする万年青、生ける方の心構えを感じ取れる「線の美」です。年の始めの一月に、祝意をこめて生けられた万年青が、葉も青々と美しく清々しいかぎりです。(藤田洋子)
「万年青」が活けられ、そこに「線の美」を見た。「万年青」の葉の力強さに「一月」という年のはじまりに当たっての作者の気持ちを託した。(高橋信之)

★蝋梅や空の青さに香の零る/佃 康水
寒中の空は澄んで青い。青空と蝋梅の黄色の対比は色彩的に美しい。その上に芳しい香りがこぼれていれば、至福の時間が味わえる。(高橋正子)

★清浄に暮れて高野の冬銀河/今村征一
星月夜や銀河は、秋の季語となって、秋の夜空の美しさを詠むが、大気が透明となって一年で最も美しい季節は実は冬である。そこを詠んで作者は、「清浄に」とした。「清浄」、「高野」、「冬銀河」と続く言葉の取り合わせがいい。(高橋信之)

★せいけつな色して落葉日の中に/高橋信之
落ち葉にもいろいろな色がありますが、せいけつな色と感じるのがいいですね。暖かい日の中であればこその感覚かと思います。(高橋秀之)

★まず一本清楚に傾ぎ咲く水仙/祝恵子

【多田有花特選/5句】
★初稽古まず聴音に始まれり/小川和子
賛美歌を歌われるのでしょうか。初稽古という特別な場所でまず音に耳を澄ます、厳かで清潔な空気が伝わってきます。(多田有花)

★伊吹嶺も連なる山も雪光る/黒谷光子
雪嶺となる伊吹山、続く連山も眩いばかりの景観です。湖国近江の冬の厳しさを感じつつも、明るく輝く雪嶺に、作者の郷土への思いが感じられます。(藤田洋子)

★凍雲の青き影ゆく向う岸/津本けい
凍てつくような空も雲が青空の中流れてゆく様子が影にも表れます。向こう岸がいいですね。(高橋秀之)

★ちりぢりと赤き葎の枯野かな/桑本栄太郎
枯野の枯れがきわまっているという印象を受けます。なにもかもが枯れてそこからまた新しい何かが生まれることへの希望です。 (多田有花)

★山風にガス灯ゆれる達磨市/小口泰與
上州は風で有名な場所、その風にゆれるガス灯の下で達磨市が開かれています。風の音と寒気と活気が感じられます。 (多田有花)

【高橋秀之特選/5句】
★寒中の沖はまぶしく晴れており/多田有花
 寒い冬の気持ちいい晴れの日。海も日差しを受けて輝いている。とても気持ちのいい光景です。(高橋秀之)

★寒中の硝子のくもり拭いて空/藤田洋子
寒い中部屋の中から外を見ようとしてもガラスは曇っています。そのくもりを拭くと外には空がいっぱいに広がっています。ほっと一息ついた様子がうかがい知れます。(高橋秀之)

★まず一本清楚に傾ぎ咲く水仙/祝恵子
★清浄に暮れて高野の冬銀河/今村征一
★せいけつな色して落葉日の中に/高橋信之

【入選/6句】
★延々と冬の朝焼け機上から/高橋秀之
夜空にきらめく星の数よりも、岬に灯る冬燈のほうが少ない。それだけに星がよくきらめき、岬に灯る燈にも人なつかしさが湧く。(高橋正子)

★冬満月たゆたいつつも山の端に/河野啓一
空に浮かぶ冬満月をとらえて、ユニークな句。(高橋正子)

★冬日さし膨れた雀元気だし/迫田和代
寒さの中羽毛をふくらませた雀に、冬の日差しがとりわけ温かく優しく感じます。その温もりに、作者自身も明るく元気付けられたのでしょうね。(藤田洋子)

★年賀状郵便受けの大き音/古賀一弘
お正月の楽しみの一つの年賀状。届けられる賀状を心待ちに、郵便受けに入る「大きな音」が耳に響き、新年を迎えての喜び、心明るさが感じられます。(藤田洋子)

★山風に重たげにゆれ実南天/古田敬二
山風はそんなに強い風ではないのでしょう。それでも揺れる実南天。重たげに、がその風情を際立たせて感じさせてくれます。(高橋秀之)

★丘まるく夕日孕みし冬木立/小西 宏
なだからな丘の冬木立ちがいま夕日を孕んでシルエットのように美しく立っている。ずっと留めておきたいような冬景色。(高橋正子)

第2回句会全作品

2012-01-13 09:28:07 | 日記
◆1月8日~14日/20名◆

●高橋信之
大いなるものよ冬空仰ぎ見る
冬空の拡がりに今駅裏は
せいけつな色して落葉日の中に
ごみ出しの朝の一歩に冬の晴れ
許されて枯芝のやさしさを踏む
寒天の今日ためらいの無き青に

●高橋秀之
延々と冬の朝焼け機上から
小寒のニュース映像異国の地
冬服をかばんに搭乗国際線
夜が明けて西空の冬月白く
白菜が溢れんばかり大皿に
北風の吹く朝港は波高し

●今村征一
寒灯下憤怒の仁王立ち上がる
遠くとも待春の情分かちたく
清浄に暮れて高野の冬銀河
行間に悴むこころ垣間見る
息白く大極拳の足上がる
餅を焼き昭和二桁裏返す
目で描く絆の一字寒晴るる
龍描く千鳥破風にもある淑気

●藤田洋子
水くぐり刻む七草青々と
七草のほのかな香り椀の中
水仙の香り残して灯り消す
切り揃え置く水仙の厨窓
寒中の硝子のくもり拭いて空
海の香の海鼠真水で洗いおり

●古田敬二
木漏れ日を受けて実一つ藪こうじ
山風に重たげにゆれ実南天
梅林の奥より剪定鋏音
温室の蘭が聴いてるソナタ「春」
窓越しの冬の日温しお茶饅頭
雪嶺は太古の高さに御嶽山

●古賀一弘
お互ひの長寿言祝ぐ年始酒
三陸に生まれ育ちて成人式
年賀状郵便受けの大き音

●迫田和代
雪道をよぎる黄色の遮断機よ
冬日さし膨れた雀元気だし
僅かだが緑を残し枯れ山に
群れて咲く水仙の香り海風に
陽を浴びて輝く蝋梅黄金色
冬の朝窓開け部屋をシンとして

●津本けい
かたまって流れの底の寒の鯉
星よりも少なき岬の冬燈
鳶舞える送電塔より霰降る
戸締りに出づれば冬満月凛と
間近より雉子鳴き発ちて野を揺らす
幾度か雉子降り発ちぬ草の原
夕映えの水に流れて浮き寝鳥
椋の実を高く散りばめ空広し
紅茶葉のジャンピング楽しき冬暁
川に出て寒風どっと攻め来たる
凍雲の青き影ゆく向う岸
寒夕焼束の間燃えて昏れにけり

●黒谷光子
面影は少年のまま賀状読む
伊吹嶺も連なる山も雪光る
実千両たわわなる枝を供花に添え
鐘撞きに蝋梅匂う段上がる
蝋梅にやわき日の射し黄の透ける
鶴亀のあとはおしゃべり謡い初め
北風の連れきし小雪闇に舞う
街灯の明かりの中を小雪舞う
蜜柑おく夜のテーブルの真ん中に
久に会う友どち寒の駅頭に
麦の田を分け列車南進す
鴨川に沿い南座へ冬柳
鳶一羽舞う空の下蕪を引く
鳶よりも烏すばやく冬空へ
冬草の青き野川や蕪洗う

●小口泰與
山風にガス灯ゆれし達磨市
次々に出そろう星や北颪
まむかえる赤城颪や冬菫
一条の夕日に浮ぶ大白鳥
古沼や鴨にまじえる大白鳥
寒釣や波の上なる榛名富士

●小川和子
紅色の濃く差す椿まだ固き
陽のさんさん降り水仙の二輪咲く
光射す水仙の香を知らんとす
鉱泉の湯気ほのぼのと石蕗の花
初稽古まず聴音に始まれり
去年に見し冬木並木のいよよ伸ぶ

●多田有花
山眠る下を流れし川もまた
遠き野に寒の光の差しており
春を待つ木々の枝先足の先
山路ゆく春遠からじと思いつつ
播磨灘包む真昼の寒霞
瑠璃色の蝶に出会いし寒真昼
地に伏してさらに水仙咲き続く
いっせいに小鳥飛び立つ枯葎
両脇に枯田したがえ高速路
寒中の沖はまぶしく晴れており
寒暁や列車の音に明けてくる
しんしんと午後より冷えて寒波くる
寒風に日ごと日差しの明るくて
裸木の枝を離れし雲一辺
待春の木々青空に枝広げ

●川名ますみ
乗初に馴染みとなりし運転手
賀状に触れ絵の具の厚み確かむる
椀物の具をすみに書き初日記
松明の洋蘭つぎつぎほどけゆく
飯桐の実を突き出して森静か
枯木山いいぎりの実のいろ激し

●桑本栄太郎
ちりぢりと赤き葎の枯野かな
蒼天の後光の射しぬ冬の雲
信貴生駒嶺の遥けき寒の晴

●佃 康水
蝋梅や空の青さに香の零る
黒々と小枝尖らせ寒満月
音違え海辺に爆す大とんど

●祝恵子
まず一本清楚に傾ぎ咲く水仙
七草の一草の根っこつまみあげ
缶の温み手に転がして冬の駅

●河野啓一
冬の瀬戸並びて白き大吊橋
小寒の吉野川越え阿波に入る
冬満月たゆたいつつも山の端に

●藤田裕子
冬満月木々を鎮めていよよ満つ
一月の万年青の生花線の美を
杵つきの黍餅ふくらみ至福の時

●安藤智久
富士見える町の明るさ凧揚がる
ピザ窯の炎が揺れる寒の夜
初競りへ山葵きりりと箱詰めす

●小西 宏
梅が枝に連なる小さき春隣
枯枝に鴉うごかず怒り肩
丘まるく夕日孕みし冬木立

ご挨拶

2012-01-10 09:49:21 | 日記

第1回きがるに句会に予想以上に大勢の方にご参加いただき、ありがとうございました。選者は私、高橋正子が務めますが、藤田洋子さん、多田有花さん、高橋秀之さんを特別選者としてご招待いたしました。3人のかた、選とコメントをありがとうございました。
きがるに句会の名前のとおり、きがるに句会をたのしんでいただくために、企画しました。きがるは、肩の力を抜いてといういみでもありますし、あまり、重厚にならずにということでもあります。ネット句会をきがるにお楽しみください。今後とも、よろしくお願いします。(主宰 高橋正子)

第1回句会入賞発表

2012-01-08 06:34:12 | 日記
■入賞発表/2012年1月8日■

【最優秀】
★北目指す列車八両雪の原/黒谷光子
雪の原を、さらに寒い北を目指す八両の列車。さほど長くない列車は人を運んで、北国のどこまで行くのであろう。静かで温かい詩情がある。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★向き合えば吾に水仙のみずみずし/高橋信之
水仙の花を「古鏡」といった俳人もいたが、向き合うことができる花である。向かうと、以外にもみずみずしい花である。(高橋正子)

★海蒼く潮風に咲く冬椿/小川和子
椿のなかでも冬にはやく咲くものを冬椿という。蒼い海を背景に潮風に咲く椿が、周囲の枯れのなかでひと際鮮明に目に映る。(高橋正子)

★初空や奈良のみやこの鴟尾のうえ/多田有花
奈良のみやこで迎える正月は、また格別な趣であろう。お寺の鴟尾がくっきりと初空に見え、確かに古き都の存在感をよく出している。(高橋正子)

★富士山と冬夕焼の中に居る/川名ますみ
富士山はいつもしっかりと座っている。さびしさもあるけれど、あたたかさのある冬夕焼けに包まれて過ごすとき、大きく、偉大なものといる安心感がある。(高橋正子)

★北目指す列車八両雪の原/黒谷光子
雪の原を、さらに寒い北を目指す八両の列車。さほど長くない列車は人を運んで、北国のどこまで行くのであろう。静かで温かい詩情がある。(高橋正子)


【藤田洋子特選/5句】
★海蒼く潮風に咲く冬椿/小川和子
海の蒼さに、はっとするほど鮮明な美しさの冬椿です。潮風を受けてけなげに咲く冬椿が、逞しく清々しいかぎりです。 (藤田洋子)

★向き合えば吾に水仙のみずみずし/高橋信之
水仙の花を「古鏡」といった俳人もいたが、向き合うことができる花である。向かうと、以外にもみずみずしい花である。(高橋正子)

★初空や奈良のみやこの鴟尾のうえ/多田有花
奈良のみやこで迎える正月は、また格別な趣であろう。お寺の鴟尾がくっきりと初空に見え、確かに古き都の存在感をよく出している。(高橋正子)

★星の夜の明けて朝日に雪眩し/黒谷光子
星の夜の雪は美しく幻想的であろうが、一夜明けて朝日に輝く雪も現実感があって、美しく眩しい。(高橋正子)

★晴れた朝七草粥の野の香り/迫田和代
七草の朝の晴れは、すがすがしい。七草の若菜には、たしかに野の香りがある。野に出て若菜を摘んだような心持になる。(高橋正子)

【多田有花特選/5句】
★藻塩振り甘さとろけて七日粥/佃 康水
「甘さとろけて」が湯気のたつ美味しい七草粥を連想させてくれます。食べたらあたたまって元気がでてきそうです。(多田有花)

★富士山と冬夕焼の中に居る/川名ますみ
富士山はいつもしっかりと座っている。さびしさもあるけれど、あたたかさのある冬夕焼けに包まれて過ごすとき、大きく、偉大なものといる安心感がある。(高橋正子)

★千両のひと色壷に豊かなり/藤田洋子
壺には千両だけ挿されているのか。そういうのもいい。あるいは、正月の花のなかに千両があって、赤い実の色があることで壺が豊かになる。(高橋正子)

★漆黒の夜空を仰ぐ寒の入り/高橋信之
寒という厳しくも清冽な季節に入る、それに漆黒の夜空はふさわしい、そう感じました。(多田有花)

★冬木立ち各々確かな影伸ばし/古田敬二
すでに葉を落としきった冬の木々、そこにさす日脚は日ごとに伸びています。年が明けたころの季節感をはっきり感じる句です。(多田有花)

【高橋秀之特選/5句】
★北目指す列車八両雪の原/黒谷光子
北を目指す八両の列車はきっと特急列車であろう。さらに雪が積もっているであろう北を目指して、真っ白な雪の原を静々と進む列車が、冬の旅情を誘ってくれます。 (高橋秀之)

★富士山と冬夕焼の中に居る/川名ますみ
富士山はいつもしっかりと座っている。さびしさもあるけれど、あたたかさのある冬夕焼けに包まれて過ごすとき、大きく、偉大なものといる安心感がある。(高橋正子)

★晴れた朝七草粥の野の香り/迫田和代
七草の朝の晴れは、すがすがしい。七草の若菜には、たしかに野の香りがある。野に出て若菜を摘んだような心持になる。(高橋正子)

★五日晴れ風に吹かるる濯ぎもの/藤田洋子
4日を仕事始めとするところが多く、かたちだけの慣習に終わる。また5日を仕事始めとする勤め先もある。主婦の仕事は、5日ともなれば、家事も溜まって、特に洗濯物には、手が抜けない。それだけに、「五日晴れ」は嬉しく、「風に吹かるる濯ぎもの」も正月らしい風景となる。働きの後のこころよさ。いい生活俳句だ。(高橋信之)

★白万両白き実をつけ動かざる/高橋信之
昨年の暮れ、近所の花屋さんで「白万両」の鉢植を見つけたので、正月花として買った。なかなか立派で、それなりの風格もある。うれしい買い物であった。(自句自解)

【入選/7句】
★元日の大空朝日で青々と/高橋秀之
元旦の空が大きく、まっさらな朝日で青い。「朝日で青々と」が秀之さんらしく、印象に残る空である。(高橋正子)

★新年の富士の真白を臨み見る/小川和子
新年の富士山を臨みみると、雪を真っ白に冠っている。富士の雪の真白には、厳しいものがあって、粛然とした気持ちになる。(高橋正子)

★掌のすずなすずしろ美しき/津本けい
掌にのせた若菜をいとおしく、美しく思う。すずな、すずしろは、その言葉も美しい。(高橋正子)

★ジャムを煮る夕べの窓に寒の月/佃 康水
ジャムをことこと煮る夕べの静かな時間。厨の窓をのぞくと寒そうな月が懸っている。なおさら、ジャムを煮る時間の豊かさを思う。(高橋正子)

★七草の名も爽やかに粥を食ぶ/河野啓一
七草と聞くだけでも爽やかな気持ちになる。若菜のみどりが散らばった粥も食べれば、病など飛んでいきそうである。(高橋正子)

★小寒の山の斜面の柔らかく/古田敬二
「柔らかく」は、作者の実感だが、大地の存在を深いところで捉えた。包み込むように「柔らかく」である。(高橋信之)

★蒼天の富士を背にして梯子乗り/古賀一弘
「梯子乗り」は、消防団の「出初式」でのことであろう。季は新年で、「蒼天の富士」を背景にして美しい風景だ。(高橋信之)


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第1回句会全作品

2012-01-08 06:33:24 | 日記
◆1月1日~7日/13名◆

No.1 川名ますみ(6句)
藪ゆれて水仙の白現るる
富士山と冬夕焼の中に居る
背を伸ばし門松の真ん中を行く
すずしろの葉を摘むリズム朝の日に
葉を摘まむすずなすずしろ音立てて
ぷちぷちとつまむ音して七種粥

No.2 高橋秀之(6句)
元日の大空朝日で青々と
微笑みも家族みんなの初笑い
もうひとつあとひとつと言い蜜柑食う
初売りの声高らかに競い合う
並ぶ間も笑顔と笑顔福袋
持ち帰り開ける楽しみ福袋

No.3 多田有花(12句)
暖かき除日を百済観音と
水煙の上にかかりし除夜の月
初空や奈良のみやこの鴟尾のうえ
風強く日差し明るき四日かな
新春の山河見下ろし頂に
正月の雪舞う古刹の境内に
干支の絵馬求めて戻る松の内
蝋梅に薄き陽のさす五日かな
甘酒をいただく小さき門松と
やわらかき陽の竹林へ寒の入り
散り尽くし山小寒の陽の中に
ふと風に丸さ覚えし寒の入り

No.4 高橋信之(15句)
わが家族居てヒアシンスの香の強し
向き合えば吾に水仙のみずみずし
白万両白き実をつけ動かざる
一月の紫の濃きヒアシンス
水仙の活けられいしが今日を咲く
四日の夜の闇の去りゆく去りゆく姿
五日晴れ雲の輝きつつ動く
五日の晴れよ電車の窓のひろびろと
一月晴れて駅のホームの空の青
過ぎゆくを留め置かずに今日が六日
今年また武者絵の凧のなつかしき
漆黒の夜空を仰ぐ寒の入り
葱太る日が高だかと駅裏に
吾がひとり公園の寒禽を啼かせ
鳥が啼く今日七草の公園に

No.5 黒谷光子(6句)
東の茜いろ濃く年明ける
小白鳥声高らかに頭上過ぐ
星の夜の明けて朝日に雪眩し
雪の田に何を啄む群雀
北目指す列車八両雪の原
薄ら日の射す裸木の一列に

No.6 小川和子(9句)
新年の富士の真白を臨み見る
トンネルに新春の陽の飛びとびに
今海を静かに覆う淑気かな
波に揺れ冬かもめ浮く青き海
対岸に燈の連なれるお正月
正月の天空深く鳶舞える
潮騒に目覚む新春晴れわたる
灯台へ行く道へ詩碑明けの春
海蒼く潮風に咲く冬椿

No.9 藤田洋子(3句)
千両のひと色壷に豊かなり
湯気吹いて鰤大根の飴色に
五日晴れ風に吹かるる濯ぎもの

No.8 古田敬二(3句)
冬木立ち各々確かな影伸ばし
小寒の陽の尾根歩む大股に
小寒の山の斜面の柔らかく

No.9 迫田和代(3句)
老いの道山歩きのよう去年今年
叩く如窓を揺らして霙降る
晴れた朝七草粥の野の香り

No.10 古賀一弘(3句)
蒼天の富士を背にして梯子乗り
平成も二十四年や去年今年
寒の入パソコン鈍き動きかな

No.11 津本けい(3句)
冬の雲とぎれて赤くあたたかし
瑞々しき七草籠の盛り売られ
掌のすずなすずしろ美しき

No.12 佃 康水(3句)
藻塩振り甘さとろけて七日粥
朝光の屋根に膨らみ寒雀
ジャムを煮る夕べの窓に寒の月

No.13 河野啓一(3句)
七草の名も爽やかに粥を食ぶ
冬潮の穏やかに寄せ伊根の里
大漁旗風にはためき鰤躍る