会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

経営破綻を誰よりも早くスクープしたジャーナリストが問う、JAL再建は本物か(現代ビジネスより)

経営破綻を誰よりも早くスクープしたジャーナリストが問う、JAL再建は本物か

『JAL再建の真実』という新書本の著者へのインタビュー記事。破綻前のJALの会計処理についてもふれています。

「・・・本のなかでは、いわゆる「破綻効果」が財務体質の大きな改善につながっていると指摘されています。「破綻効果」とは、具体的にはどういったことを指すものなのでしょうか。

町田 一番大きなものは、航空機やエンジンの償却負担の軽減効果です。具体的な仕組みについては、本書を読んでいただきたいのですが、JALは航空機などの購入の際に航空機メーカーから受け取るリベートを利益として計上するかたちで、粉飾決算といわれてもなんら不思議のない経理処理を長年行ってきた結果、航空機やエンジンの帳簿上の価格が市場価格を大きく上回り、その償却負担が経営を圧迫していました。

 モノを買って利益が出るなどということはありえません。そのありもしない利益を捻出してきた結果、ツケが回って破綻に至ったのです。

 ただ、破綻処理によって、その航空機やエンジンの価格の洗い替え(適正化)ができました。この結果、費用計上の対象になる償却負担が減って、利益の出やすい体質になったわけです。

 結果として、買い替えたくても巨額の売却損が出るので売るに売れなかった燃費の悪い航空機を処分して、燃費の良い航空機に置き換えることや、保有する飛行機の種類を減らして部品の在庫を減らすといった経営の効率化が可能になりました。・・・」

JALが破綻する相当前から、この会計処理はマスコミ等で問題になっていましたが(当サイトでも取り上げたことがあります)、JAL破綻後も、こうした、値引きを取得原価のマイナスではなく即時に利益計上する処理が、会計基準違反であるかどうか(違反とまではいかなくても不適切な処理であったのか)については、公的には何ら判断が示されていません。つまり、固定資産や収益認識の会計基準が見直されたわけでもなく、当局や会計士協会から解釈が示されたということもありません。

したがって、今、どこかの企業が、破綻前のJALと同様の会計処理を行っても、監査人がそれを認めてしまう可能性があるということになります。

日本の会計基準は海外と同等であるという「レトリック」が広まっていますが、本当にそうなのかどうかは、よく点検しなければなりません。

JAL再上場を機に考える乱脈経営で破綻した企業の国策救済は正当か(現代ビジネス)

「JALが破綻前も含めて過去最高の利益を稼ぎ出したと発表した今年5月の決算発表から、9月の再上場の数日前まで、筆者のところには「再建の真贋」を問う新聞、テレビ、雑誌、ラジオからの取材が途絶えることなく続いている。

JALが会社更生法の適用を申請し破綻する3年以上前に、巨額の簿外債務を抱えながら、航空機購入の際に航空機メーカーから受け取るリベートを利益に計上するなどして、実質的な債務超過状態を覆い隠す決算処理をしていたJALの実情を『週刊現代』誌上などで再三にわたってスクープしたことに着目して、本当に大丈夫なのかとお墨付きを求めて来たのである。

 詳細は、拙著『JAL再建の真実』で確認して頂きたいが、あれほど破廉恥で悪質な決算処理は過去に類を見ないと言っていいだろう。」
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