投錨備忘録 - 暇つぶしに借りた本のメモを残すブログ

移民不要論 少子化、人口減少何が悪い - 佐伯弘文(産経新聞出版)

移民不要論
クリエーター情報なし
産経新聞出版


平成22年3月8日第1刷発行

著者は1962年、東京外国語大学英米科卒。日本ガイシ入社。1964年、神戸製鋼所入社。1993年、取締役。1996年、常務取締役。1999年、専務取締役。同年より機械カンパニー(現 機械エンジニアリングカンパニー)執行社長を兼任。2000年神鋼電機(現 シンフォニアテクノリジー)社長に就任。会長職を経て同社相談役。

本書は移民に反対する意見を著者の豊富な経済活動経験をもとに書いてある。わが意を得たりの内容。良い本だと思う。

私は移民に賛成か反対かと問われると反対と答える。自分の出身地で幸せに暮らすことが出来るのが一番だという考えもあるのだが、大量の移民を受け入れるには今は摩擦が起こるだけで余計に疲弊する気がするから。なにより日本が移民を認めた時、移民として来る人々は圧倒的に近隣諸国となる。韓国、中国からの移民が大半になるに違いない。日本の生活様式、習慣、文化は破壊されるに違いない。結局、きれいごとをいっても分かり合えないものは分かり合えない。どちらかが我慢する、擦り寄るとすれば迎え入れた日本人がそうするに違いない。それを止めることはできない。日本は日本でなくなる。それが何より怖い。それを望む人もいるだろう。そうすべきだという人もいるだろう。ただ私は今は反対だ。時期尚早だと思う。


以前『日本の「安心」はなぜ、消えたのか』という本を読んだ感想に私はこう書いた。

「アメリカはというと開放型社会。そこには安心のメカニズムは存在しない。アメリカという国がやっと成立した頃の話だが、一つの作業を集団で行う時、現場監督は同一の民族だけでその集団が構成されないように気を配ったとか。あえて対立させて均衡を保つ。契約で社会が成り立つ。そんな生い立ちを持つ国だから積極的に人を信頼する心がないと生活は送れない。高信頼社会で生活するアメリカ人は、日本のような低信頼社会より相手の出方を正確に予測していて、シビアな観察者でフレンドリーであるが楽観視はしていないのだ。」

「著者は日本もそういう社会になるべきだと解く。そろそろそうなるべきだと私も考える。日本人が日本という社会の中でだけで暮らしていける安心社会はもう無くなった。元には戻れない。安心保証メカニズムが日本から失われている。だが新たな信頼関係を構築することに成功していない。手本は外にある。それは日本が属するアジアではない。アメリカにある。しかし、西欧に属するアメリカがその成り立ちから今まで経験してきたことを一気に日本がたどることはできない。少しずつそういう方向に日本人を向けなければならない。そう思う人を増やさなければならない。大半の人々がそう思い行動するようになり臨界質量に達した時、それは実現に向かう。」

移民を使えるようにするコストと今の日本人を使えるようにするコスト、どちらが安いかといえば後者になる。これがアメリカだとあまり気にすることでもない。アメリカは移民の国、移民が作り出した国。日本と前提が違う。遠い昔、日本もそうだったのかもしれない。そうだとしてもそれから1000年、2000年は過ぎている。日本という国は世界から比べると異質だといわれるが、そういうならなおさら移民が日本でいう社会でパフォーマンスを上げるのに必要なコストと時間は相当なものだと考えざるを得ない。

移民を入れるより前にやることがある。日本人が納得して日本の社会構造を変えることが先決だと思うのだ。それでは遅いのかもしれない。時間切れかも知れない。それは甘んじて受け入れよう。


(2015年3月 西図書館)
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