会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

「PBR」は実は役に立たない...? 個人資産800億円超の「伝説の投資家」が「PBRには大きく誤解されていることがある」と指摘する「意外な盲点」(現代ビジネスより)

「PBR」は実は役に立たない...? 個人資産800億円超の「伝説の投資家」が「PBRには大きく誤解されていることがある」と指摘する「意外な盲点」

(書籍(出版社は現代ビジネスと同じ講談社)の宣伝記事のようですが)「伝説の投資家」がPBRには誤解があるといっているという記事。記事を読む限りでは、「役に立たない」とまではいっていません。

「純資産は解散価値とも言われ、「会社をたたむとこれだけのお金が残る」という印象を与えます。しかし、これは大きな間違いです。はっきり申し上げますが、純資産は解散価値ではありません

そもそも上場会社で解散する会社などほとんどありません。また、現実的に解散しようと思うとそれに伴い膨大な費用もかかるでしょう。だから「会社を解散したら」という仮定をおいて議論するのは意味がないのです。」

「これまで利益が出ていてPER10倍で株価が評価されていた。しかし、赤字になってPERで評価できなくなった。そこでPBRを見ると0.5倍だった。解散価値よりずーーっと安い。株価は倍になる可能性がある。

この議論の最大の問題は、この会社が持っている固定資産、例えば工場や機械設備を簿価で買ってくれる会社なり人がいると仮定しているところです。果たして、赤字を垂れ流す工場や機械設備が簿価で売れるのでしょうか

また、利益が出ていて配当を払っている場合は、株式はPERや配当利回りで評価されPBRはあまり意味を持ちません。つまり、会社が赤字になるとPBRのほうを見だすのです。

しかし、赤字になると普通は会社の持っている固定資産の価値も下がり、減損すればPBRの値も上がってしまいます。資産100億円の80%が固定資産だと、50%減損すると40億円の特別損失が出ます。もし借入50億円、純資産50億円だったとすると40億円の減損によって純資産は10億円に減少してしまいます。時価総額が25億円だったとするとPBRが0.5倍で「割安だ」と思っていた株が、減損したとたんにPBR2.5倍になって全然割安じゃなかった、ということになるわけです。」

それでは、何を見るのかというと、「会社が持っている現金を足して全負債を差っ引いた数字」(ネットキャッシュと呼んでいます)を計算するのだそうです。計算式は記事に出ています。

PBRが役にたたないというわけではなく、銘柄選びの参考にはなるようです。

「個人投資家の方で自分にはそういうスクリーニングはできないという人は、とりあえず低PER、低PBR銘柄の中からいけそうな銘柄を選び、ホームページで決算短信を見てネットキャッシュ比率を確認してもいいかもしれません。PBRは低くても「この会社は固定資産ばかりで現金にまったく余裕ないわ」などとチェックするだけでもいいでしょう。

我々は、このスクリーニングを数ヵ月に一回やって割安銘柄の候補を探していました。」

現行の会計基準では、金融商品は多くが時価で計上されており、固定資産も時価会計ではないものの、減損会計を適時に適用していれば、大きな含み損は生じにくいといえます。したがって、以前よりは、純資産は解散価値に近いのかもしれませんが、この記事でいっているとおり、実際に会社を解散し解体した場合の価値とは大きな差があるでしょう。

そもそも、PBRは株価と一株あたり純資産で決まるものであり。そのうち株価は、市場が決めているわけですから、低いのはおかしい、なんとかして上げろというのは、無駄な議論だと思うのですが...。

「ESG投資はやってはいけない」...個人資産800億円超の「伝説の投資家」が忠告する「やってはいけない投資」と「その理由」(現代ビジネス)

「私は、このESG投資はまったくナンセンスだと思っています。ガバナンスのGについてはもちろん意味があると思いますが、そもそも環境のEやソーシャルのSの問題に投資顧問会社が口をはさむべきなのでしょうか? 特にEについては複雑すぎてとてもポートフォリオマネージャーに結論が出せる問題だとは思えないのですが。

パフォーマンスの悪いアクティブ運用のマネージャーがクビにならないためにESG投資にしがみついているように私には見えます。彼らには複雑な環境問題を理解するほどの頭はありません。優秀なマネージャーは普通の投資で好パフォーマンスを上げるのでESG投資などやる必要はありません。」

「さすがにCO2削減の問題は一過性の流行で終わりそうにありません。今のところ日本の政策は混乱を極め、いったい何をやりたいのか不明な状態です。政治利権の絡んだ規制やら補助金、複数の制度でもうわけがわからなくなっています。

それに付き合わなければいけない企業も余計な仕事が増えて大変ですよ。行き過ぎたESGの議論のために「統合報告書」とか「サステナビリティ・レポート」とか企業にとって無駄なコストが増えすぎです。「カーボンクレジット」だけ見ても「グリーン電力証書」「非化石証書」「J‐クレジット」「ボランタリーカーボンクレジット」とかわけのわからない状態です。」

著者の環境問題に関する考え方については、妥当かどうかよくわかりません。

ただ、税制の方が効果があるというのは、そのとおりでしょう。

「専門家の方の批判を承知で私のイメージだけで申し上げれば「二酸化炭素税を消費税換算で20%程度になるように20年かけて段階的に導入する」「その代わり消費税も段階的にゼロにする」という感じになるのでしょうか(そのくらい強烈な税率でないとCO2は削減されないと思います)。」

「いずれにせよ今後数年内にCO2削減のための本格的な枠組みが設定されるはずです。それによってCO2削減の不毛な議論はなくなっていくのでは。当然、今はやりのESG投資も下火になっていくと思います。」

 

こちらは別の書籍の宣伝記事。PBRに関して、同じようなことをいっている部分もあります。

東証が「低PBR対策を要請」その背景にある事情 長年の問題だが、23年に急に議論が盛り上がる(東洋経済)

「PBRが1倍を割れていると、「株価が解散価値を下回っている」と言われることがあり、投資家の直感に訴えるわかりやすい指標ですが、企業は将来にわたって無期限に事業を継続するというGoing-concern(継続企業)が前提になっていますから、実務上はあまり意味のある指標とはいえません

また、保有資産が時価を大きく下回っていると減損しなければならないという会計のルールはあるとはいえ、企業の純資産が本当に現在の公表値(簿価)なのかは、実際に資産を売ってみないとわからない面があります。

加えて、日本企業の場合、従業員を簡単に解雇できないので、実際に企業が解散することになった場合には、従業員への割増退職金等が大きく膨らむ可能性もあることに注意が必要です。」

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