風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

転勤族は活動現場に戻る 217号

2008年01月09日 15時42分01秒 | 青春18きっぷ
多読した連続殺人事件の推理小説によると「犯人は必ず犯行現場に戻る」と言う記述がしばしばある。私は犯罪者ではないけれど、転勤族であった。活動現場は滋賀県彦根市・長浜界隈である。年末に購入した青春18切符が3回分残っているので、琵琶湖一周のJR電車旅を企画した。犯人が犯行現場に戻り、転勤族は活動現場に戻るのは人間の良心の発露である。

岡崎発7:53⇒8:23名古屋8:56⇒10:08亀山10:45⇒11:12柘植11:27⇒12:11草津12:16⇒12:34山科12:50⇒14:17敦賀15:23⇒15:39近江塩津16:08⇒16:33長浜17:34⇒17:47米原18:12⇒18:46大垣18:58⇒19:59岡崎着

岡崎と名古屋間は東海道本線、名古屋と亀山・柘植間は関西本線、柘植と草津間は草津線、草津と山科間は東海道本線、山科と敦賀間は湖西線、敦賀と米原間は北陸本線、米原と岡崎間は東海道本線である。総距離は430km程度で、12時間乗車して、2300円である。

岡崎から特別快速電車で30分程走行すると名古屋に到着、亀山行きの電車に乗車した。四日市では伊勢志摩・鳥羽方面と奈良・大阪方面に分岐する。鳥羽・奈良間は四日市を経由すると進行方向が反対になるから、それを回避する為には線路が必要で、トライアングルになっている。カリブ海のバミューダトライアングルでは飛行機や船が忽然と消えてしまうようだが、ここでは列車が消えた話は聞かない。近くの津の高茶屋や伊賀上野の佐那具に終戦時に疎開していた話を母親から聞いた記憶がある。

東海道五十三次47番目の関宿は、亀山の次の駅である。刃物で有名な関が美濃にあり、東海道本線が近くを走るから混乱するが、関西本線のルートが元祖東海道なのである。

亀山駅から草津線乗換の柘植駅方面の接続が悪く、待機が長時間になる。理由は未電化区間だから気動車に替わる事と、JR東海からJR西日本に担当が変わるからである。加太トンネルまでは鈴鹿山脈を越える為に、急勾配を気動車のキハ120がエンジン全開で登って行くのは、高山本線の富山からの宮峠越えと同じである。分水嶺で鈴鹿川は伊勢湾の海水となり、野洲川は琵琶湖・瀬田川・淀川を経由して大阪湾に流れ込む。琵琶湖には400を越える河川が流入するが、瀬田川が唯一の放流する天然河川である。

トンネルを抜けると下りとなり、裕福な町並みになり、ゴルフ場の看板がたくさんある。甲南は甲賀忍者の里で、伊賀忍者とともに戦国時代に活躍した隠密である。情報を収集する役回りだから、現代のインターネットと同様で収入が多かったようである。古今東西、情報は金になる様子である。

伊賀忍者の服部半蔵は本能寺の変の際に、織田信長の盟友で、その時大阪に居た徳川家康を護衛して伊賀越えを成功させた論功行賞で、徳川幕府に召抱えられ重用された。諸国を行脚していた松尾芭蕉は、伊賀の出身者であったので、実は忍者あるいは隠密だったのではないかとする説がある。私も諸国を行脚し、伊賀に疎開していたが、忍者でも隠密でもなく、しがない会社員である。

草津線の貴生川は西日本旅客鉄道(JR西日本)・信楽高原鐵道・近江鉄道の駅で、狸の信楽焼きで有名な里や彦根城の町に行くことが出来る。過去に信楽高原鐵道でJR西日本の悲劇的な列車衝突事故あった。時のJR西日本の幹部は責任を弱者の信楽高原鐵道に押し付け責任回避した。その体質が後の宝塚線の重大事故の伏線となった。因果は巡る。

山科は県庁所在地の京都と大津のわずか10kmの中間にある駅で、湖西線の敦賀行きの電車を待っている時、緑色の豪華列車「トワイライトエクスプレス」がゆったりと通過して行く。大阪駅を12:03に出発して翌日の9:07に札幌に到着する長距離列車である。青春18切符では乗ることが出来ない。

湖西線の比叡山坂本は延暦寺を訪ねる為に頻繁に利用した駅である。天台宗の荒行・千日回峰に魅せられ通った。行者は千日間、京都府と滋賀県にまたがる30km程の山中の道を夜中に一人で歩く歩行禅である。行者には県境が無いのは、渡り鳥に国境が無いのと同様である。境は人間が作ったもので、動物や仏様には必要の無いシロモノである。

敦賀では米原行きの電車に待ち時間があるので、気比神社に詣でることにする。徒歩で20分の距離である。二礼二拍手一礼の礼拝をして立ち去ることにする。神道は密教に近い自然崇拝の宗教なのだろうが、教義はわからない。掃除が行届いた環境は荘厳で身が引き締まる。しかし正月松の内の時期に日本海沿岸に雪が無く、小春日和なのは異常であると思うのであるが、認識不足かもしれない。激動の世間であるから、絶えず変化している。

敦賀は琵琶湖からは、愛発関(あらちのせき)のあった愛発山を越えてすぐ北側に位置する。愛発関は、近江国と越前国の国境に置かれた関所で、鈴鹿関(伊勢国)と不破関(美濃国)と共に重要視された関所である。この山も分水嶺である。雨は極わずかな落下点の違いで、速やかに日本海に流れ込む一滴の水、琵琶湖に流れ込み、瀬田川、淀川を経て大阪湾に長旅をする一滴の水。

日本海から琵琶湖まで20km程度なので、運河を掘削して繋げる構想があったようである。琵琶湖が海水になればブラックバスは死滅するが、越前くらげが増殖するだろう。ハマチやタラや越前ガニの漁獲があるかもしれないが、鮎・もろこ・フナは壊滅する。人間が機械に頼り、自然を破壊すると、気比神社の神が黙っていない。自然を守り、恩恵に与り、共存するのが良いと思うのである。

敦賀から大阪方面の電車は多いのであるが、米原経由名古屋方面の電車は少ないのである。理由は中曽根総理の国鉄民営化の弊害なのである。敦賀はJR西日本の駅で大阪はJR西日本である。名古屋はJR東海である。大阪方面に旅客を運んだ方が儲けが大きい。しかし特急列車は両方向に頻繁に平等に出ているから、普通列車利用の金の無いもの・かね万能社会の敗者をいじめているのである。

北陸新幹線が開通すると、JR東日本とJR西日本の金沢の乗客争奪戦争が始まる。サンダーバードと北陸新幹線。東京なのだろうか、大阪なのだろうか。どうなるのだろうか。

転勤族の私が8年間勤務した懐かしい長浜駅に降りた。驚天動地・駅が新築されている。黒壁スクエア界隈も美しい。新築の鳥喜多の親子丼580円を食べたが、昔の味である。頑固親父は2年前に亡くなり、息子夫婦が経営しているようである。

長浜界隈の様変わりの導火線は敦賀まで直流電化で、乗換えが無いから人的交流が活発になったからである。そして豪雪地帯が温暖化で解消され、快適な環境に変化した。愛知県の自動車が売れると、長浜の町が奇麗になる。風が吹けば桶屋が儲かるのである。

10数年前に長浜に隣接するびわ町に工場を建設した時は積雪1mの安全設計をしたから費用が高騰した。そしてバブル経済が破綻した事が重なり苦しい立場であった。もし温暖化が10年早かったら、経費を大幅に削減できて、英雄になれていたかもしれない。タラ・レバで過去を悔やんでもどうにもならないから、日本海のタラをタラフク食べる為に、直流電化の北陸本線をせいぜい利用しようと思う。青春18切符で。

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