会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

北電債務超過の瀬戸際が見せる日本の危機(日経ビジネスより)

北海道は「27%」の電気料金引き上げ!?
北電債務超過の瀬戸際が見せる日本の危機
(注:登録が必要かもしれません。)

北海道電力の決算を取り上げた記事。特に税効果会計についてふれているところが興味深いと感じました。


「北電は今2014年3月期の業績予想で単独経常損益を1160億円の赤字としたが、最終損は780億円の赤字予想となっている。この間にあったのが、408億円に上る繰延税金資産の計上である。

 繰延税金資産は、売掛金が回収できないような場合に備えてあらかじめ積む貸倒れ引当金や、その期に出した最終損失で翌期以降の利益と相殺できる繰越欠損金など、税金支払いを後で減らせるというものだ。北電は、2012年3月期にこの繰延税金資産をいったん544億円落としている

 これは翌期以降、税の軽減に見合う利益が出せないと見込まれた場合に行う処理だ。ところが、1期置いた今期、再び408億円の同資産を計上している。前述のように経常損より最終損失の方が軽くなったのは、これで“税の戻し益”が発生したためだ。」

「だが、今期も自ら大幅赤字を見込む北電がなぜこれを利用できるのか。同社の会計監査を行う新日本有限責任監査法人は、「あくまでも一般論」と断った上で、「翌期、あるいはそれ以降数年の利益が見込めれば繰延税金資産は計上できる」と言う。

そこで決め手になったのは昨年秋の電気料金引き上げ認可だ。電気料金は、発電などの原価を算定した上で電力会社の利益を確保する総括原価方式で決められる。つまり、電気料金の認可は、「電力会社の利益確保を国が認定したようなもの」(企業会計に詳しい愛知工業大学の岡崎一浩教授)。昨年の値上げ認可以降の3年間に939億円の純利益が出せると見込んでいる。監査法人はそれを認める形で繰延税金資産の計上も承認したわけだ。

しかし、実際には料金認可の前提となった原発の設備利用率59%は今期、ゼロで来期も前述のように極めて怪しい。結果、今期は前述のように770億円の連結最終赤字であり、来期の大幅黒字化も難しいように思える。仮に本当に利益計上の難しさが見込まれれば、今期、一旦計上した繰延税金資産408億円の相当部分を再び、落とさなければならなくなる事態も考えられる。その分はさらなる損失である。」

繰延税金資産の回収可能性の見積りは非常に難しいわけですが、いったん落としたものを再度計上するという以上、(この記事は不安視していますが)何らかの根拠がきっとあるのでしょう。

なお、電気料金の認可は「電力会社の利益確保を国が認定したようなもの」という大学教授のコメントはちょっと間違っているような気もします(料金が規制されている部分については正しい)。

北電だけの数字はわかりませんが、経産省のサイトなどをみると、日本の電力の約6割はすでに自由化されており、自由化されている部分については、料金の認可は関係なく、したがって認可料金を上げたからといって、自由化部分も含めて収入増が確保できる保証はないと思われます。もちろん、電力会社はほとんど独占企業ですから、規制されている部分の料金が上がれば、自由化部分の料金を値上げしやすくなるとはいえますが、需要家との交渉で決まる話ですから、確実とはいえません。
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