


遺作となったらしい
うめ婆行状記 宇江佐真理さんの遺作(未完)
宇江佐さんの作品初めて読ませていただきました。66歳で乳がんで去年お亡くなりになったそうですが、書けなくなるからと抗がん剤は使わなかったそうです。
ほのぼのとした江戸時代の日常が目の前に読みがってくるような人情話、殺人事件が起きる訳でもなく、謎が深まっていく訳でもない、庶民の行状。ほのぼのの中にも「この野郎」や「手前」などの男言葉がはしはしに出てきて、宇江佐さんの男勝りの勝気なお人柄が出ているような気がします。うめ婆は商人の家で育ったものの町方の主人に見初められ武家の嫁となった設定ですが、旦那亡き後、一人暮らしを始めるいなせな商人の出だからできる人生を歩み始めるが、ひとりになった途端に思ってもいない忙しさに翻弄される。祝言、弔いなどを通じ、江戸の町の隣近所、親せき付き合いなど、日常のなんでもない、しかし本人たちにとっては大変な問題を解決しながら独りごちてしまううめ婆であった。