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FOX新聞館ブログ版             香港・台湾・中国 NEWSコラム+不謹慎発言

女に狙われる人(1)

2000-09-23 16:02:49 | 不謹慎発言
束の間の恋はいつも切なく、美しい





私が初めて香港という街を訪れたのは、もう10年以上も前のことになる。突然の出張命令に慌てて英会話の本を買いに走ったが、そんな付け焼刃のにわか努力が通じる筈もない。いざ来てみると、密かに試してみようと思っていたフレーズを試す機会はついぞ訪れず、代わりに、日・英・中に堪能な現地通訳氏の後をついて回りながら、話が自分に向けられない事を祈るばかりの苦しい数日間だった。

最終日、香港に駐在して3年になるAさんの提案で、申し訳程度の食事会が設けられたが、和気藹々と英語、広東語を駆使して現地スタッフと楽しそうに会話するAさんを見ているといたたまれず、柄にもなく、低姿勢で同席の現地社員らに酒を注いでまわった。しかし日本語も日常会話程度には不自由しない現地社員らも、そんな私を不思議そうに見つめるだけで、会話は弾みそうにもなかった。

最後までにこやかにふるまうAさんの「お気をつけてお帰り下さい」という礼儀正しい挨拶を後にすると、やっと解放された私は、逃げるようにしてホテルに戻った。普段より早いペースで無理して酒を飲んだせいか、かなり酔っているようだ。ふらつき気味の足取りでホテルの玄関をくぐると、まっすぐ部屋には戻らず、余り考えないで地下にあるバーに入った。本当は、最上階にある見晴らしのよいスカイラウンジに一度は行こうと思っていたのだが、今はとてもそんな気分にはなれなかった。

カウンターのスツールにどっかりと腰を降ろすと、反射的にネクタイを緩めた。バーテンは一瞬怪訝そうな顔をしたが、すぐに営業用の笑顔に戻ると、私に注文を聞いた。私は、自分でもびっくりするような大声で「ウィスキー!」と一言叫ぶと、大事な書類の入った鞄をかまわず足元に置き、冷房の強過ぎる店内で汗が急速に乾いていくのにも気付かず、意味も無く額をぬぐう動作を何度か繰り返した。

バーテンは訳知り顔でそれ以上細かい注文はは聞かず、しばらくした後、私の前にオンザロックのグラスをコトリと置いた。水割りを飲もうと思っていた私はやや当惑したが、これ以上何か喋る気力もなく、投げやりにグラスを掴むと、一気に液体を喉に流し込んだ。慌てて飲んだためか、激しく咳き込んでしまった私は、顔が赤くなるのを意識しながらバーテンの目を避け、平静を装って、スツールごと後ろを振り返った。すると、奥の席に座っていた一人の女性と目が会った。

(つづく)(つづかないかも)(経験に基づかない話は書きにくい)


続きは:(2) (3)

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