企業会計基準委員会は、実務対応報告第35号「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」を、2017年5月2日付で公表しました。
PFI法改正で公共施設等運営権制度が新たに導入されたことを受けて、検討されたものです。
概要は以下のとおり。(「公共施設等運営事業」「公共施設等運営権」「運営権者」「管理者等」などの定義は、PFI法の規定が参照されていますが、煩雑なので、ここでは省略します。末尾の図を参考にしてください。)
1.範囲
公共施設等運営事業において、運営権者が
・公共施設等運営権を取得する取引
・公共施設等に係る更新投資を実施する取引
に関する会計処理及び開示
2.公共施設等運営権に関する会計処理
(1)公共施設等運営権の取得時の会計処理
・運営権者は、公共施設等運営権を取得した時に、管理者等と運営権者との間で締結された実施契約において定められた公共施設等運営権の対価について、合理的に見積られた支出額の総額を無形固定資産として計上
・運営権対価を分割で支払う場合、資産及び負債の計上額は、運営権対価の支出額の総額の現在価値
(公開草案時の記事では「支出額の総額の現在価値」という文言について「支出額の現在価値の総額」ではないかと書きましたが、草案どおりの文言で確定しました。)
・運営権対価の支出額に重要な見積りの変更が生じた場合、当該見積りの変更による差額は、上記に基づき計上した資産及び負債の額に加減
・公共施設等運営権の取得は、「リース取引に関する会計基準」に定めるリース取引に該当しない。
(2)公共施設等運営権の減価償却の方法及び耐用年数
・無形固定資産に計上した公共施設等運営権は、原則として、運営権設定期間を耐用年数として、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分
(無形固定資産で定額法以外の償却方法というのは、これ以外ではソフトウェアぐらいでしょうか。)
(3)公共施設等運営権の減損損失の認識の判定及び測定における資産のグルーピング
・公共施設等運営権は「固定資産の減損に係る会計基準」の対象(減損会計基準適用に際しての資産グルーピングに関する規定あり)
(4)その他
・実施契約において、運営権対価とは別に、各期の収益があらかじめ定められた基準値を上回ったときに運営権者から管理者等に一定の金銭を支払う条項(「プロフィットシェアリング条項」)が設けられる場合、当該条項に基づき各期に算定された支出額を、算定された期の費用として処理
3.更新投資に関する会計処理
(1)更新投資に係る資産及び負債の計上
・更新投資は、公共施設等運営権取得時に資産・負債を両建て計上する場合と、更新投資実施時に資産計上する場合がある。
・前者は、運営権者が公共施設等運営権を取得した時において、大半の更新投資の実施時期及び対象となる公共施設等の具体的な設備の内容が、管理者等から運営権者に対して実施契約等で提示され、当該提示によって、更新投資のうち資本的支出に該当する部分に関して、運営権設定期間にわたって支出すると見込まれる額の総額及び支出時期を合理的に見積ることができる場合。計上額は、当該取得時に、支出すると見込まれる額の総額の現在価値。(見積り変更の場合の規定あり)
・後者は、それ以外の場合
(2)更新投資に係る資産の減価償却の方法及び耐用年数
・公共施設等運営権取得時に計上する資産は、運営権設定期間を耐用年数として減価償却
・更新投資実施時に計上する資産は、当該更新投資に係る資産の経済的耐用年数(残存する運営権設定期間が上限)にわたり減価償却
4.開示
(1)表示
・公共施設等運営権は、無形固定資産の区分に、公共施設等運営権などその内容を示す科目をもって表示
・更新投資に係る資産は、無形固定資産の区分にその内容を示す科目をもって表示
・運営権対価を分割で支払う場合に計上する負債は、公共施設等運営権に係る負債などその内容を示す科目をもって表示(流動固定区分あり)
・更新投資を公共施設等運営権取得時に資産計上する場合の負債は、その内容を示す科目をもって表示(流動固定区分あり)
(2)注記事項
・取得した公共施設等運営権の概要、公共施設等運営権の減価償却の方法、更新投資に係る事項を注記
2017年(平成29年)5月31日以後終了する事業年度および四半期会計期間から適用です。

(企業会計基準委員会資料より)
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