2016年4月6日よりテキストが満載で更新します。
気を緩めずに挑戦しましょう。 解剖学ノート編集委員会
肺循環
肺循環の起点は右心室から始まる。全身に栄養、ガスを送り届けた静脈血は
上下の大静脈に集められて右心房に貯留される。この貯留された血液は直ち
に右心房から右心室へと移されるが、単純に移動するわけではなく洞房結節
が発した周期的な一定のリズムの興奮伝導によって弁の開閉が律動的に行な
われ、肺循環を開始する。
更に解剖学的解説を加えると、右心室からは1本の肺動脈幹として出動する
が大動脈弓の直下でY字に分岐し1対の肺動脈となり左肺と右肺へと送くる。
※肺での順路※
①右肺動脈は大動脈弓をくぐつて右の肺門に達するが、左肺動脈は左気管支
と共に肺門に達する。左右の肺動脈はそれぞれの肺に達しガス交換を行う。
※※肺動脈幹と大動脈弓の間に動脈管索と呼ばれるヒモがある、この索とな
った遺物は胎児循環の際の胎児への栄養管(血管)の残遺である。
胎児循環での学習 「ボタロー管」
体循環 「大動脈」
体循環は左心室から始まる。肺循環を終えた動脈血は左心房から僧房弁を経
て、左心室に貯留される。
左心室から始まる大動脈は①上行大静脈、②大動脈弓、③下行大動脈で上記
の3動脈のうち③の下行大動脈は胸腔と腹腔の間の横隔膜を貫通する。貫通部
を大動脈裂孔と呼ぶ。
この貫通を境にして貫通以前の胸腔部の動脈を胸大動脈と呼び、横隔膜をを通
過したものを腹大動脈と命名される。
上行大動脈及び大動脈弓
左心室(左心室底)から始まる①上行大動脈は胸骨柄の後方で左後方に(ステッキ型)
の曲線を描きながら下方に下り、椎体の前方にそって第4腰椎の高さまで下行する。
※大動脈弓からは①第1枝の腕頭動脈が分枝し、やや右方向に進んだ地点で頸部に
向かって伸びる枝が②右総頚動脈、おなじ地点から下方に伸びる枝が③右内側内胸
動脈で胸部を養う。④その先で右椎骨動脈と右甲状頸動脈が分枝している。ここで
大きく上腕方向にカーブを描き鎖骨の直下を通過する。従って⑤鎖骨下動脈となつ
て下行し、右腋窩動脈に移行する。(※右上腕動脈以降は別記)
※大動脈弓での分枝は左方向に曲線を描きながら①左総頚動脈が分枝し、続いて②
左鎖骨下動脈が分枝する。
胸大動脈の分枝
胸大動脈からは心臓以外の胸部器官を養う臓側枝と胸壁に栄養を与える壁側枝
として出ているが、左右の肋間動脈は細い血管であるが大動脈から直接枝を分
枝している。この細い動脈は肋骨の下縁に沿うように肋間静脈と肋間神経が分
布している。
※横隔膜を養う壁側枝としては上横隔膜動脈として左右1対で横隔膜上部に分
布する。
※臓側枝としては食道動脈や気管支動脈は対を成さないため胸大動脈の前方か
ら枝を出している。
①気管支動脈は気管支にそって肺に進入し肺の栄養血管となっている。
腹大動脈の学習
腹大動脈はイ、腹部消化器系に分布する臓側枝、ロ、腹壁を栄養する壁側枝。
ハ、泌尿器系、生殖器に分布する臓側枝。
※腹部消化器系を栄養する臓側枝には①腹腔動脈、②上腸間膜動脈、③下
腸間膜動脈、この3本の枝は腹大動脈前面から直接無対で分枝している。
※この腹大動脈は横隔膜貫通後すぐに壁側枝として1対の下横隔膜動脈を
分枝した後に、そのすぐ下で4対の腰動脈を分枝している。
泌尿、生殖器に至る臓側枝
この臓側枝には①腎動脈と②性腺動脈(男性では精巣動脈・女性では卵巣動脈)
が対をなして分枝している。
総腸骨動脈へ
※心臓の※弁膜は心内膜が襞(ひだ)状に伸びて血管の「出入り口をふさぐ」
性状に発達し血液の逆流を防いでいる。※房室弁は心房と心室の間にあっ
て作動し心室と動脈の間にあるのが動脈弁である。
①左の房室弁は2尖弁(僧房弁)て゛※左心房と左心室を隔しているいる。
右の②房室弁は3枚の弁で構成され※右心房と右心室を隔てている。
※房室弁は心室側に弁が垂れ下がっていて弁の先端には※腱索が作動して弁
の開閉を行なう。乳頭筋の収縮は弁の開閉に必須的に関与している。
刺激伝導系
※①肺動脈の基部には肺動脈弁がありガス交換の血液を肺に送る。
②大動脈の基部には大動脈弁が所在し、上行大動脈へと続き全身に血液
を送る。
※心房と心室を隔てる結合組織の線維束で心房と心室を隔離させている。
※房室口と動脈口の間に強力な結合組織が形をつくる部分があり線維三角
と呼称する。
※房室束(特殊心筋線維)の線維三角は心房筋、心室筋との刺激伝導の役目
を主とする。
刺激伝導
心臓がポンプ作業を十分に発揮するには、心房から心室へと順序よく収縮し
血液を動脈に送り出すことが必要である。この収縮の為の①興奮(原動力)を
伝えるのが②刺激伝導系である。
刺激伝導系の経路となるのが通常の神経線維ではなく、「特殊心筋線維」で
あり、興奮伝導が主な作業である。※プルキンエ線維
①特殊心筋線維は他の心筋線維よりも太く、細胞質に富むが筋原線維は少な
く、心筋の収縮を興奮として伝導する性質に富んでいるとされる。
洞房結節
①特殊心筋線維の網状の集合体で、洞房結節は上大静脈の開口部にある。
②拍動のリズムは周期的な興奮(心拍)が拍動性に発生し、心臓の拍動が起点
となる。
③心臓の拍動によるこの「興奮リズム」が心房全体に伝導し心房の収縮を促
進して、つぎの房室結節から房室束をへて心室に伝わる。プルキンエ線維
④洞房結節には頸部交感神経幹(心臓神経)と副交感神経が分布し、歩調とり
を調整する。(ペースメーカー)
房室結節
※右心房の下部心臓壁際にあって特殊心筋線維の塊であり、洞房結節で発生し
た興奮が右心臓壁を伝導して、ここ(房室結節)で中継され、さらに房室束を
経て心室につたわる。(プルキンエ線維)
房室束(ヒス束)
心房と心室を連絡する特殊心筋線維(興奮伝導)の束である。線維三角を貫通し
て心室中隔に達し「右脚」と「左脚」に分枝する。
プルキンエ線維
プルキンエ線維は右脚、左脚を伝導してきた興奮を心筋に与える端末の線維で
広く心筋に分布し、更に乳頭筋や腱索体にも細かく分布している。
また心内膜の下層にも細かく分布し、心筋全体に興奮波動を伝えている。
附記 心筋全体の興奮伝導
※伝導系全体では洞房結節で発生したリズムに反応して律動的に作動が連鎖的
な活動を示すが、この一定のリズム以外に必要としない興奮伝導が生じるがあ
る。これを「期外収縮」と呼ぶ。
※また房室束などが何らかの理由で虚血状態となり、心房と心室との同調収縮
が不能となる。これを房室ブロックと呼ぶ。
心臓の栄養血管
心臓に栄養を送る血管は、体循環と全く関与は無く、主に大静脈の基部から幹
を出す左右の冠状動脈からの分枝によって心臓は栄養の配布をうける。
①右冠状動脈は大動脈基部の前面から出て、右心耳と右心室の間を抜け冠状溝
を右に湾曲し心臓の後面に達する。ここで後室間枝なって心尖に向かう。
②左冠状動脈は大動脈基部の左から幹を出し、肺動脈と左心耳のあいだを抜け
て冠状溝に達し、前室間枝となって心尖に到達する。
※※心臓の静脈
③心臓の静脈にイ、大心臓静脈・ロ、中心臓静脈、ハ、冠状静脈洞がある。
④回旋枝は後室間枝とわずかながら吻合が見られる。