金融庁の課徴金処分に対する取消訴訟が増えているという記事。
「インサイダー取引などで行政処分を受けた個人や企業が、処分の取り消しを求め裁判に訴えるケースが増えている。昨年には初めて国側が敗訴する訴訟も。証券取引等監視委員会は訴訟対応にあたる専門部署を立ち上げた。紛争増加の背景には監視委の調査手法の変化を指摘する声がある。」
「2005年の課徴金制度導入以降、命令は400件余り。ほとんどは処分を受け入れ裁判所に持ち込まれるのはまれだった。提訴件数は10〜12年度は各1件ずつだった。しかし13年度は3件、14年度は6件と急増した。15年度以降は減ったが、17年度に入りこれまでに5件が提訴された。インサイダー取引についての争いが最も多い。」
「増加の理由の一つと指摘されるのが監視委の調査手法の変化だ。一般的に調査では取引の内容を調べつつ、違法行為を実行する意図があったかなどを本人に詳しく聞く。ただ最近は取引記録などの客観的な証拠を重視する一方、昔に比べて“自白”を求めない傾向が目立つという。」
インサイダー取引事案などでは「自白」を求めないのかもしれませんが、開示関連の処分は、会社の自発的訂正(背後には当局の指示があるのかもしれませんが)や、訂正の原因・背景まで詳しく調べた調査報告書(会社や会社が依頼した専門家が作成)に依拠して、処分を行っているようですので、まさに会社の「自白」に基づく処分が行われているといえます。
例えば、東芝粉飾事件では、会社の調査報告書に書かれた不正事項の中から処分しやすそうなものを選んで、処分理由としています。そのため、米国原子力事業のように、会社が調査報告書の対象からあえて外した領域については、いくらあやしくても当局はほとんど調べていないのではないでしょうか。たから、今問題になっている巨額損失が以前から存在していたのではないかという疑念が晴れないのだと思います。
監視委、東芝調査進まず…経営危機で聴取難しく(読売)(記事前半のみ)
「「一体、いつまで続くのか。これでは生殺しだ」
ある東芝関係者は監視委への不信を募らせる。「新たな会計問題への対応もあり、社員の聴取などが続けば負担は大きい」とも嘆く。」
そんなことをいえる立場なのかと思いますが。
本来は、監視委の告発を待つまでもなく、会社から刑事告発すべきでしょう。
金融庁が当事者ではない民事裁判の話ですが...
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