会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

米AIG、サブプライム損失4倍の5200億円に・10―11月

米AIG、サブプライム損失4倍の5200億円に・10―11月

米保険最大手、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)で、サブプライムローンに絡む業務により、昨年10、11月の2カ月間に48億8000万ドル(約5200億円)の損失が発生したという記事。

「・・・損失の原因はグループ会社が手がけていた金融保証業務。サブプライムローンを裏付けとする債務担保証券(CDO)が債務不履行に陥った際に、投資家への支払いを肩代わりする保険契約を請け負っていた。

 昨年後半から今年にかけ、CDOの債務不履行が急増。リスク評価をやり直した結果、保険契約で発生する損失が従来の想定より大きいと判断し、損失見通しを大幅に引き上げた。」

New Losses at A.I.G. Trouble Wall Street

こちらの記事によると、AIGの監査人であるプライスウオーターハウスクーパーズが、スワップの評価に関する会計実務に「重大な欠陥 material weakness」を発見し、その結果、大きな損失を計上することとなったようです。日経記事では、「サブプライム関連の有価証券の値下がりを受けて約4倍に膨らんだ」とされていますが、それだけではなさそうです。

「A.I.G. said its longtime auditor, PricewaterhouseCoopers, had found “material weakness” with the company’s financial reporting practices for valuing the swaps, which are derivatives that provide insurance against a decline in credit quality.

A.I.G. had previously developed proprietary systems using market data and financial models. But because swaps are thinly traded, they are often difficult to price accurately. A.I.G.’s initial models could not reliably estimate the benefits of owning the less risky parts of the instruments. As a result, what the company originally suggested would be a roughly $1 billion loss is now likely to swell to about $5 billion.」

AIGの当初の評価モデルでは、リスクの少ない金融商品を保有する効果を、信頼性をもって見積もることができず、そのため、おおよそ10億ドルとみられていた損失が50億ドルに膨らみそうだということです(このあたりの理屈はよくわかりませんが)。

記事ではSECの元チーフアカウンタントのコメントを載せています。「これは、正確なデータを提供することのできるリスク管理システムが、金融機関に欠けていることの表れである」といっています。

“We are going to see more and more problems come to light like this,” said Lynn E. Turner, a former chief accountant at the Securities and Exchange Commission. “This is an indication that these large financial institutions do not have the risk management systems in place to give us accurate data.”

サブプライム問題の影響でにわかに、金融商品(デリバティブを含む)の時価をどうやって算定するかという問題が浮かび上がってきました。日本の大監査法人はどこもPWCをはじめとする海外のネットワークに加盟しているので、米国でこうした動きがあると、日本の監査実務にも何らかの影響が出てくるでしょう。

また、AIGのケースでは、金融商品の時価評価システム(内部統制の一部と考えられる)の重大な欠陥を、外部の監査人が指摘したということなので、内部統制監査上の何らかの除外事項となるのかもしれません。日本の金融機関のJ-SOX対応にも示唆するものがあります。結果として正しい評価かどうかだけでなく、そもそも正しい評価が行われるような体制になっているかも問われるということでしょう。あとから監査人にいわれて数字を直すのでは遅いということです。

週刊 金融財政事情の2月11日号に「サブプライム証券化が日本企業の決算に突きつけた課題」という解説が掲載されています。日本の会計基準における扱いや時価算定上の問題点などことが簡潔にまとまっています。)

米AIG、保有CDSの管理で監査法人から不十分との指摘
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