特別損失の計上に関するお知らせ(PDFファイル)
ビケンテクノ(東証スタンダード)のプレスリリース(2024年2月14日)。
マンション管理組合財産の着服事案発生により、953,811 千円の特別損失を計上したとのことです。
「2023 年 11 月 21 日付の「当社元社員によるマンション管理組合財産着服疑念の発生について」及び 2023 年 12 月 1 日付の「当社元社員によるマンション管理組合財産着服疑念の現段階での調査状況および専門家も含めた調査委員会の設置に関するお知らせ」により公表しましたとおり、当社元社員(以下「当該元社員」といいます。)によるマンション管理組合財産の着服事案(以下「当該事案」といいます。)が発覚しました。
当該事案につきましては、本日公表の「専門家による調査委員会の調査報告及び当社の対応に関するお知らせ」にて適時開示させていただいた調査結果に基づき、第 3 四半期連結累計期間において当該事案に係る損害賠償等の支出に備えるため、当該元社員による着服に係る賠償推定額672,008 千円を不正関連損失引当金として計上するとともに、当該不正行為の一連の過程で生じた売掛金の回収不能見込額 112,542 千円を貸倒引当金として計上しております。なお、これらの引当金の繰入額については、当第3四半期連結累計期間の連結損益計算書において、本事案の調査委員会等の専門家報酬 39,066 千円の既発生額及び管理組合への一部賠償金支払額 130,193 千円とともに不正関連損失として合計 953,811 千円を特別損失に計上しております。 」
専門家による調査委員会の調査報告及び当社の対応に関するお知らせ(PDFファイル)(40ページほどの調査報告書が添付されています。)
「大阪支店住宅管理部マンション管理課に在籍する従業員 X 氏」が不正の実行者とされています。
不正発覚のきっかけのところから不穏な雰囲気です。
「X 氏が 2023 年 10 月 2 日ごろから体調不良を理由に欠勤を続けていたところ、同年 11 月 9 日、X 氏から個人的に投資勧誘を受けていた者が、X 氏との連絡が一切つかなくなった等の申告をしてきたことに伴い、同月 13 日、社内調査に着手した。当該調査の過程において、X 氏の担当する各管理組合の資金管理状況についても調査を実施したところ、同月 16 日、各管理組合の決算報告書の預金残高と通帳残高との不一致が確認されたことにより、本件不正行為が発覚した。」
X氏は行方不明で、事情聴取できていないそうです。
「本件不正行為の実行者であるX氏は、2023年10月ごろからビケンテクノに出社せず、11月頃から所在不明の状態にあり、本件不正行為の発覚後の事実関係の調査に際して、X氏からの直接の説明が得られていない 。」
横領されたのは、マンション管理組合の財産なので、組合の帳簿等も調べる必要がありますが...
「本調査に際しては、X氏の担当する合計14のマンション管理組合に対しても、計算書類及び管理業務に関連する書類、帳票等の提供を依頼し、調査の実施を企図したが、大多数のマンション管理組合では、計算書類等の保管が適切に行われておらず、調査対象の書類の徴求に制約があった。」
X氏の所属していた部署でも...
「X氏の勤務する大阪支店住宅管理部マンション管理課には、X氏の担当する合計14のマンション管理組合に関する書類が保管されていたが、その整理は不十分であり、マンション管理組合ごとの書類のファイリングがなされておらず、過去の管理業務の実情を把握するに必要な資料に欠落があるものも認められた。また、マンション管理課と各マンション管理組合との間では、メール等の電子媒体を介した連絡や書類の授受は行われておらず、関連する証憑の全体像を把握することに制約があった。」
会社関係者へのヒアリングは...
「本件不正行為が行われていた期間中である 2016 年から 2021 年までの間について経理部長を務めていた C9 氏は、2021 年 8 月 8 日に急逝しており、また、住宅管理部等を管掌する地位にあった元専務の A12 氏は、現在病床にあって面談が困難な状況にあり、いずれもヒアリングを実施できなかった。」
不正は大きく分けて2つの方法で行われたそうです。ただし、滞留債権の方も管理組合の財産の着服(管理委託費用だといって組合をだまして出金させた)という点では同じです。
「1 本調査により判明した事実の概要
(1)X 氏による着服行為
本調査の結果、X 氏は、調査対象期間において、自身の担当する 14 管理組合に関して、管理組合名義の普通預金口座及び定期預金口座から合計 9 億 1474 万 4839 円 を着服していた疑いのあることが判明した。着服行為の手口については、X 氏本人が行方不明であり、X 氏のヒアリングが実施できないことから判然としないが、管理組合の費用支出の際に必要となる払戻請求書を偽造することにより、銀行窓口から払戻された現金を自ら領得していたものと推認される。
(2)ビケンテクノにおける滞留債権の発覚
加えて、ビケンテクノでは、2023 年 11 月末時点で、管理委託費用にかかる売掛金の滞留により生じた 1 億 1200 万円程の売掛金が貸借対照表及び連結貸借対照表上に計上されているところ、当該売掛金の滞留は、X 氏が管理組合の預金口座から払戻しを受けながら、自ら領得したため、ビケンテクノにおいて売掛金の消込みがなされていなかったことが判明した。」
X氏が所属していた部署は、ごく小さい規模だったようです。
「マンション管理課の損益上の重要性は乏しく、直近の決算期である 2023 年 3 月期では、当社単体の売上高の 1%に満たない。」
「マンション管理課は、住宅管理部が所管する部署であり、A5 常務執行役員が担当取締役7として管掌している。マンション管理課内の責任者は、同課の参事である X 氏が調査対象期間を通じて担当しており、その他に従業員が 6 名から 8 名程在籍していた。
マンション管理課の各従業員についての人事異動は、退職者の発生に伴う補充採用以外には、調査の対象期間を通じて一切行なわれておらず、他の部門との人員交流はもとより、同課内でのジョブローテーションもなされていなかった。
なお、X 氏の失踪直前である 2023 年 10 月末時点では、X 氏を除いては、B1 氏、B2氏、B3 氏、B4 氏、B5 氏の 5 名の従業員が同課に所属していた。」
X氏による隠ぺい。
「X 氏による隠ぺい
なお、各管理組合の定期総会開催時に開示される決算報告書の預金残高は、いずれも X 氏により改ざんされており、実際残高である通帳残高と乖離するものであった。
ところが、決算報告書に添付される預金残高証明書は、いずれも X 氏によって偽造されており、総会開催時にも、X 氏から通帳が開示されることはなく、また、一部の管理組合については、X 氏に対して通帳の開示 を求めた形跡がなかった。そのため、本調査の開始以前において、預金残高に関する虚偽表示が各管理組合に発覚することはなく、X 氏による上記着服行為も明らかになることはなかった。」