会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

商事法務 近時の会計監査制度の課題と解決策 ─ 監査人から上場会社に向けて ─(あらた監査法人より)

商事法務 近時の会計監査制度の課題と解決策 ─ 監査人から上場会社に向けて ─

旬刊 商事法務の座談会記事から、あらた監査法人代表執行役、井野氏の発言をまとめたものです。

KAMや会計不正防止など、最近の会計監査制度のトピックについて語っていますが、そのなかで、四半期開示見直し(四半期レビュー廃止)について、割とはっきりした意見を述べています。

「実務家としては、年度を通じて維持されている被監査会社と監査人の緊密なコミュニケーションに一定の牽制効果があったと考えているので、レビューの強制がなくなった場合には、マイナスの影響がでないように任意のレビューを提案していく。任意のレビューを行わない場合は、期中監査の在り方を見直していく。」

「四半期報告書のレビューが追加されたことで、年度の財務報告に対する保証水準は向上した。四半期報告書のレビュー義務がなくなり、大昔の保証水準に戻すということは、全体としての保証水準の後退でしかなく、保証水準の後退は資本コストを高める原因になる。それが国際的な投資家を集めようとする市場が目指す実務だとはとても思えない。」

他の監査法人の幹部はどのような意見なのでしょうか。また、金商法上の四半期レビューがなくなった場合、どのように対応するのでしょうか。

井野氏へのインタビュー記事。

PwCあらたのトップが説く「重要なのは人材だ」 世界経済が激変する中での会計ビッグ4の行方(東洋経済)

「――これから先、どのような人材が必要になりますか。

もちろん、監査業務を担う公認会計士も増やしていくが、非財務情報の分野では、科学の知識や心理学の知見も必要になってくる。そういったさまざまな分野の専門家を育てていくことが肝要だ。加えて、ITの重要性は増す一方なので、デジタルに強い人材もしっかり育成していく。

外部からの採用も強化するが、競争が厳しいため、外部ばかりに頼っているだけではだめ。われわれは新人から代表の私に至るまで、全員が所定の研修を受けて、スキルを磨くよう努めている。」

最後の方は、質問から少しずれて、日本企業の人材育成や人的資本開示の話になっています。

「人が企業の中で自分の価値をどのくらい発揮できるようになっているかを開示させることによって、企業間の競争を促すことが、日本企業を強くしていくことになる。社員に学ぶ機会をどう与え、どういう目的意識を持たせて、情熱を抱いて働ける環境を整備したのか。日本ではあまり語られてこなかったが、これからはこういうストーリーを前面に出して、投資家にもアピールしていかなくてはならない。」

非財務情報の保証業務については、独立性が大事だ(だから、監査法人にやらせるべき?)とのことです。

「――とはいえ、非財務情報にアプローチしようとしているところが増え、競争は激化していると思います。

競争激化自体はいいことだと思う。ただ、われわれ監査法人は、世界中で独立性を維持するという仕組みを持っているが、他の検証機関が果たして持っているかどうか。実は独立性を維持するために、われわれはものすごく投資を行っている。だから社会的に品質を担保して監査を行うことができる。

非財務情報を監査するには、まず監査基準を運用する経験を積んでほしい。それから監査した結果が適正かどうかを第三者的に評価する仕組み、さらには第三者であるための独立性を担保する仕組みを備えていることが大事だ。」

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