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東芝「粉飾決算」問題 メディアが報じない金融庁の「不正見逃し」疑惑と処分の行方(現代ビジネスより)

東芝「粉飾決算」問題 メディアが報じない金融庁の「不正見逃し」疑惑と処分の行方〜なぜ、誰もが消極的なのか

東芝粉飾事件を取り上げたコラム記事。いろいろなところに書いている官僚OBの評論家兼大学教授(どちらかというと政権寄り)によるものです。

フォルクスワーゲンの不正と東芝粉飾事件を対比させて、両方とも当局が調べたのが発端だったのに、東芝はすぐに第三者委員会が作られて当局主導でなくなったといっています。

その中で会計監査についてふれており、金融庁の公認会計士・監査審査会が新日本監査法人を2011年に検査した際、東芝の監査も抽出したが問題なしと判断したため、いまさら「新日本監査法人が東芝のミスを見逃したことについて、誰も批判できなくなった」という見方を取っています。

「2月に証券取引等監視委員会が開示検査をしながら、その後に東芝の第三者委員会が作られ、当局検査から逃れていることについては、なんとなくわかった。それ以前の当局検査のチョンボを上書きせずに、「ないもの」として扱ったのだろう。

2月時点の開示検査で東芝の不正を見つけた検査官はさぞかし悔しい思いをしているだろう。検査官の判断なのか、幹部の判断なのか。開示検査を徹底的に行うのではなく、第三者委員会にした経緯はどうなっているのか、興味深い。

まさか、それが、刑事事件や行政処分にやや不熱心であることと関係はあるまいな。」

東芝だけでなく、監視委だけ、あるいは、監視委と検察だけで、不正を調べ上げ摘発するという事例は、最近はほとんどないように思われます。破たんした企業やライブドアのような特殊な事例は別として、会社に調査委員会を作らせて調べさせ、自発的に過年度決算訂正をさせる形式をとる例が多いのではないでしょうか。そうすれば、会社に虚偽記載を自白させるようなものですから、手間もかからず、確実に摘発の実績を積むことができます。そもそも、東芝のような巨大企業の全社的な粉飾(その中には白黒つけがたいものもある)を、当局主導により、ごく短期間で(といっても約半年かかっていますが)もれがないように調べ上げるというのは至難の業のように思われます。

また、監査法人への検査の時に、会社の粉飾を見逃したから、チョンボということもいえないでしょう。最初から「駆け込み寺」「未熟」と決めつけて検査する場合はともかく、特に問題がないようにみえる事務所の場合は、無限定適正という結論に合わせて整理された監査調書をレビューしながら、(東芝の場合は)会社に騙されて何も知らなかった(といわれている)監査チームにヒアリングしているだけですから、手続きや文書化の不備を指摘することはあっても、会社の粉飾まで発見できる可能性は低いといえます。

いずれにしても、今後は、東芝が虚偽記載として自白した事項に焦点を絞って、監査手続不備や、意見集約過程の不備の有無を調査するのでしょうから、何かマイナスの点を見つけようと思えば、いくらでも見つかることでしょう。

現代ビジネスの記事で参照されている別記事。

東芝〝粉飾決算〟問題と金融庁
新日本の東芝監査をなぜ見逃していたのか
(朝日)

この社説でも、監査事務所への検査についてふれています。

東芝新経営陣 信頼回復に欠かせぬ体質改善(読売社説)

「東芝の監査法人が不適切会計を見逃したことへの批判もある。金融庁による監査法人に対する検査体制強化も検討課題となろう。」

上場会社については、協会レビューをやめて、金融庁検査に一本化するのがよいのでは。
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