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ゾンちゃん財布購入記

2001-06-04 14:35:12 | のほほん
私の財布は古い。古いだけでなくボロボロである。小銭入れポケットには穴があきカード入れはスッポスポ、既に財布としての役割を果たしていないと思われるが、私は私の財布を愛している。何故ならこの財布は、落としても落としても不屈の精神で持ち主の手に戻って来た不死鳥(フェニックスとルビを振って下さい)のような財布だからである。蘇る死体ゾンビと蘇るフェニックス財布。これほど理想的な組み合わせはあるだろうかという観測筋の見解を別にしても、何しろ落としては戻って来た回数20回以上。何を隠そうここ香港でも2度程落とす&戻るを経験している。MLにその話を書いたら香港人にまで「金が入っていなかったのではないか」とツッコミを入れられたが、そんな事はない。如何に私がビンボーでも、金の入っていない財布は持ち歩かない(と思う) しかし私も彼のそんな疑惑に異論はない。フツーは落としたら戻って来ない。多分私は男運の代わりに財布運が強いのであろう。

そんな可愛い財布ではあるが、前述通り、既に財布としての機能は著しく失われている。如何に財布を20回落とした女でも、そんな生活には危機感を覚える。実のところ小銭だけはどうしようもなく、いつの頃からか別の小銭専用の財布を持ち歩いているが、財布を引退した財布1と小銭しか入らない財布2を、これまた機能性とは無縁の大胆な服装の女が持ち歩くには、効率性の面でやはり無理がある。私とて新しい財布一つにまとめたいのはヤマヤマである。買いに行けば直ちに解決する問題であると思われるが、それをしないのがこの女の無精なところ。隠していたが現在3か月以上、島から一歩も出ていない事が判明している。そんな私の目をフト引いたのが、路上の財布売りのオヤジであった。

南Y島は知る人ぞ知る物資不足の島である。何しろ市街からウチの島より遥かに離れた長洲ですらスーパーとマクドナルドはあるのである。そういう話が出ないと言うよりは島のオヤジと環境保護教団の圧力でツブされているという噂もあるが、とにかく21世紀の今なお最低限の生活必需品がかろうじて手に入るのみである。週末リゾートで訪れる小市民なら勘違いして買ってしまうかも知れないバリ島手作り民芸品で身の回りを固めるのは私の趣味には合わない。「るい・びとん」「かるちぇ」等の自己主張も無用。私のササヤかな所持金と、わずかばかりのカード類を、忠実に守護してくれさえすればよいのである。

路上の財布売りのオヤジは思えば私が香港に来た当初から、時折路上で財布売りをやっていたような気がするので、職業に誇りを持つ立派なオヤジとして評価することが出来よう。しかし既にお気付きであろうが、香港、に限らず世界の各地には、本来売ってはいけないものを売って生計を立てている人がいる。時々南Y島の交番前で推定アルミのケースから各種洋モクを取り出して売っているオヤジは、正規品の煙草をわざわざ流しで臨時販売しているのか反体制派の闘志なのか私にはわからない。如何に日頃違法商品購入者を徹底糾弾している私であろうと、財布を落とした際、賄賂も請求せず正当に任務を果たし、挙句の果てに日本人娘相手に日本語のナンパ用語を訊ねる陽気で気のいいオマワリさんを責めるのは悲しい。

そんなわけで、時と場合によっては柔軟に応じる私であったが、違法商品マニアの駐在奥をクズ呼ばわりするからには、如何に人がやっているからといって自分も、というわけにはいかない。しかし繰り返すが財布は欲しい。そんなジレンマを感じながら幾年月、ついに新しい財布を物色する機会が訪れた。単にお持ち帰りの焼ソバが中々出来なかったのが最大の原因とは言え、私は初めて財布売りのオヤジが道端に広げた各種財布を、千葉のヤンキーのごとくしゃがみこんで丹念に検分し、強烈に照りつける南国の太陽の下、自分の目的に合っており、尚且つ法に触れない商品を探す事にしばし専念した。

予想はついたが、ディズニー教団の某キャラクターが浮彫りになった仕様のもの、日本人倶楽部に持っていけるほど酷似しているとは言い難いものの「ヴァレンチノ」のロゴを彷彿とさせるもの等々、それでなくても少ない品数の中から全く無問題であるブツを探し出す作業は困難を極めた。完全に無地のものは皆無。しかしここで諦める訳にはいかない。何しろいつぞや急に雨が降って来た折も、パッと見私好みの色合いの傘を何気なく開いてみたらミッキーとキティが規則正しく並んでいるという斬新なデザインであったため、やむなく降り注ぐ雨に打たれて帰宅した私である。焼ソバ完成にあわせ5分ほど経過した頃、結局「texwood」という文字がリンゴの模様と共に刻まれた茶色の財布を手に取った。これまでの人生で聞いた事のない名前ではあったが、それは私がブランドに無知なだけで、或いは世界のどこかで商標登録されているのかも知れない。ミッキーもヴァレンチノも一律10ドルであるのも気がかりだ。本人が知らなかったとは言え、もし過ち犯してしまったことが判明したら、日頃の主張を自ら破ってしまった事を陳謝する事をここに誓います。

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