会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

企業、損失リスク積極開示 のれんや引当金、コロナ影響も(日経より)

企業、損失リスク積極開示 のれんや引当金、コロナ影響も(記事冒頭のみ)

KAM」を早期適用した会社が2020年3月期で40社超あるという記事。

「監査報告書は「適正」か「不適正」を短く記すだけだった。21年3月期からは監査時に注意した重要な検討事項と対応を記すことが義務化される。英語表記の「Key Audit Matters」から「KAM(カム)」と呼ばれる。

KAMは外部から過程がわからない監査の「ブラックボックス」の透明化につながるとして、英国で13年に、米国で19年から適用が始まっている。日本も東芝などの不正会計を受け、監査の信頼を高める改革の一つに位置づけられている。

義務化を前に、住友商事のように前倒し適用する企業もある。日本経済新聞の集計では20年3月期に40社超がKAMを開示した。」

記事では、住友商事、トヨタ、AOKIホールディングスなどの例を紹介しています。

早期適用は限られた会社になるようです。

「今年、KAMを開示するのは大企業を中心に50社程度にとどまる見通し。4000社弱ある残りの上場企業は来年に向けて対応が求められる。」

記事本文ではそんなに間違ったことは書いていないようですが、見出しの「損失リスク積極開示」というのはひっかかります。

企業のリスク情報を開示するのは、企業の役割であるのに対し、監査人が監査報告書でKAMとして書くのは、監査人にとってのリスク(大きな虚偽記載を見逃してしまうリスク)への対応です。例えば、多くの企業にとっては、新型コロナ感染再拡大で、今の年度の売上高が大きく減るかもしれないというのがリスクですが、監査人にとっては、そのこと自体はリスクではありません(減損会計への影響などで間接的には関係することはある)。そもそも、KAMはすぎてしまった年度の財務諸表に対して監査人がどのような監査をやったのかを書くわけですから、今の年度の売上高に関する監査は対象外ですし、監査対象年度の売上高にしても、飛ばない飛行機や閉鎖された店舗から売上が生じることはないので、新型コロナがあるからといって、売上高の監査が特別に難しくなり、KAMに書かなければならないということはないでしょう。

もちろん、実績数値の監査だといっても、見積りの監査も含まれているので、企業にとってのリスクに関係する事項がKAMに含まれることもあるでしょうが、情報として過大な期待はしない方がよいと思われます。有報であれば「事業等のリスク」で、メリハリをつけて、わかりやすく記載するのが本来のありかたでしょう。

こういう事件は、関係する会社のKAMの対象になり得ます。

日本の貨物船から燃料流出 モーリシャスが「環境非常事態」を宣言(BBC)

「モーリシャスには世界的に有名なサンゴ礁があり、観光業が経済の重要な役割を果たしている。

国際環境団体グリーンピース・アフリカのハッピー・カンブル氏は、「数千」種もの生物が「汚染された海で溺れ、モーリシャスの経済や食料安全保障、健康に悲惨な結果をもたらす危機」にあると述べた。」

「長鋪汽船は、「現地政府当局並びに関係機関の協力を仰ぎながら離礁を試みておりましたが、あいにく悪天候が続き作業がはかどらず」、「機関室右舷側の燃料タンクに亀裂が生じて燃料油が流出」したと説明。「現在、現地と協力して流出油の回収及び除去作業を続けております」とした。

「引き続き環境保全のため、船内に残存している燃料油の抜き取り及び流出油の回収作業と船舶の安全な撤去にモーリシャスと日本の関係機関と連携しながら全力で対応しています」

商船三井は、「社長をトップとする海難対策本部を立ち上げ、日本およびモーリシャスをはじめとする関係当局と連携して対応しています」、「早期の事態解決に向けて全力で取り組みます」としている。」
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