
もはや毎年恒例ともいえるジャン・ポール”ブルーイ”モーニック率いるアシッド・ジャズ・ユニット、インコグニートのブルーノート東京公演(前回は2011年4月、その後8月には“Love for Japan”として来日)は、ブルーイが”レジェンド”と崇めるリオン・ウェアをゲストに迎えたエキサイティングなショウとなった。“インコグニート・ウィズ・スペシャル・ゲスト・レオン・ウェア”ブルーノート東京公演、2日目の2ndステージ。
パーカッションにマカオ出身のジョァオ・カエタノ、ドラムにイタリア出身のフランチェスコ・メンドリア(この二人は途中で高速な乱打を繰り広げる壮絶なセッションを披露)、そしてヴォーカルには赤い髪のナタリー・ウィリアムスを加えた編制。スコットランド・ホーン・セクションもしっかり左前の定位置をキープ、ヴォーカル陣はもはや貫禄すらみえてきたヴァネッサ・ヘインズ、そして煽り具合もサマになってきたモー・ブランディスが、ナタリーを引っ張る。ベースのフランシスは多様な音が弾ける狭いステージのなかでも太い音を鳴らしてサウンドの礎を構築、ブルーイもステージの位置ではやや奥の控えめな位置に収まるもファンキーなギターでグルーヴを形成と、この二人がインコグニート・サウンドの安定をハンドリング。マット・クーパーは相変わらずの宇宙人ぶり(褒め言葉)を発揮と、ヴァラエティ豊かな華やかなサウンドもきめ細やかなバランスを保ったサウンドは、いつ聴いても”インコグイート・オリジナル”なグルーヴを供給してくれる。
「トーキン・ラウド」から幕を開け、最新作『SURREAL』からモー・ブランディスがリードを執る「グッバイ・イエスタデイ」、ヴァネッサ・ヘインズがディスコ・クイーンを気取る「エイント・イット・タイム」などを絡めながら、「コリブリ」「スティル・ア・フレンド・オブ・マイン」などの定番曲を次々と披露する。
そして、この公演のトピックはスペシャル・ゲストのレオン・ウェアだ。すでに70歳には到達しているが、衰え知らずというか、あくまでも大人の艶で勝負するダンディズムは健在。ハットにサングラス(さらには”ノー・Tシャツ”byブルーイ)の出で立ちで、深く甘い声の魔法で観客はもちろん、女性ヴォーカル陣の心拍数も高めていく。レオンがゆっくりと近づき腰に手を回すところなど、普通なら単なるエロオヤジ(失礼)となるところだが、濃厚な夜を導くのに適したセクシーな声色で、ステージに一瞬にして”愛”の空間を創出するテクニックは、さすがというほかない。
「ミラクルズ」などを披露し一旦中座するも(「アイル・ビー・バック」の決めゼリフを残してステージ・アウト)、アンコールで再度登場。ゴージャスな「アイ・ウォント・ユー」でエンディングとなった。
最後は震災以降に掲げてくれている”イッショニタテナオソウ”の言葉と、多国籍なメンバーを紹介しながら、”外見や思想・信仰の違いはあっても、グルーヴのもとではみんな一つだ”と唱え、ピースフルに幕を降ろした。
インコグニートのステージの良さは何かというと、もちろん楽曲の良さ、プロフェッショナルな演奏・歌唱もある。だが、それらに増して、演奏者、観客、その空間にいる人たちがみな笑顔で、朗らかな表情に自然となっていく不思議な力が備わっているのだ。
”匿名”という名の地球遊覧船は、どんな場所、どんな人たちにも”エンジョイ”を届けてくれる。その魅力に引き込まれ、またその船に乗る人たちが世界各地でいるのだろう。もちろん、自分もそのうちの一人だ。

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<SET LIST>
TALKIN LOUD
N.O.T
CAN'T GET YOU OUT OF MY HEAD
MIRACLES(with LEON WARE)
ROCKIN' YOU ETERNALLY(with LEON WARE)
WHY I CAME TO CALIFORNIA(with LEON WARE)
GOODBYE TO YESTERDAY
ABOVE THE NIGHT
AIN'T IT TIME
SUPERSONIC LORD SUMO
COLIBRI
THE STARS FROM HERE
STILL A FRIEND OF MINE
≪ENCORE≫
INSIDE MY LOVE(with LEON WARE)
I WANT YOU(with LEON WARE)
<MEMBER>
Jean-Paul“Bluey”Maunick(g, back vo)
Leon Ware(vo, special guest)
Mo Brandis(vo)
Vanessa Haynes(vo)
Natalie Williams(vo)
Matt Cooper(key)
Francis Hylton(b)
Francesco Mendolia(ds)
Joao Caetano(per)
Sid Gauld(tp)
Jamie Anderson(sax)
Nichol Thomson(tb)
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