会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

電波争奪、ソフトバンクが制す イー・アクセス買収(日経より)

電波争奪、ソフトバンクが制す イー・アクセス買収

ソフトバンクによるイー・アクセス完全子会社化の背景を取り上げた記事。

「ソフトバンクがイー・アクセスを完全子会社化する。KDDIも買収に動いていたが、交渉に出遅れたソフトバンクが時価総額の3倍強という金額を提示して巻き返した。背景にはスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)時代に逼迫する電波の争奪戦がある。」

「ソフトバンクが狙うのはイー・アクセスが3月から高速携帯電話サービス「LTE」を始めた1.7ギガ(ギガは10億)ヘルツ帯の周波数。同周波数帯は米アップルが新型スマホ「iPhone(アイフォーン)5」で世界標準の電波に指定しており「これまでと価値が全く変わった」(孫社長)。

 ソフトバンクは現在、LTE向けに2.1ギガヘルツ帯の電波を使っているが、イー・アクセスとの経営統合で1.7ギガヘルツも使えるようになる。端末はつながりやすい周波数帯を選んで接続することになり、「利用者にとってスマホの商品価値が上がる」(孫社長)。」

ソフトバンクは、イー・アクセス完全子会社化の際には、その取得原価(株式交換なので発行する株式の時価)を、連結グループに受け入れたイー・アクセスの資産・負債に配分する作業が必要になります(配分した残りがのれん)。

日経の記事のように、電波の周波数帯が取得の目的の一部だとすれば、イー・アクセスが資産計上しているかどうかにかかわらず「電波利用権」みたいな資産を識別し、時価評価しなければなりません。ただし、企業結合会計基準では「識別可能なもの」となっているので、電波が「識別可能」な資産かどうかの判断が必要になるのでしょう。

仮に「識別可能」な資産だとして、次に、償却年数が問題になります。周波数割り当てに関する法制度のことはよく知りませんが、会社がなくなるまでずっと没収されることがないのであれば、償却年数不明ということで、償却しないという方法もあるのかもしれません。のれんは償却が必要ですので、のれんにするよりは「電波利用権」(仮)に配分して償却しないのが、有利といえます。

ソフトバンク株式会社による株式交換を通じてのイー・アクセス株式会社の完全子会社化に関するお知らせ

ソフトバンクモバイル株式会社とイー・アクセス株式会社の業務提携のお知らせ
(ソフトバンク)

イー・アクセス買収で2社分のプラチナバンドを手にしたソフトバンクの成算とは(現代ビジネス)

「大阪大学の鬼木甫名誉教授が2010年11月に公表した試算(一人当たりGDPなどを参考に算出)をあてはめると、電波オークションを実施していれば、イー・アクセスが保有する700㎒帯域の周波数は、2,730億円程度の価格がついてもおかしくなかった。つまり、国庫は2,730億円の税外収入を得る機会を失った。半面、イ―・アクセスはタダで得たものを転売して労せずに1,800億円を稼ぎ出し、ソフトバンクは格安な買い物をしたのである。」

こういう問題があるので、電波を別科目にして目立たせることはしないのかもしれません。

企業結合のときの原価配分をPPA(パーチェス・プライス・アロケーション)というそうです。「M&Aの重要なプロセスの一つ」だそうです。

【新日本ナレッジスクール】M&Aにおける取得原価配分(パーチェス・プライス・アロケーション「PPA」)の実務(新日本監査法人)

パーチェスプライスアロケーション(PPA) の業務フロー (トーマツ)(PDFファイル)
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