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農林中金、16年ぶり赤字に…1・2兆円規模の資本増強で含み損抱える米国債など処理(読売より)

農林中金、16年ぶり赤字に…1・2兆円規模の資本増強で含み損抱える米国債など処理

農林中央金庫の2025年3月期の最終利益が5000億円超の赤字見込みだという記事。

大規模な資本増強を行うそうです。

1兆2000億円規模の資本増強を行う方針を明らかにし、多額の含み損を抱える米国債などの処理に充て、財務基盤を立て直す。実際に赤字となれば、リーマン・ショックの影響を受けた09年3月期以来、16年ぶりとなる。」

「農林中金の債券の含み損は22年3月末に3343億円だったが、24年3月末には約6・6倍の2兆1923億円まで拡大した。米欧など海外金利の上昇で、保有する外国債券の価値が目減りし、含み損が膨張した。農林中金は、資本増強を通じ、収益性が高い資産への入れ替えを進めるという。」

大きな含み損ではありますが、数十兆円の外国債券投資に対して2兆円の含み損なので、減損処理(評価減)するほどの著しい下落ではないのでしょう(満期保有として会計処理している場合)。

農林中金、5千億円の赤字見通し 1.2兆円の資本増強を検討(朝日)(記事の一部のみ)

「農林中金は全国に営業網があり、預金量ではメガバンクに次ぐ規模を誇る。だが農林水産業への貸し出しは伸び悩み、米国債など利回りの良い外国債券をたくさん保有してきた。市場運用資産残高55.9兆円(23年12月)のうち、半分の30.6兆円(同)を債券に充てていた。」

農林中金、5000億円超の赤字へ 1.2兆円の増資検討(毎日)

「農林中金の市場での運用残高は56・3兆円。このうち債券が56%を占め、株は2%にとどまる。特に米国債など外国債券の投資に注力してきたが、米国などの金利上昇の影響で外国債券の価格が下落し、24年3月時点で2兆1923億円の含み損を抱えていた。

農林中金は08年のリーマン・ショックに際しても投資した有価証券で多額の損失を出し、1兆9000億円の増資を実施している。再び投資で巨額損失を出した形だ。最終赤字の計上でJAなどに対する配当ができなくなる可能性が高く、各JAの運営などにも悪影響が広がる恐れがある。」

農中が今期5000億円超の赤字に、米金利高で債券評価損2兆円に拡大(ブルームバーグ)

農林中金のサイトを見ると、資本増強についての開示は見当たらず、2024年3月期の決算に関する資料だけ開示されていました。

2023年度決算の概要について

2023年度決算概要説明資料より)

(この表の見方として正しいか自信がありませんが)外貨調達利回り 4.80%に対し、外貨建有価証券の利回りは5.28%もあります。しかし、「※3」をよく読むと「売却損益を含まない外貨建有価証券等利回りは3.87%」なので、保有だけであれば、4.8%で調達した資金を3.87%で運用していることになり、完全に逆ザヤです。

満期まで保有していれば、売却損は発生しない代わりに、満期まで逆ザヤが続くことになるのでしょう(近い将来金利が下がれば別ですが)。その方針をとるのか、売却損を出して(含み損を実現させて)逆ザヤを解消するかということなのでしょう。ただし、一挙に2兆円の含み損を実現させると、損益へのインパクトが大きすぎるので、5千億円という巨額ではあるが吸収できなくはない赤字金額を選んだのかもしれません。

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