東京でカラヴァッジョ 日記

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オスカー・ラインハルト・コレクション、ヴィンタートゥール(スイス)

2019年07月24日 | 松方コレクション

   ヴィンタートゥールは、スイス北東部のドイツ語圏の街。

   スイス第1の都市チューリッヒから電車で20〜30分の距離にある。

   人口は11万人。小都市のように思うが、スイスでは6番目の都市。 1番目のチューリッヒが41万人。2番目のジュネーブが20万人。3〜5番目は、バーゼル、ローザンヌ、首都ベルンの順で10万人台。

 
   19世紀後半に機械産業や銀行業で栄えたため、資産家も多く≒美術品コレクターも多く、市内には多くの美術館があるそうだ。
 
   ヴィンタートゥールの美術館といえば、2010-11年に全国4都市(東京会場は世田谷美術館)を巡回した「ザ・コレクション・ヴィンタートゥール」展のヴィンタートゥール美術館を思い浮かべる人もいるかもしれない。
 
   しかし、所蔵品のレベルの高さで言えば、やはり「オスカー・ラインハルト・コレクション」である。
 
 
 
   オスカー・ラインハルト。
 
   1885年、ヴィンタートゥールに生まれる。
   父は実業家で、四人兄弟の末子。仕事を継ぐべく父の会社で働いていたが、父が亡くなって数年後、美術品収集を一生の仕事とするため、39歳で仕事を引退する。1965年死去。
 
 
   彼のコレクションからなる美術館が、ヴィンタートゥールに2つ存在する。
 
   1つは、街の中心街にある「オスカー・ラインハルト美術館」。
   18~20世紀のドイツ語圏(スイス・ドイツ・オーストリア)の作品が中心。  
 
   もう1つは、街の郊外にある「オスカー・ラインハルト・コレクション・アム・レマーホルツ」。
   14世紀から20世紀の西洋美術200点弱を所蔵する。
   「新規購入なし、貸し出しなし」の方針だそうだ。
 
 
   「オスカー・ラインハルト・コレクション・アム・レマーホルツ」は、ブリューゲルやクラーナハ、エル・グレコ、ゴヤ、シャルダン等のオールドマスターも知られるところであるが、特筆すべきは、19世紀後半のフランス近代美術コレクションの充実度。
 
 
   フランス近代美術で私的に是非観たい作品を挙げると(順不同)。  
 
1 ゴッホ《アルルの療養院の室内》
 
2 ゴッホ《アルルの療養院の庭》
 
3 ロートレック《ムーラン=ルージュの女道化師シャ=ユ=カオ》
 
4   ピカソ《Mateu f. de Sotoの肖像》
 
 
   上記以外にも、マネ、ドガ、ルノワール、セザンヌなど、印象派・ポスト印象派の作品群が素晴らしい。
 
 
マネ
 
ドガ
 
ルノワール
 
セザンヌ
 
 
 
   以上、朽木ゆり子氏の著書『邸宅美術館の誘惑』(集英社、2014年10月刊)も参照して記載したが、そのなかで引っかかった記述がある。
 
 
『彼は、どのコレクターがどの作品を持っているかよく研究していて、あるコレクターがビジネスに失敗したというニュースを聞くと、すぐに駆けつけて作品を購入したという。』
 
 
   美術品収集が専業の人に似つかわしい?エピソードだが、ハンセン・コレクションのことを指しているのだろうか?
 
 
   保険業で成功したデンマークの実業家ウィルヘルム・ハンセン(1868〜1936)は、フランス印象派のコレクターとして著名な存在。
   しかし、1922年、金融危機によりそのコレクションの一部、フランス絵画コレクションの半数以上にあたる約80点、を手放さざるを得なくなる。

   主な購入者の一人が松方幸次郎。34点の購入に成功した。

   もう一人の主な購入者として挙げられるのが、オスカー・ラインハルト。

   量もそうかもしれないが、質は間違いなく松方幸次郎を上回るものを購入しただろう。

   彼がハンセン・コレクションからどんな作品を購入したのか。私が上述に挙げたゴッホやロートレック、ピカソもハンセン・コレクションから購入したものだったのか。

   気になるが、今のところ確認する術を見いだしていない。


 
「オスカー・ラインハルト・コレクション・アム・レマーホルツ」
19世紀後半のフランス近代絵画の所蔵数(油彩・パステル画)

アングル    1点
ドラクロワ   10点    
シャセリオー  1点
コロー      9点
ミレー      1点
クールベ   9点
ドーミエ   8点
マネ         4点
ドガ         1点
モネ         1点
ルノワール  12点
ピサロ       2点
シスレー    2点
セザンヌ    8点
ゴッホ       4点
ゴーガン    1点
ロートレック  1点
ピカソ       1点
 
   画家別に見ると、意外にも点数が多いわけではない。量より質。


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