「貴方が本物の桃太郎なら、キジも必要ですね?」
変わった民族衣装の少女が、僕の喉元に刀を突きつけながらそんな事を聞いてきた。僕は桃太郎だけれど、キジが必要なんて聞いたことは無い。おまけに刀を突きつけられているせいでうなずく事も喋る事もできないし・・・。
「でも残念、私にキジの知り合いは居ないの、だから・・・」
そんなことはお構い無しに、少女は一人話を続ける。どうやらこの質問は確認では無く、少女的には確定事項らしい。
「おいで、ママハハ」
少女の声に応じて、太陽を背に舞い降りてくる鳥影。・・・どう考えてもキジには見えない大きなシルエットに息を飲む。翼を広げた大きさは、少なめに見積もっても全幅2メートル。大きなクチバシに、鋭くとがった鍵爪、鋭いまなざしはどんな小さな獲物も見逃さず、そのクチバシは分厚い獣皮も貫く。・・・鷹だった。
「そんな棒っ切れでは、鬼退治には心許ないでしょ? これを使いなさい」
そういって放り投げてきたのは、傍で僕と同じように倒れている”隻眼の侍”の刀であった。それから、今にも死にそうなほど顔色の悪い侍の衣装を剥ぎ取りそれも着せられた。
・・・なんでこんな事になったのだろう? 僕はこうなった原因とも言える、ほんの30分前の出来事を思い出してみる・・・。
~回想シーン~
「勝負ありっ!!」
黒子が旗を挙げ、勝敗を告げていた。どうやら勝ったのは色黒の少女剣士のようだ。・・・相手の侍は片目に眼帯をした、いかにも人を切りますといった感じの危ない人なのに、少女は息も切らした様子もなく侍に刀を突きつけている。
「貴方達のしている事は間違っています」
「何をいっておる、そなたの立っておるこの道も、そこの茶屋も、町も、田畑も、森林を切り開いて作られておる」
「だからといって・・・貴方には大自然の声が、悲しい叫びが聞こえないの!?」
「聞こえんよ、もし聞こえたとしても、もう止められんのだ。人が人として暮らす為には、多少の犠牲は必要なのだよ」
「・・・そう、それが幕府の答えなのですね。」
少女は悲しそうに目を伏せ・・・
「では、貴方の首を持って返答と致しましょう」
「よかろう、拙者も侍の端くれ、覚悟は出来ておる。・・・だがな、私の首1つで政治は変わらん。それだけは覚えておくがいい」
「そんなことは分っています。でも、これが私なりの覚悟の証として心に留めてもらえれば十分です」
「国を敵に回すつもりか?」
「・・・もう、戦争は始まってます。貴方とここで剣を交えた瞬間から・・・」
「馬鹿な娘じゃ・・・さあ、ひと思いにやるがいい。この首を持って行け」
「では・・・」
そういうと、おもむろにに刀を振り上げる少女・・・その顔は悲しげで・・・って、ちょwwwwおまwwwwwwwww!
『おやめ下さいお侍さん!!』
突然の成り行きに混乱して、時代劇の茶屋の村娘のような台詞になってしまったけれど、少女の前に飛び出す”ひのきの棒(5G)”装備の布の服少年・・・僕(桃太郎)のことだけどさ。
「誰ですか? 邪魔をしないで下さい。これは大自然のお仕置きのはじめの1歩なのです」
『だからといって、アナタの様な娘さんが刃傷沙汰だなんて、それこそ間違っています!』
「では、どうしろと? どうすれば森林伐採を止めさせられるというのですか」
『そ、それは・・・話し合いで』
少女は悲しげに、いや、哀れむように僕を見つめると・・・
「もう遅いのです、この国の人々は文明に慣れきってしまいました。もう手遅れなのです。・・・自然と共に生きる事を、自然を愛する気持ちを、”大自然の声を聞く耳も”、全てを無くした現代人には、私たち”自然保護団体”の意見など受け入れられないのです!」
『でも、だからといって人切りが許されるとでも!?』
「もう、始まってしまったのです。私たちの抗議活動(テロ)は・・・」
そんなこと間違っている、そんなこと止めさせなければ・・・僕が、いや正義が!!
『じゃあ、僕が止めてみせる』
「何をですか?」
『森林伐採も・・・抗議活動(テロ)も・・・そして人間同士の殺し合いも、全て!!』
「・・・貴方に止められるのかしら、そんな棒っ切れで?」
『止めて見せるさ、僕が、日本一の桃太郎が!!』
「そう、貴方”桃太郎”っていうの」
そういうと少女は、ーまるで興味を失ったかのようにー倒れた侍に背を向け、僕に切っ先を向け、こう続けた。
「貴方が本物の桃太郎なのか、私が試してあげる」
その眼光は鋭く、まるでその手に持つ剣先のように冷たい輝きを感じさせた・・・所までは覚えているんだけれど、気が付いたら冒頭の様に為っていたのでした。
~回想シーン終わり~
「格好だけは”らしく”なったわね」
人の悪い、唇の端を上げただけの(嘲笑とも取れる)笑顔で、それでも満足げに褒めてくれた。表情のせいで褒めているようには思えないけれど・・・。
「ママハハはこき使っていいわよ」
『・・・君は?』
「もちろん、一緒に行くわ・・・通訳として、ね」
『・・・通訳ですか』
「なに、不満そうね」
『いえいえ、そんな事はアリマセンよ?』
「まあいいわ、私は鬼が島にあるという秘宝が欲しいだけだし」
『秘宝って?』
「パレンケ・ストーンという、不思議な力を持った石よ」
「駄目なのだ!! パレンケ・ストーンは渡さないのだ!!」
「うきー!!」
パレンケ・ストーンという単語に反応して、先程から静観していた猿と獣娘(通訳)が話に割り込んできた。
「その石、村の大事な宝物。異人に盗られた、絶対取り返す、それまで帰れない」
『・・・なんで片言?』
「ふ~ん、そんなに大事な物なら、あの噂は本当の様ね」
『噂って?』
「そんなのどうでも良いじゃない、さ、行くわよ!」
そんなこんなで旅のお供が増えました。犬・猿・キジ(鷹)が揃い、おまけに武器まで手に入れた桃太郎一行、後は鬼が島に向うだけだ。進め桃太郎、戦え僕らの正義の味方!! ちなみに戦績は、0勝1敗。それで良いのか桃太郎!?
「あ、私にもきびだんごを分けてくれない?」
『・・・キジが食べるんじゃないの?』
「いいのよ、ママハハは肉食だから」
『・・・』
続く
変わった民族衣装の少女が、僕の喉元に刀を突きつけながらそんな事を聞いてきた。僕は桃太郎だけれど、キジが必要なんて聞いたことは無い。おまけに刀を突きつけられているせいでうなずく事も喋る事もできないし・・・。
「でも残念、私にキジの知り合いは居ないの、だから・・・」
そんなことはお構い無しに、少女は一人話を続ける。どうやらこの質問は確認では無く、少女的には確定事項らしい。
「おいで、ママハハ」
少女の声に応じて、太陽を背に舞い降りてくる鳥影。・・・どう考えてもキジには見えない大きなシルエットに息を飲む。翼を広げた大きさは、少なめに見積もっても全幅2メートル。大きなクチバシに、鋭くとがった鍵爪、鋭いまなざしはどんな小さな獲物も見逃さず、そのクチバシは分厚い獣皮も貫く。・・・鷹だった。
「そんな棒っ切れでは、鬼退治には心許ないでしょ? これを使いなさい」
そういって放り投げてきたのは、傍で僕と同じように倒れている”隻眼の侍”の刀であった。それから、今にも死にそうなほど顔色の悪い侍の衣装を剥ぎ取りそれも着せられた。
・・・なんでこんな事になったのだろう? 僕はこうなった原因とも言える、ほんの30分前の出来事を思い出してみる・・・。
~回想シーン~
「勝負ありっ!!」
黒子が旗を挙げ、勝敗を告げていた。どうやら勝ったのは色黒の少女剣士のようだ。・・・相手の侍は片目に眼帯をした、いかにも人を切りますといった感じの危ない人なのに、少女は息も切らした様子もなく侍に刀を突きつけている。
「貴方達のしている事は間違っています」
「何をいっておる、そなたの立っておるこの道も、そこの茶屋も、町も、田畑も、森林を切り開いて作られておる」
「だからといって・・・貴方には大自然の声が、悲しい叫びが聞こえないの!?」
「聞こえんよ、もし聞こえたとしても、もう止められんのだ。人が人として暮らす為には、多少の犠牲は必要なのだよ」
「・・・そう、それが幕府の答えなのですね。」
少女は悲しそうに目を伏せ・・・
「では、貴方の首を持って返答と致しましょう」
「よかろう、拙者も侍の端くれ、覚悟は出来ておる。・・・だがな、私の首1つで政治は変わらん。それだけは覚えておくがいい」
「そんなことは分っています。でも、これが私なりの覚悟の証として心に留めてもらえれば十分です」
「国を敵に回すつもりか?」
「・・・もう、戦争は始まってます。貴方とここで剣を交えた瞬間から・・・」
「馬鹿な娘じゃ・・・さあ、ひと思いにやるがいい。この首を持って行け」
「では・・・」
そういうと、おもむろにに刀を振り上げる少女・・・その顔は悲しげで・・・って、ちょwwwwおまwwwwwwwww!
『おやめ下さいお侍さん!!』
突然の成り行きに混乱して、時代劇の茶屋の村娘のような台詞になってしまったけれど、少女の前に飛び出す”ひのきの棒(5G)”装備の布の服少年・・・僕(桃太郎)のことだけどさ。
「誰ですか? 邪魔をしないで下さい。これは大自然のお仕置きのはじめの1歩なのです」
『だからといって、アナタの様な娘さんが刃傷沙汰だなんて、それこそ間違っています!』
「では、どうしろと? どうすれば森林伐採を止めさせられるというのですか」
『そ、それは・・・話し合いで』
少女は悲しげに、いや、哀れむように僕を見つめると・・・
「もう遅いのです、この国の人々は文明に慣れきってしまいました。もう手遅れなのです。・・・自然と共に生きる事を、自然を愛する気持ちを、”大自然の声を聞く耳も”、全てを無くした現代人には、私たち”自然保護団体”の意見など受け入れられないのです!」
『でも、だからといって人切りが許されるとでも!?』
「もう、始まってしまったのです。私たちの抗議活動(テロ)は・・・」
そんなこと間違っている、そんなこと止めさせなければ・・・僕が、いや正義が!!
『じゃあ、僕が止めてみせる』
「何をですか?」
『森林伐採も・・・抗議活動(テロ)も・・・そして人間同士の殺し合いも、全て!!』
「・・・貴方に止められるのかしら、そんな棒っ切れで?」
『止めて見せるさ、僕が、日本一の桃太郎が!!』
「そう、貴方”桃太郎”っていうの」
そういうと少女は、ーまるで興味を失ったかのようにー倒れた侍に背を向け、僕に切っ先を向け、こう続けた。
「貴方が本物の桃太郎なのか、私が試してあげる」
その眼光は鋭く、まるでその手に持つ剣先のように冷たい輝きを感じさせた・・・所までは覚えているんだけれど、気が付いたら冒頭の様に為っていたのでした。
~回想シーン終わり~
「格好だけは”らしく”なったわね」
人の悪い、唇の端を上げただけの(嘲笑とも取れる)笑顔で、それでも満足げに褒めてくれた。表情のせいで褒めているようには思えないけれど・・・。
「ママハハはこき使っていいわよ」
『・・・君は?』
「もちろん、一緒に行くわ・・・通訳として、ね」
『・・・通訳ですか』
「なに、不満そうね」
『いえいえ、そんな事はアリマセンよ?』
「まあいいわ、私は鬼が島にあるという秘宝が欲しいだけだし」
『秘宝って?』
「パレンケ・ストーンという、不思議な力を持った石よ」
「駄目なのだ!! パレンケ・ストーンは渡さないのだ!!」
「うきー!!」
パレンケ・ストーンという単語に反応して、先程から静観していた猿と獣娘(通訳)が話に割り込んできた。
「その石、村の大事な宝物。異人に盗られた、絶対取り返す、それまで帰れない」
『・・・なんで片言?』
「ふ~ん、そんなに大事な物なら、あの噂は本当の様ね」
『噂って?』
「そんなのどうでも良いじゃない、さ、行くわよ!」
そんなこんなで旅のお供が増えました。犬・猿・キジ(鷹)が揃い、おまけに武器まで手に入れた桃太郎一行、後は鬼が島に向うだけだ。進め桃太郎、戦え僕らの正義の味方!! ちなみに戦績は、0勝1敗。それで良いのか桃太郎!?
「あ、私にもきびだんごを分けてくれない?」
『・・・キジが食べるんじゃないの?』
「いいのよ、ママハハは肉食だから」
『・・・』
続く