会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

OECD:多国籍企業の課税逃れ防止 強化策公表(毎日より)

OECD:多国籍企業の課税逃れ防止 強化策公表

OECDが、国際的な課税逃れの防止策を盛り込んだ最終報告書を公表したという記事。

11月のG20首脳会議に報告される予定です。

「節税策としては、法人税の安い国の子会社から融資を受け、過大な利子を支払う方法がある。利子負担は損金算入されるため、納税額を圧縮できるうえに利子収入を得た子会社の税金は安くて済むためだ。これに対し、最終報告書は損金算入できる金額を所得の10〜30%とする制限を設けるよう勧告した。

親会社が開発した特許などの無形資産をあえて低価格で税金の安い国の子会社に譲渡し、子会社に利益を上げさせて節税するケースには、実際に生み出された収益から価格を再評価する対策を打ち出した。

課税対象となる支店などの「恒久的施設」の定義も修正。従来、海外企業が倉庫しか置いていない国はその企業に課税できなかったが、倉庫の使用がビジネスの根幹となるインターネット通販などの場合は課税できるようにする。

最終報告書は、多国籍企業の進出先の税務当局が企業に節税計画の開示を義務付けることも勧告した。課税逃れ対策に必要な条約改正を効率的に行うための多国間協定も日米欧やアジアなどの計88カ国が策定交渉に参加して2016年末までに策定する。」

記事の末尾で内容が箇条書きで整理されています。

OECDのプレスリリース(和訳)

G20財務大臣会合の討議資料となるOECD/G20BEPSプロジェクト成果文書を提示 - 多国籍企業による租税回避を防止するための国際租税制度改革(OECD)

BEPSによる税収の損失は、控えめに見積もっても年間1,000~2,400億米ドル、世界全体の法人税収の4~10%に達すると推計されています。開発途上国では税収のより多くの部分を法人税収に依存していることを考えると、BEPSが開発途上国に与える影響は特に大きいといえます。

「税源浸食と利益移転は、経済的な側面だけでなく、信頼の問題としても、全ての国に影響を及ぼします」とOECDのアンヘル・グリア事務総長は述べました。さらに、「BEPSは、成長の活性化や、世界的経済危機の影響への対処、全ての人々のためのより多くの質の高い機会創出などのための貴重な資源を各国から奪っています。しかし、それ以上に、BEPSは世界的に租税制度の公平性に対する市民の信頼を損なっています。OECDが本日提示する措置は、ここ1世紀ほどの間において、国際租税ルールに対する最も抜本的な変革です。これらの措置は、二重非課税に終止符を打ち、課税と経済活動及び価値創出との一致を促すものであり、それらが十分に実施されれば、BEPSを引き起こしているタックスプランニングの仕組みを無効化することになります」と述べました。」

最終パッケージそのものはこちら。

Base Erosion and Profit Shifting(OECD)

目次より15の行動計画。

Action 1: Addressing the Tax Challenges of the Digital Economy
Action 2: Neutralising the Effects of Hybrid Mismatch Arrangements
Action 3: Designing Effective Controlled Foreign Company Rules
Action 4: Limiting Base Erosion Involving Interest Deductions and Other Financial Payments
Action 5: Countering Harmful Tax Practices More Effectively, Taking into Account Transparency and Substance
Action 6: Preventing the Granting of Treaty Benefits in Inappropriate Circumstances
Action 7: Preventing the Artificial Avoidance of Permanent Establishment Status
Actions 8-10: Guidance on Transfer Pricing Aspects of Intangibles
Action 11: Measuring and Monitoring BEPS
Action 12: Mandatory Disclosure Rules
Action 13: Guidance on Transfer Pricing Documentation and Country-by-Country Reporting
Action 14: Making Dispute Resolution Mechanisms More Effective
Action 15: Developing a Multilateral Instrument to Modify Bilateral Tax Treaties

(Controlled Foreign Company Rulesというのはタックスヘイブン税制のことのようです。)

英語のプレスリリースの末尾に解説動画が4本掲載されています。いずれも2分ぐらいの短いもので、見ているとなんとなくわかった感じになります。

OECD presents outputs of OECD/G20 BEPS Project for discussion at G20 Finance Ministers meeting

報告書のサマリー(50ページ弱あります)

Executive Summaries 2015 Final Reports(PDFファイル)

日本の財務省もさっそく大臣談話を出しています。

BEPS行動計画に関する最終報告書の公表についての財務大臣談話(財務省)

「近年、グローバルな経済活動の構造変化に各国の税制や既存の国際課税ルールが追いつかず、多国籍企業の活動実態とルールの間にずれが生じている。こうした中、多国籍企業がこのようなずれを利用することで、課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行うこと(BEPS)がないよう、各国の税制の調和を図ると共に、国際課税ルールを経済活動の実態に即したものとする必要がある。BEPSプロジェクトの最終報告書は、その実現のため、実体面及び企業の透明性の向上や不確実性の排除といった手続面も含めた15の行動計画の下、包括的にBEPSに対応する諸措置を勧告している。日本は、本プロジェクトのこのような問題意識に強く共感し、また、とりまとめられた対応策を高く評価している。これらの対応策により、企業間において公正な競争条件が整い、納税者の公平感や税制に対する信頼が確固たるものとなるであろう。」

Profession welcomes OECD tax plan(economia)
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